現在、アメリカでは人材市場が大きく動いています。U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS(アメリカ合衆国労働統計局)の調査によると、2021年7月の自主退職者は約400万人で、前年に比べて25%も増加し、過去最高の数字になっています。この現象は「The Big Quit(大量自主退職)」とも呼ばれています。

今年8月に発表されたパーソナル・キャピタル社とハリス・ポール社の共同調査の結果によると、転職したいと考えているX世代は47%、ブーマー世代は45%だったのに対し、Z世代は91%、ミレニアル世代は78%と、若い世代の転職願望が高まっています。

退職理由は、働く環境に対する不満だけじゃない

Citrixが構築した経済モデルによると、デジタル世代は年間1.9兆ドル(約200兆円)の利益を企業にもたらす可能性があることが明らかになっています。一方で、少子高齢化でZ世代、Y世代(デジタル世代)の人口比率が低い日本においては、250億米ドル(約2.7兆円)の機会損失があると算出されています。

デジタル世代は若いと思われるかもしれませんが、すでに今日の労働力の過半数を占めており、2035年にはCレベルまたはエグゼクティブのポジションに就くことになります。だからこそ、この世代の求めることを汲み取り、活躍できる土壌を作り上げることは重要です。

しかし、リーダー層はこの世代に最適な環境を提供することは本当に可能なのでしょうか? Citrix が行った調査「Born Digital Effect」では、デジタル世代と経営層の意識には乖離があり、今日の経済の牽引力であり明日のビジネスリーダーであるデジタル世代の活躍のためには、正しい理解と適切な環境の提供が重要であることが明らかになっています。

その認識の違いの一つの「上司との良好な関係」があります。ビジネスリーダーはデジタル世代が職場での人間関係に重きを置いていることに気づいてないのが実情です。

コミュニケーションを求めているデジタル世代

生まれた時からインターネットやソーシャルメディアが生活に浸透しているZ世代は、常にテクノロジーに囲まれているため、前世代のようにテクノロジーに感銘することはありません。 彼らにとって、最新のテクノロジーにアクセスできることは当たり前のことなのです。

代わりに、コロナ禍を生きるこの世代が求めているのは、人間関係の構築かもしれません。オフィスで他の人たちから学ぶ機会を失いかけているZ/Y世代はシニアリーダーとつながり、他のプロジェクトについて学び、キャリアに関する会話をすることを望んでいます。この事実をリーダーが理解しなければいけません。このような交流により、目的意識が強化され、一生懸命働き、組織の中で進歩していこうというモチベーションが高まるのです。

しかし同時に、自律し柔軟な働き方を希望する彼らに適切で新しいコミュニケーションプランを設計することも現在のリーダーには求められてきます。リモート環境の中だけで、人間関係を気づかなければいけないZ世代は、最もテレワークに苦戦している世代かもしれません。だからこそ、企業側がその不安に寄り添い、積極的にコミュニケーションを作る機会が必要なのです。

多世代が、リモートで一緒に働くためには?

高齢化が進み、X世代、ベビーブーマー世代、Z世代、Y世代と多くの世代が一緒に働くことが当たり前になりつつあります。多様性でリモートな環境でも、効率よくそしてポジティブに仕事を進めるには、工夫が必要になってきます。

例えば、上の世代が、若い世代にあえて意見を聞く「逆メンター制度」が普及するかもしれません。その時、上の世代は守りに入らず、また自身を正当化せず、ただ若い世代の意見を聞かなければいけません。このようなシンプルな活動だけでも、若い世代は自分たちに価値を感じることができます。

そして理想は、高齢層は若い世代のテクノロジースキルの恩恵を受け、若い世代が高齢層の経験から学ぶことです。

デジタル世代は、私たちのリーダーシップベンチです。リーダーシップ開発とタレント開発のためのプログラムを作り、この世代にリーダーシップを発揮するための準備態勢を整えるために、組織としてできることを検討することが必要になっています。人材の流出を抑えるには、キャリアを築くために外部の機会を逃すのではなく、社内で経験を積み、共有できる方法を気づくことが重要になってきているのです。

國分俊宏 (こくぶん としひろ)

シトリックス・システムズ・ジャパン 株式会社 セールス・エンジニアリング統括本部 エンタープライズSE本部 本部長

グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセースルとして支援している。現在は、ハイタッチビジネスのSE部 部長として、パフォーマンスを最大化できる働き方、ワークライフバランスを支援する最新技術を日本市場に浸透すべく奮闘中。