今年8月、ファミリーマートが飲料を自動で補充するAIロボット「TX SCARA」を300店舗に導入すると発表した。「TX SCARA」はAIや遠隔制御にマイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」を活用しており、マイクロソフトは同製品を「小売業向けのRobot as a Serviceソリューション」と表現している。

このRobot as a Serviceとは、一体何か。

日本では古くからロボットの研究が盛んであり、日本企業はロボット市場でシェアを築き上げてきた。そうした中、新型コロナウイルスの感染拡大や人手不足などの社会問題をきっかけに、企業におけるロボットの導入が加速している。

さらに、こうした状況を後押ししているテクノロジーの一つが「RaaS(Robot as a service)」だ。RaaSとは何か、RaaSによってどんなメリットが得られるのか。今回、RaaSの先駆者であるラピュタロボティクス 執行役員の森 亮氏に話を聞いた。

  • ラピュタロボティクス 執行役員 森 亮氏

ロボット導入にかかる費用とリスクを最小化

サーバやストレージ、ネットワーク機器から構成されるITシステムと同様、ロボットを自社で購入して導入しようとすると、相当の費用がかかり、運用管理に手間と時間をかけなければならない。繊細な動きが求められるロボットはサーバやストレージ以上に高価だ。

そうなると、ロボットを購入して運用できるのは、それなりに資金と人手を抱えている企業に限られる。

しかし、ロボットをサービスとして提供するRaaSであれば、こうしたロボット導入にまつわる課題を解決した形で、ロボットを導入することが可能になる。森氏は「RaaSを利用すれば、初期費用の負担が最小限になり、リスクを抑えた形でロボットを利用できます」と語る。

ラピュタロボティクスは物流ロボットのRaaSを提供している。森氏によると、物流ロボットは世界的にまだ少ないそうだ。日本でロボットが使われている現場は製造業が多いが、それは環境を作りこみやすいからだという。対する物流倉庫はオペレーションが難しい一方、ロボットベンダーからすると、「プロジェクトの規模もリターンも小さいため、参入するベンダーはあまりいませんでした。スタートアップのわれわれとしては、既存の市場ではないところで勝負することを選びました」と、森氏は話す。

加えて、物流倉庫は翌年に扱う商材がわからないこともリスクだという。つまり、その年の商材に合わせて、ロボットを導入して倉庫業務の自動化を図ったとしても、翌年に扱う商材が変わったら、作り上げた仕組みが役に立たなくなるというわけだ。同社のRaaSは、こうした環境の変化にも柔軟に対応する。

人手不足、BCP、働き方改革が導入を後押し

ラピュタロボティクスは、クラウドロボティクス・プラットフォーム「rapyuta.io」を基盤としてRaaSを提供している。森氏は、「われわれのソリューションはプラットフォームがあるので、カスタマイズをする要素が減ります」と語る。カスタマイズが増えれば増えるほど、費用と時間がかかるのはITシステムと同じだ。

同社は2020年7月にRaaSを商品化したが、当時、RaaSを提供しているベンダーは1社のみだったそうだ。それまでロボットを導入する理由としては、費用対効果を狙うケースが多かったが、最近は人手不足に加えて、BCP、働き方改革がきっかけとなって、ロボットが導入されるケースが増えているとのこと。

「物流業界は、新型コロナウイルスの感染が拡大する前から人手が不足していましたし、テクノロジーの導入にも積極的でした。最近、ロボット導入のニーズとして特に増えているのが働き方改革です」(森氏)

人手不足に関しては、「今、人手が足りない」という直近の課題解決にとどまらず、将来の人手不足も踏まえて、ロボットの導入を検討している企業もあるそうだ。