クリックテック・ジャパン自体は、設立して10年くらいになるが、最近のデータ活用やデータドリブンという流れにともなって、守備範囲を広げている。その国内戦略をクリックテック・ジャパン カントリーマネージャー 北村守氏に聞いた。

  • クリックテック・ジャパン カントリーマネージャー 北村守氏

最近のBI市場をどのように捉えていますか?

北村氏:BIツールの歴史においては、第一世代と第二世代があり、第一世代は10数年前、ERPの普及にともなって、そのデータを社内で共有するなかでBIツールが注目されました。第一世代の特徴はセンターライズで、大規模システムにおいてデータウェアハウスを利用していました。ただ、残念ながら知識がないと使えないツールとなっており、利用が一部に留まったと思います。

第二世代はセルフサービスBIで、システム部門の人だけでなく、ビジネス部門の人でも気軽に使えることが特徴で、クリックテックが牽引してきました。ただ、ここにも問題点があり、現場に寄り過ぎた分、セキュリティやガバナンス面にフォーカスされていません。また、Excelでの管理のようにデータが個々にあり、分析までいかず、グラフ化など可視化の段階で満足してしまう傾向があります。そのため、知見を得てビジネスに活かしていくという本来の目的から離れてしまっています。

われわれは第三世代に向けSNSデータなど、さまざまなデータを活用できるプラットフォームをつくろうとしています。そのため、分析するための準備から最後のビジュアライズまでをカバーできるベンダーになろうとしています。

それは、DMPを手がけるということですか?

北村氏:世の中にはデータレイクという言葉がありますが、やみくもにデータを貯めている状況です。これは、データにアクセスしようとしてもアクセスできる状態ではないので、データ整理のためのツールが必要です。そのため、われわれはこれらのツールを買収し、分析ツールと一緒に使うことでデータの準備、分析、洞察という一連の流れのソリューションを提供できるようになろうとしています。これをわれわれはプラットフォームと呼んでおり、それが他社に対する差別化になると考えています。

第三世代に向け、どのような取組を行いますか?

北村氏:第三世代に向けては、いくつか課題があります。たとえば、分析ツールのインストールなどに手間がかかる点です。これが、もう少し軽いエッジ側に分析ツールが搭載されれば用途が広がり、分析の裾野を広げることができます。そのため、組み込み型の分析ツールを提供しようとしています。それがQlik Coreです。現在、IoTの世界では、センサーデータを集めて分析しようとしていますが、そのためにはどこかにデータを集める必要があり、トラフィックなどで限界が来ます。もし、センサーに分析ツールを載せれば、分析結果だけを集めればよく、トラフィックの問題を回避できます。これは、分析できる対象を広げる意味でも効果的だと思います。

また、分析者のリテラシーの問題もあります。これはツール以前の問題です。この問題に対して、データリテラシープロジェクトを立ちあげ、トレーニングプログラムを提供しています。さらに、AIを組み込んで、チャートを自動作成し、選択肢を提供することなどでリテラシーがそれほど高くない人でもBIを使えるようにしています。

世の中には、人が思いつかないような知見をAIによって得ようという取り組みもありますが、データの過程がわからないと分析できないと思います。われわれがやろうとしているのはAugmented intelligence(拡張知能)で、人工知能ではありません。AIを使うにしても、最終的には人間の判断が必要だと思っています。

Qlik Coreの用途して、どのような領域を想定していますか?

北村氏:日本のIoTビジネスはかなり進んできており、保全、分散分析、ドローンによる農薬散布の個別最適などがあります。日本には賢い人が多いので、われわれが製品を提供することで、それを使って新たなビジネスを思いつく人が必ず出てくると思います。そのための開発環境を提供するのがQlik Coreだと思っています。

新たな用途に向け、エコシステムの再構築も必要だと思いますが・・・

北村氏:これまでリセラーさんを中心にお付き合いをしてきており、それは今後も継続しますが、デベロッパーさんなど、今後は開発する方とのお付き合いが増えていくと思います。また、サブスクリプションモデルやSaaSビジネスも提供しようとしていますので、SaaSプロバイダやMSP(Managed Service Provider)などとのお付き合いも増えていくと思います。

日本市場では、今後、どのような領域に注力しますか?

北村氏:日本法人としては、これまでパートナーさんを通して販売してきましたが、今後はラージエンタープライズのユーザーに向け、われわれが直接できることが増えていくと思います。直販はしませんが、メッセージングの部分をやっていきます。また、最近はインダストリーカットで製品を提供していくことが増えてきました。それに応じて、売上も伸びており、製造業は3年前に比べ2倍、金融は4倍になり、リテールにも強みを持っています、また、最近は医療系も需要があり伸びています。今後は、医療系や公共系を徐々に拡張していきたいと思います。