SAPジャパンは2月16日、2022年のビジネス戦略に関する記者発表会を開催した。同社のクラウドサービス導入から利活用支援を行う新組織の設立や、パートナー企業との協業を拡大する方針とともに、サステナビリティ分野の戦略が発表された。
説明会の冒頭で代表取締役社長の鈴木洋史氏は、2021年のSAPのグローバルでの業績を振り返った。クラウド事業の売り上げは前年比19%増の94億1800万ユーロとなり、総売上高は前年比3%増の278億4200万ユーロとなった。
SAPジャパンの2021年の売上高は前年比で6%増となる、約13.8億ユーロ(約1770億円)を達成した。同社は2014年から毎年、売上高の前年比増を続けている。2021年の売上高は、2015年の2倍以上になったという。「(SAPジャパンは)全ての売上項目で、グローバルの伸び率を上回った」と鈴木氏は振り返った。
2021年の国内の取り組みとして鈴木氏は、SAP S/4HANA Cloudをコアとするクラウドオファリング「RISE with SAP」の提供や金融サービス業界への支援に特化した新会社「SAP Fioneer Japan」の設立のほか、企業のサステナビリティ(持続可能性)のサポートに向けたカーボンフットプリントのソリューション提供などに触れた。
このほか、2021年から開始した「SAP Japan Customer Award」の受賞企業も発表された。同アワードは国内外でのDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みの認知度を高め、促進を図ることを目的に、DXに取り組む企業を表彰するものだ。昨年の5部門に加え、「SAPR Concur」、「Mid-Market」、「Transformation」アワードを新設し、計8部門において受賞企業・団体が選出された。
企業が直面する「ビジネス変革」「サプライチェーン強化」「サステナビリティ実現」という課題の解決を支援するために、SAPジャパンは2022年、以下の3つの方針の下でビジネスを展開するという。
- クラウドカンパニーへのさらなる深化によってお客様の成功に寄与すること
- 社会課題解決を通じて、お客様、パートナー様、そして社員から選ばれる会社となること
- お客様をサステナブルな企業へ変革する支援をすること~1億人へのインパクト
「クラウドカンパニーへのさらなる深化によってお客様の成功に寄与すること」では、製品の提供だけでなく、顧客に伴走したビジネス支援を行う方針が発表された。
提供する製品としてはRISE with SAPを中核に据える。他社との連携やビジネスプロセスの改善、業務アプリケーションのクラウド化、システム拡張・連携など、企業のクラウド移行やイノベーションを実現するうえで必要な機能をすべてカバーしている点がRISE with SAPの特徴だという。
顧客支援を実行する新組織として、SAPジャパンはサービス導入から利活用支援までを一貫して行う「クラウドサクセスサービス部門」を新設した。同部門はグローバルで先行して設立された。SAPジャパンでは約600名の体制で、SAPソリューションの採用、導入、活用、拡張までをサポートする。
このほか、「COOネットワークを軸とした変革の仕組み化」、「組織・プロセス・人・データ・システムの五位一体変革」などを顧客企業の幹部を対象に伝授する「COO養成塾」や、製造業DXのミドルマネジメント担当者が事例や自社での実践に役立つ知識・ノウハウを学び合う「Industry 4.Now塾」も開催していく。
「社会課題解決を通じて、お客様、パートナー様、そして社員から選ばれる会社となること」では、パートナー企業とのクラウドビジネスにおける協業強化の戦略が紹介された。SAPのパートナーは2021年に52社が加わり、現在は424社となっている。
今後は顧客のプロジェクトの体制支援やビジネスモデル構築もパートナーとともに行い、新たなソリューション領域に関するパートナー向けの研修や個別支援のための取り組みを強化する。また、SAPのソリューションと統合したパートナーソリューションを提供し、新たなソリューションの開発や販路拡大も支援する。このほか、日本のパートナー向けポータルをオープンさせるなど、パートナーのビジネス拡大につながる取り組みも拡大するという。
パートナーとの協業に関連して、鈴木氏は今後、中堅・中小企業への販売体制拡充を発表した。「具体的には、年商800億円未満の中堅・中小企業に対して、100%パートナー企業による間接販売を推進する。販売体制拡充のためには、パートナー企業の存在が欠かせない。SAPがグローバルで培った知見をパートナー企業と共有していきたい」と語った。
「お客様をサステナブルな企業へ変革する支援をすること~1億人へのインパクト」については、サステナビリティ分野の戦略が紹介された。
SAPジャパンは2021年に、調達・購買した品目のカーボン情報を可視化する「SAP Product Footprint Management」、消費財の製造から消費に至るまでのライフサイクルを可視化する「SAP Responsible Design and Production」、非財務情報を一言的に管理する「SAP Sustainability Control Tower」の提供を開始した。
2022年は3つのソリューションを含めた、サステナビリティ経営を包括的に支援するサービスとして「SAP Cloud for Sustainable Enterprises」を提供する。また、これまで実施してきたサステナビリティ領域のスタートアップとの連携も強化する。
自社のサステナビリティの取り組みとしては、2023年までに自社のオペレーションにおけるカーボンニュートラルの実現を目指す。加えて、2030年までには、バリューチェーン全体(販売した製品の使用を含む)でのネットゼロ(温室効果ガスの排出が実質ゼロ)の実現を目標とする。
「ネットゼロは、パリ協定での2050年目標から20年前倒しした野心的な目標となる。自社でのサステナビリティの取り組み・知見を基に、お客さまをサステナブルな企業へと変革する支援を推進していく」(鈴木氏)