ワクチン接種が進み、新しい働き方の模索が始まる英国では、週4日勤務・週休3日に関心が高まっているようだ。英国のオンラインメディアinewsのKasia Delgadoさんが「Four-day work week: Trials say it increases productivity, UK company directors who’ve taken the plunge agree」としてレポートしている。

OECDの調査では、日本の労働者の年間1598時間、英国は1367時間だ。すでに労働時間が日本より短い英国で、ここ数年で週4日勤務に踏み切る企業が出てきているという。

照明デザインのElektra Lightingは、2019年に週4日勤務を実験的に導入したそうだ。経営者と従業員とが議論を重ねて、年52回ある金曜日を休むのと引き換えに、これまでは業務中に認めていた通院などのちょっとした用事を入れることは禁止とした。もしクライアントに支障が出たり、業績が悪くなったら元に戻すという条件でスタートしたという。

「仕事量は減っていない?ーー多分減っていない。意識高く集中して、時間を無駄にしないようになった?ーーイエス」と同社を率いるディレクター兼プリンシパルのNeil Knowles氏はinewsにコメントしている。社員も経営者も以前より幸福になったし、業績にも影響はないとのことだ。

家族経営の石鹸メーカーGracefruitも、数年前に週4日勤務を導入した。収益は改善し、取引高は16%増加したとのこと。さらには、従業員の満足度が高くなったことから離職率も減り、この6年は既存社員の離職による新しい求人をしていないという。

コロナ禍がきっかけになって週4日勤務に踏み切ったところもある。出版業のTarget Publishingは業績が悪化したために20%の減給・週4日勤務にした。その3カ月後、業績が元に戻った。そこで、給与は元のレベルに戻したが週4日勤務は続けた。木曜日までに仕事を終わらせようという意欲につながっているという。

同じレベルの収益が維持できれば、経営陣は週4日でも週5日でも勤務時間は関係ない。Targetの担当者は、「モチベーションが改善し、効率も上がったし、収益も改善した」とコメントしている。産業心理学者のAlan Redman博士はinewsに対し、「労働時間を短くすると、一貫して生産性が改善し、ウェルビーングや満足度にも良い影響が出ている」と語っている。実験では、生産性は25%から50%も改善しているという。

inewsは週4日勤務のポイントとして、報酬をカットすると従業員から反対がおこると注意している。また、報酬が低い人など長時間勤務を希望していることも指摘し、注意深く進める必要があるとしている。至極当然のことで、労働時間を短縮しながら、成果を出すことがいかに難しいことかを示している。

AppleのSteve Wozniak氏がとあるイベントで「コンピューターが普及すると働く時間が減ると思っていた。現実にはそうならなかった」と苦笑していたと聞いたが、6歳でアマチュア無線の免許を取得し、自作キットで組み上げ、21歳で無料で長距離電話をかけられる装置を売りさばき、後にAppleを立ち上げるような超人が予測を外してしまう。我々はツールを使いこなせていないのか?それとも仕事量が増えているのか?そんな疑問も浮かぶ。

実際のところ、空いていそうだと新たなタスクが持ち込まれるケースもあるが、その分削るべきではない何かを削っていることもある。形だけの時間圧縮で何か重要なものが落ちてしまっていないか?これは全く条件下で同じ業務をやってみないとわからないものだ。無造作に埋められると条件が変わるため、生産性自体は上がらない。

かたやテレワーク下で残業を圧縮し、量と質を維持したまま生産性を高めた方も多いと思うが、ただ報酬が削減されるのであれば士気の低下を招きかねない。大きく削減されれば生活に支障を来すため、成果が認められればそれに報いることや副業の促進など柔軟な対応が必要になるケースもある。ステークスホルダーすべてに"持続的な"企業経営が求められる昨今、妥当なことだろう。