Dropbox Japanは9月30日、オンラインによる記者説明会を開き、電子署名ソリューション「HelloSign」を国内で正式に提供開始すると発表した。

使いやすさを念頭に置いた製品デザインの「HelloSign」

同ソリューションは2019年にDropboxが買収しており、ペーパレス署名でビジネスの流れを維持し、ドキュメントストレージと電話署名ワークフローをDropboxアプリにより自動化できるという。Dropboxの機能の一部として組み込まれているため、例えば他者に電子署名依頼する際にDropboxのプラットフォーム上でファイルを編集し、署名依頼できるなどシームレスな連携を実現している。

  • 「HelloSign」はDropboxとシームレスな連携を実現している

    「HelloSign」はDropboxとシームレスな連携を実現している

同社が5月に実施した「テレワーク実態調査」によると、実施企業は全体の4割、そのうち「週5日以上」「週3~4日程度」「週2日以下」それぞれが3割強となっており、週4日以下の企業における課題としては、社内ファイルへのアクセスや書類の押印作業が主なものになった。

  • 実施企業は全体の4割、うち「週5日以上」「週3~4日程度」「週2日以下」それぞれが3割強となっている

    実施企業は全体の4割、うち「週5日以上」「週3~4日程度」「週2日以下」それぞれが3割強となっている

政府においては6月に押印に関する法解釈についてQ&A文書、7月には「書面、押印、対面」を原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向けた共同宣言、「規制改革実施計画」の中でテレワークの障害に関して検討を行う旨を明記している。

また、8月に2021年度から企業の労使協定書類での押印廃止、9月にはクラウドを介した契約書の電子署名について法的効力を認める見解の公表、デジタル改革関係閣僚会議、河野太郎行政改革担当大臣が行政手続きで押印を可能な限り不要とする方針やペーパーレス化にも意欲的な姿勢を示している。

Dropbox Japan 代表取締役社長の五十嵐光喜氏は「5月~9月に開催したセミナー参加者へのアンケートで電子署名システム導入の検討状況を尋ねたところ、6割程度が検討している状況だ」と説明する。

  • Dropbox Japan 代表取締役社長の五十嵐光喜氏

    Dropbox Japan 代表取締役社長の五十嵐光喜氏

  • 6割程度の企業が電子署名システムの導入を検討しているという

    6割程度の企業が電子署名システムの導入を検討しているという

現在、同ソリューションは50か国以上の国・地域で600万人以上のユーザーが利用し、2020年には多言語対応している。22か国でローカライズされており、ウェブサイトの表示、製品の使用、チュートリアル用ライブラリの閲覧などが各言語で可能となっている。

HelloSignウェブアプリ、HelloSign API(近日提供予定)、HelloSign for Salesforceでは、自分に合った言語を使用することで、署名用ドキュメントの作成・送信・管理を可能とし、署名者は受け取った署名依頼のインタフェース言語を変更することもできるという。

Dropbox内で数回クリックするだけで、署名用のファイルを作成して送信することができ、署名が完了すると署名済みドキュメントは自動的に保存され、保存場所はカスタマイズ可能なため、希望する保存場所を選択することでファイルを自動で整理できる。

電子署名は署名者と署名依頼者がおり、それぞれにさまざまなパターンが存在し、署名者は誓約書、申込書など署名者が1人、秘密保持契約をはじめとした複数の署名者、署名に順序が必要な場合などがある。一方、署名依頼者は他者への署名依頼と署名依頼者自身が署名してから他社に署名を依頼するといったパターンが存在する。

署名する対象の文書は定型書類に署名するといった同じ内容を繰り返すもの、作成済みの文章から一度限りで署名を依頼するもの、定型書類だが住所などが署名者によりカスタマイズが必要なものなどがある。

  • 電子署名にはさまざまなパターンが存在

    電子署名にはさまざまなパターンが存在する

Dropbox Japan ソリューション アーキテクトの保坂大輔氏は「このようなことを分析したうえで、利用者がどれだけ使いやすいか、といったことを念頭に置いて製品がデザインされている。電子署名は利用者からさまざまな要望があり、これから法整備が行われ、新たな要件も出てくることが予想されるため柔軟に対応していく」と話す。

  • Dropbox Japan ソリューション アーキテクトの保坂大輔氏

    Dropbox Japan ソリューション アーキテクトの保坂大輔氏

電子署名の利用においては、そのほかの電子署名ソリューションは従量課金が多いが、HelloSignは署名依頼者数で課金するモデルを採用しており、例えば大勢に一括送信する場合だと導入時にコストが把握できるため導入が容易なことに加え、大量に送信するコストが低減できるといった特徴を持つ。

また、署名時にパスコードを指定して本人だけに教えるなどセキュリティ強化の要件や、追加書類(免許証・パスポートなど)の添付、自社のロゴやイメージカラーの使用(ホワイトラベル化)、サイズの大きい契約書、簡単なロジックの実装をはじめとした課題・要望への対応が求められている。

同ソリューションは暗号化と監査証跡により、ドキュメントを保護し、適切な相手に送信することができるほか、ワークフロー全体の透明性を確保することで、よりシンプルかつ安全に重要ドキュメントの共同作業を可能としている。

さらに、ユーザーのアカウントを保護するため、ユーザー情報はすべて暗号化されるとともにパスワードのハッシュ化とソルト処理が行われることに加え、ユーザーはOAuthとSAMLを使用して効率的で安全なシングルサインオンを実施できるという。2段階認証を採用し、署名前と署名後のドキュメント間で改ざんの証跡(またはその欠如)を示すことができ、SOC 2 Type II、ISO 27001、ISO 27018のコンプライアンス要件を満たしている。

そのほか、APIにより他ソリューションと連携できることに加え、サイト内テンプレートの作成やアップロードを自社サイトに拡張が可能、などの特徴を備えている。

  • 「HelloSign」の特徴

    「HelloSign」の特徴

  • 署名時のイメージ

    署名時のイメージ

必要に応じて追加が可能な「Dropbox Business エンタープライズ全員パック」

一方で、同社では企業におけるテレワークの浸透を一層図るためソリューションパッケージとして「Dropbox Business エンタープライズ全員パック」を発表している。

  • 「Dropbox Business エンタープライズ全員パック」の概要

    「Dropbox Business エンタープライズ全員パック」の概要

Dropbox Japan パートナー事業部長の玉利裕重氏は「テレワーク時代のエンタープライズ向けSaaSは『ライセンス課金モデル』『全従業員のITリテラシー』『パフォーマンス』が課題となる。これまでのDropboxは全社員に共同作業環境を提供し、容量は全社員で共有していた。新しいパッケージは、全社員で共有することそのままに必要に応じて1TB単位でストレージの追加を可能としている」と説く。

  • エンタープライズ向けSaaSの課題

    エンタープライズ向けSaaSの課題

これは、従来はテクノロジーの導入に際して部門単位での導入が多かったが、テレワークでは全社員が共通のプラットフォームをコストを低減しつつ、誰でも簡単に使う必要があるため、同パッケージを軸にさらなる顧客獲得を目指す考えだ。