凸版印刷は10月7日、ガラス製マイクロ流路チップのフォトリソグラフィ工法による製造技術を開発したと発表した。同技術を用いたマイクロ流路チップの量産が実現すると、現在一般的であるポリジメチルシロキサン(PDMS)を金属製の型に注入して作られるチップと比較して、大量生産と低コスト化が可能になるという。

  • ガラス製マイクロ流路チップ(試作品)

血液などの体液サンプルを用いて、がんの早期発見を可能とするリキッドバイオプシー検査に対する注目が集まっている。同検査には一般的に、生体適合性に優れており光学分析に適したPDMSを材料として、射出成形法で製造したマイクロ流路チップが使用されるのだが、PDMSは微細加工領域での生産性が低く原材料である液体シリコンの価格が高いため、チップが高額であるという課題があった。

そこで同社は、液晶ディスプレイ用カラーフィルタの製造で培ったフォトリソグラフィ法による微細加工技術を応用してマイクロ流路チップを製造する技術を開発したという。具体的には、ガラス基板に塗布したフォトレジスト(感光性樹脂)上に、幅10マイクロメートル程度、深さ1から50マイクロメートルの流路を形成し、硬化処理したフォトレジストの上に液体を分注する穴の開いたカバーを装着して製造する。

  • フォトリソグラフィ法で製造したマイクロ流路チップの構造イメージ

同製品の特長は、深さ50マイクロメートルの流路形成が可能となった点である。血液や細菌、細胞などを分析する用途向けのマイクロ流路デバイスでは、深さ50マイクロメートル程度の「深い溝」を必要とするケースがある。そのため、同社ではフォトレジストの組成や露光プロセスを見直すことで、幅広い分析用途向けに最適な流路形成を可能にした。

  • 開発したマイクロ流路用構造体(画像左)と液晶用カラーフィルタの構造体(画像右)

また、スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器における液晶カラーフィルタ向けの製造装置を活用することで、大型のガラス基板上にマイクロ流路チップを多面付けして生産することが可能となったため、大量生産と低価格化が実現できるようになったとのことだ。同社は同製品について、2022年3月を目途に量産化技術を確立し製品化する予定だとしている。

  • 大型ガラス基板にマイクロ流路チップを多面付けしているイメージ