IDC Japanは12月14日、毎年恒例の国内IT市場の翌年の10大予測を発表。2022年は、デジタルファースト、デジタルインフラストラクチャ、ワークモデル、エンゲージメント、ネットワークなどが注目されるという。

IDC Japan リサーチバイスプレジデント 寄藤幸治氏

冒頭、IDC Japan リサーチバイスプレジデント 寄藤幸治氏は、新型コロナウィルスがICT市場への影響について、「昨年はマイナス成長だったが、GDPにくらべると緩やかなマイナスだった。2021年のリバウンドはGDP並みで、回復も比較的早かった。これは、パンデミック下で在宅勤務向けのネットワーク、ビデオ会議、ワークフローなどのジタル技術の適用が進み、これらのIT投資が下支えした」と分析した。

そして、同氏は下図の2022年国内IT市場10大予測を発表した。

  • 2022年国内IT市場10大予測(出典:IDC Japan)

これらの予測の背景には、デジタルレジリエンシーがあるという。

「IDCでは最近、デジタルレジリエンシーに注目している。デジタルレジリエンシーは、環境変化に適用することや、環境変化を新たな成長に結びつけていく力をもっている企業、組織能力を表現している。デジタルレジリエンシーは、これからの世の中を生き抜いていく大きな力になる。今回のパンデミックは最後ではなく、今後も同じようなことが起こる。そん中で、こういった能力を持っているかが重要なポイントとなる。これを身に付けるためにデジタルトランスフォーメーション(DX)を行っていくのだろうと思う。そして、最終的にはデータを活用して意思決定を行うFuture Enterprise(未来の企業)に到達しようとしている。データを活用し外部環境に対応できるようになろうとしている企業は増えている。一部をデジタル化するだけではなく、すべてをデジタル化していく意識が高まっている。これがわれわれの市場認識だ」(寄藤氏)

  • デジタルレジリエンシー(出典:IDC Japan)

そして同氏は、10大予測のいくつかを解説した。

デジタルファースト

2022年は全体でみれば、ITは微増の成長だが、大きく成長する部分とそうでない部分があるという。大きく成長する領域としては、5G、AI、アナリティクス、データベースなどデータを扱う領域、カスタマーエクスペリエンスの領域、コラボレーション領域、IaaS、SaaS、PaaS、デジタル関連のビジネスコンサルティングがあり、1桁の後半から2桁の成長が期待できるという。

  • デジタルファースト(出典:IDC Japan)

今後は現場のエンパワーメントに向けたデジタルファーストの姿勢や投資が強まっていくという。また、中長期ではサステナビリティへの対応、新たなビジネス機会の創出が企業間で強まるという。

デジタルインフラストラクチャー

デジタルインフラはパンデミック対応で、部分的な対応をとどまっているが、2年近く経って、根本的に見直す余裕が出てきたという。考慮すべきポイントとしては、一貫性のあるパフォーマンス、セキュリティ/コンプライアンス、自律的な運用、スケーラビリティだという。

「ビジネスの成果に結びつく、そういったインフラでなければならない」(寄藤氏)

  • デジタルインフラストラクチャー(出典:IDC Japan)

ワークモデル

今回のパンデミックを経て、顧客や従業員のエンゲージメントの変革を経験し、さまざまなツールを活用した働き方の改革が進むという。

「従業員のエンゲージメントが顧客エンゲージメントに結びついている。対面/非対面のハイブリッドな手法が進化し、場所を問わず同一のエクスペリエンスが得られる環境を提供していくことになる」(寄藤氏)

  • ワークモデル(出典:IDC Japan)

エンゲージメント

顧客接点、商品、購買地域などにおける多様化/ボーダーレス化が加速し、機能/価格は差別化要素にはならず、企業が発するメッセージへの共感/支持や、顧客が得た体験を基に蓄積される企業ブランド価値/顧客ロイヤルティが重要になるという。そのために、パーソナライズされた接客、CXを通したデータの収集/分析などが必要になり、データの活用が重要で、CDP(Customer Data Platform)の構築が進むという。

  • エンゲージメント(出典:IDC Japan)

ネットワーク

5Gの普及によるモバイルネットワーク活用により、従業員のエクスペリエンスを高めることを前提に、企業のネットワークと運用の最適化が進むという。

新型コロナウィルス対応の急場を凌ぐ形で拡張したネットワーク構成を、よりコスト最適化しクラウドシフトに整合するネットワーク構成へと見直す動きが本格化。SD-WAN活用が進むほか、ネットワーク管理でもAIを活用した自動化、自律化が進むという。

  • ネットワーク(出典:IDC Japan)