NECは1月31日、2021年度第3四半期の決算を発表した。第3四半期累計(4-12月)の売上収益は前年度比2.5%増の2兆964億円となった。調整後営業利益は760億円の黒字(前年度比-211億円)となった。

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調整後営業利益(前年度比)の減益要因としては、社会基盤およびネットワークサービスの連結子会社における不採算案件60億円と、エネルギー事業の株式売却損15億円の合計75億円が挙げられた。また、半導体を中心とする部材不足により、9ヵ月累計のグロスでマイナス120億円、ネットでマイナス70億円の影響を受けている。部材不足を製品別に見ると、ITサービス関連の汎用品やネットワークサービスの携帯電話基地局で主に供給遅れによる出荷遅延の影響が出ている。

  • 調整後営業利益の増減要因(前年度比、第3四半期累計)

また、戦略的費用も前年同期比で200億円増額している。内訳は、グローバル5Gで110億円、社内DXで35億円、コアDXで25億円、人材他で30億円となる。

一方、2021年度の年間業績予想は上方修正となった。売上収益は3兆円、調整後営業利益は1550億円から50億円上方修正し1600億円とした。

NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏は、「半導体部材不足の年度末までの影響と対策効果を内部検証し、2021年4月から12月までの9ヵ月の業績進捗、今後の見通しも精査した。年初の業績予想に織り込んでいなかった部材不足も発生しているが、実業の改善もあり、今回の修正を決定した」と説明した。

  • NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 森田隆之氏

全社の第3四半期累計での受注動向は、四半期ごとに変動が大きい海洋と2020年度から非連結となったディスプレイを除き4%の増加となった。社会公共は3%の減少で、社会基盤とネットワークサービスは横ばい。エンタープライズは、ITサービス事業が好調で7%の増加。グローバルはAvaloqの連結寄与および、通信系ソフトウェア子会社のNetcrackerが堅調で32%の増加となった(海洋システム・ディスプレイ事業除く)。

セグメント別の業績について、「社会公共」は消防・防災向けや地域産業向けが減少し減収となった。売上減に伴い調整後営業利益は38億円の減益となる。「社会基盤」は前年度のGIGAスクール向けPC特需の反動減により減収となった。調整後営業利益は、連結子会社の日本航空電子工業が増益となるも、NEC本体は不採算案件により4億円の減益となった。

「エンタープライズ」は製造業向け、流通・サービス業向け、金融業向けの全領域で堅調に推移し増収となった。売上増に伴い調整後営業利益も82億円の増益となっている。「ネットワークサービス」は5G事業の部材不足の影響があるものの増収。連結子会社のNECネッツエスアイは前年度に計上した大型案件の反動減もあり減収。また、NEC全体でも減収となった。調整後営業利益は、戦略的費用の増加により41億円の減益となった。

「グローバル」は、DG/DF(デジタルガバメント/デジタルファイナンス)領域とサービスプロバイダ・ソリューションともに増加し、増収となった。調整後営業損益は、ポートフォリオ改革や売上増が寄与し、100億円の増益となった。

  • NEC、第3四半期(累計)のセグメント別売上・利益実績(3カ年推移)

部材供給の影響の年間見通しについては、営業損益にマイナス80億円の影響を見込む。なお、この影響は年間業績予想に織り込んでいる。80億円のうち50億円はネットワーク領域での出荷延伸によるもので、NECは2022年度での解消を見込む。

80億円の内訳としては、業績への年間のマイナス影響を総額270億円と見込み、業績への影響抑制施策の効果を総額190億円と想定している。代替部材への設計変更、代替品への切り替え、販売価格の適正化に加え、不要不急な費用を抑制/効率化することで業績へのマイナス影響を270億円から80億円へと最小化するねらいだ。

同日の決算発表では、同社の「2025中期経営計画」の実現に向けた組織改革も発表された。

新たな価値やビジネスの創出を求める市場のニーズに対応すべく、「組織の大括り化」「レイヤー(階層)のフラット化」「組織デザインの柔軟性」「権限委譲と責任の明確化・強化」という4つの改革を2022年4月に実行する。

  • NECが2022年4月から進める組織改革の概要

森田氏は、「現在、約150ある事業部レベルの組織数を1/3に再編するとともに、CEOから担当者までのマネジメント階層を8階層から6階層に集約する。アジャイルな組織デザインも併用することにより、スピーディな事業運営を可能にするとともに、共通機能と現場の役割を明確にすることにより、現場に近いところでの意思決定が進むようにしたい」と語った。