デルは2月19日、従業員数100~1000人の国内中堅企業を対象に行った2019年の「中堅企業IT投資動向調査」の結果を発表した。今年の調査では、新たにBCPや働き方改革の進捗についても調査したという。

同社がこの調査を行うのは今回で3回目。デルでは、この調査の結果をもとに中堅企業のIT環境における課題を抽出。それに向けたソリューションを提供することで成果を挙げてきた。

今回の調査は、2018年12月~2019年1月の期間で国内の中堅企業の顧客約860社を対象に実施。企業内にIT専任者が一人しかいない「ひとり情シス」の割合が14%から18.8%に、IT専任担当者が一人もいない「ゼロ情シス」の割合が17%から18.8%に拡大し、IT人材不足の深刻化が継続していることが判明したという。

  • 調査ハイライト 1

また、クラウドの利用は、昨年から大幅に向上して20.4%となり、導入があまり進んでいない企業も67.1%と昨年から7ポイントダウンし、クラウド導入の機会が増え、障壁がなくなったことで、裾野が広がり利用企業が広がっているという変化がデータから読み取れるという。

デル 上席執行役員 広域営業統括本部長 清水博氏は「普及期(アーリーマジョリティ)に入ってきた」と語る。

  • デル 上席執行役員 広域営業統括本部長 清水博氏

そのほか、今回の調査では、これまでにはなかった新たな3つのトレンドが明らかになったという。

  • 今回の調査明らかになった3つのトレンド

1つ目は総務部門がIT部門を兼任している例が、兼任している企業の中の47%(全体の26%)を占めている点だ。IT部門と他の部門の業務を兼任している割合は約56%だが、このうちの半数が総務部門だということだ。

デルの分析によれば、総務との兼任によって、経営層に近いため、それまでブラックボックスになっていたIT予算や保守などのコストがより明確になるというメリットがある一方、革新的な技術を選択せず、枯れた技術を優先する「現行踏襲型」になる傾向があるという。また、働き方改革、BCP対策、社内コミュニケーションを積極的にリードしている面もあるという。

2つ目のトレンドは、転職市場の活性化に伴う情シス担当の離職者急増で、21%の企業が担当が離職しているという。

そして3つ目は、シャドーITがデジタル化を推進しているという現状だ。背景には、情報システム部門の人材不足による多忙があり、結果として、事業部門によるIT化を容認せざるを得ないという側面もある。とくに、300名未満の企業ではシャドーITが存在する企業は6割に達しているという。

清水氏は、「シャドーITは一般的には諸悪の根源というイメージがあるが、新技術を取り込み、目に見える効果も出している。米国では事業部門に近いところでITをやっている人は重宝されている。シャドーITがデジタル化を加速している面もある」と、シャドーITを一概に否定できないという考え方を示した。

ただ、セキュリティリスクの増大と、IT予算の増加傾向になるという不安材料も指摘した。

そしてデルでは、これらの新たな3つの傾向に対し、追加で支援策を提供するという。

まず、総務兼任担当者向けには、セキュリティ、BCP、働き方改革、労務管理、事業承継をテーマとする中堅企業ITシンクタンクを設立し、全国でセミナーを開催するほか、ホワイトペーパーや調査レポートなどの配布を通して情報発信を行っていく。

  • 中堅企業ITシンクタンクの対象エリア

また、クラウドサービス企業と提携し、業務系や情報系だけでなく、中堅企業向けの人事・労務系のクラウドサービスを提供。さらに、近畿大学と提携し、CIO養成講座を開設している。

情シス担当の離職に対する支援としては、ブラックボックス化の回避、負荷軽減、自動化の3つの領域で支援する。

ブラックボックス化の回避では、「お客様カルテ」を強化し、資産管理情報だけでなく、過去のサポート対応、ランセンス等の情報共有を支援。また、OMNMによるネットワーク環境を復旧するための管理・監視ソリューションを提供する。

負荷軽減では、2020年1月のWindows 7のサポート終了に対応するためのヘルプデスクの一時対応を期間限定で提供。また、サーバ導入から年度ごとに必要な情報と提案依頼書策定に向けた実務的な支援を行う。

自動化では、RPA化による導入効果のシミュレーションやHCIによるインフラ管理のオートメーション化を実現する。

  • 情シス担当の離職に対する支援策

そして、シャドーIT対策においては、ビジネスの変化に即したIaaS環境(VMware Cloud on AWS Auzre Site Recover、Azure Backup)、クラウドファイル管理、クラウドバックアップによるデータ共有・保護に伴う周辺ITを支援するSaaS、シャドーITのための評価基準(チェックリスト)、セキュリティ投資額別のセキュリティソリューションの提供を行う。

  • シャドーIT対策支援

働き方改革はこれから

今回、新たに調査項目に加えた働き方改革の進捗については、「今後取り組む予定」(31.0%)を含めると8割近い企業が働き方改革着手に向けた取り組みを推進中であるが、実施企業の40.5%は、「導入するも何も変わっていない」との反応を示し、「長時間労働の是正」については進捗が認められるが、働き方の質的改善はこれからが急務だとした。

  • 調査ハイライト 2

また、同じく新たな調査項目であるBCP対策は、策定済み・策定中の企業は39.7%で、西日本豪雨、大阪北部地震、北海道胆振東部地震の昨年の被災地である北海道(44.4%)、大阪(44.8%)と意識の高い地域とされる東海地域(53.8%)を除くと、BCP計画はまだ途上であるという。

  • 調査ハイライト 3