宇宙航空研究開発機構(JAXA)、広島大学、横浜国立大学、高エネルギー加速器研究機構、九州大学、北海道大学、東北大学、京都大学、東京大学の9者は2月24日、小惑星リュウグウの試料をさまざまな顕微分光法でなどで詳細に分析した結果、試料中の有機物を構成する化学結合の種類と割合は、最も始源的な「イブナ型炭素質コンドライト隕石(CIグループ)」や、始原的な「ミゲイ型炭素質コンドライト隕石(CMグループ)」と似ていることが明らかになったと共同で発表した。
同成果は、広島大 先進理工系科学研究科の薮田ひかる教授が率いる、国内外130名の研究者が参加した「固体有機物分析チーム」(はやぶさ2初期分析チーム6チームのうちの1つ)によるもの。詳細は、米科学雑誌「Science」に掲載された。
今回の研究では、炭素質(C型)小惑星リュウグウの有機物がどのような過程で生成、進化したのかを詳細に調べるため、同天体試料中の固体有機物の化学構造、官能基組成、形態、元素・同位体組成が総合的に分析された。
純度の高い固体有機物を分析するため、試料の非破壊測定と、試料を塩酸・フッ酸の混合溶液で化学処理した酸不溶性残渣(黒色を呈した固体状の有機物)の分析が行われた。その結果、どちらの分析もほとんど一致したことから、試料中の有機物の主要な割合を黒い固体有機物が占めていると結論づけることができるとした。
研究チームによると、酸不溶性残渣の測定と、非破壊測定した有機物の測定との間で見出されたわずかな違いは、以下の4点などを反映していることが考えられるという。
- 組成の不均一性
- 非破壊測定の結果には、固体有機物だけでなく鉱物や可溶性有機物の組成も含まれている可能性があること
- 酸処理によって層状ケイ酸塩が分解したことにより、層状ケイ酸塩と相互作用していた有機物の化学形態が変化した可能性があること
- 酸処理によって固体有機物の一部が加水分解した可能性があること
さらには、酸不溶性残渣中の化学的・同位体的不均一性も解明できたとしている。