東北大学と東京大学(東大)の両者は2月17日、小惑星リュウグウの試料中から固体粒子「コンドリュール」に類似した物質(以下「コンドリュール様物質」)と、カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)に富む包有物(以下「CAI」)を発見したことを共同で発表した。
さらに、それらの詳細な化学組成分析と酸素同位体比分析を行った結果、コンドリュール様物質は先行研究で予言されていた「初生コンドリュール」と鉱物学的および化学的に類似していることがわかったこと、CAIは太陽系形成最初期に形成された可能性があること、コンドリュール様物質とCAIの両物質は原始太陽系星雲の内側領域で形成された後に太陽から遠く離れたリュウグウ母天体集積領域まで運ばれたことが推定されたことも併せて発表された。
同成果は、東北大大学院 理学研究科地学専攻の中嶋大輔講師、同・中村智樹教授、東大 総合研究博物館の三河内岳教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。
リュウグウの試料に関しては、これまでの研究から、水-岩石反応を経験した隕石グループの1つである「CI炭素質コンドライト」(CIコンドライト)に類似していること、リュウグウ母天体は太陽から遠く離れた-200℃以下の低温領域で形成されたこと、コンドリュール様物質とCAIが含まれていることが明らかにされている。
コンドライトは未分化小惑星から飛来する隕石であり、コンドリュールとCAIが含まれている(両物質は彗星にも含まれている)。原始太陽系星雲において、コンドリュールは現在の小惑星帯を含む広い領域で形成され、CAIは太陽近傍で形成されたと考えられている。両物質とも1000℃以上の高温環境においてできた固体粒子であることから、原始太陽系星雲で起きた高温加熱現象に加え、物質の移動機構について知る上でも重要とされる。
一方で、CIコンドライトには、両物質がほとんど存在しない。CIコンドライトには元々両物質が存在しなかったのか、水-岩石反応によって失われたのか、その点はまだ不明だ。そこで研究チームは今回、隕石中の両物質との比較を通して、リュウグウ試料中にコンドリュール様物質とCAIが存在する意味と、両物質の起源を明らかにすることを目的に、その詳細な化学組成分析と酸素同位体比分析を行うことにしたという。
解析の結果、両物質は無水の鉱物片とともに、リュウグウ試料の水-岩石反応の程度が小さい岩片において観察された。このことから、両物質は水-岩石反応後に小惑星リュウグウまたはリュウグウ母天体に入ったのではなく、リュウグウ母天体に元々存在した生き残りであるといえるとする。