米ボーイング社の有人宇宙船「スターライナー」の無人試験機が国際宇宙ステーション(ISS)に到着し、日本時間22日(米東部時間21日)、扉が開かれた。2019年12月の試験ではISSに到達できず、再挑戦となっていた。順調にいけば、年内にも有人試験飛行を行う。米国は11年に廃止したスペースシャトルに代わる有人船2機種を、民間企業が主体となり開発。先に本格運用を果たしたスペースX社「クルードラゴン」と合わせ、2機種による安定した有人飛行の実現が近づいた。

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    ISS(左)に接近するスターライナー=日本時間21日午前(NASAテレビから)

米航空宇宙局(NASA)やボーイング社の発表によると、スターライナーは大型ロケット「アトラス5」に搭載され、20日午前7時54分(米東部時間19日午後6時54分)に米フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられた。約30分後に第2段ロケットから分離され、打ち上げは成功した。高度約400キロを周回中のISSに徐々に接近。21日午前9時28分、日本実験棟「きぼう」に隣接する「ハーモニー」棟に自動でドッキングした。気密性の確認や電気、通信系統の接続を経て、22日午前1時過ぎに扉が開かれた。出迎えた米国人飛行士が乗り込み、船内の状況を確認した。

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    スターライナー船内を確認する米国人飛行士(左奥の2人)。手前はダミー人形=日本時間22日午前(NASAテレビから)

 2019年12月にはスターライナーの別の機体が無人試験に臨んだが、ロケットから分離後、エンジン噴射のタイミングがずれてISSに到達できずに地球に帰還した。推進システムの不具合などで再試験の延期が繰り返され、実に2年半を要した。

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    スターライナーの歓迎式典に臨むISSの飛行士=日本時間22日午前(NASAテレビから)

到着後、ISSに滞在中の米露とイタリアの飛行士7人が、歓迎式典を開催。米国のボブ・ハインズ飛行士は地上との交信で「今日はNASAの歴史上、重要な日であり、将来へ道を開くものだ。ここ地球周回低軌道で商業飛行を可能にし、月、最終的には火星へと軸足を移していく」と述べた。ロシアのセルゲイ・コルサコフ飛行士はツイッターに「よくやった、スターライナー!」と、接近する機体の写真を添えて投稿した。

試験飛行では食料や衣料を含む、360キロ超の物資をISSに運んだ。船長席には計測装置をつなげたダミー人形を載せた。ISS離脱は25日ごろの予定で、ISS船内に窒素や酸素を供給するため使われてきた装置を、整備のため地上に運ぶ。米西部の5つの候補地域のいずれかに着陸する。

スターライナーはアポロ宇宙船のように円すい状の司令船と、円筒形の機械船がつながった構造で、直径約4.6メートル、高さ約5メートル。定員は7人だが、ISS本格運用では4人以下で飛行する。クルードラゴンと同様に再使用できるが、海上ではなく陸上に帰還するのが特徴だ。

シャトル廃止で独自の有人船を失った米国は、運賃を支払ってロシアの「ソユーズ」を利用してきた。クルードラゴンは2020年5月に有人でISSに到達し、同年11月から本格運用に入っている。当初は15年にも新型船の有人試験飛行を行う計画だったが、開発に時間がかかった。

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    スターライナーを迎えた20日時点のISSの構成。クルードラゴンやソユーズのほか、米露の物資補給機も係留中でにぎやかだ(NASA提供)

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