毎年7月~9月は、企業の情報システム担当者にとって特に注意を要する時期である。お盆明けのシステム再稼働や、夏場によく起こる落雷による停電が原因のトラブルをきっかけに、NASやサーバーなどのRAID構成のストレージ機器の障害が表面化しやすくなるからだ。
共有フォルダにアクセスできない、異常ランプが点灯するなどの兆候は、すでに障害が進行しているサインかもしれない。とりわけ複数台のHDDやSSDで構成されるNAS / RAID機器は重要な業務データの保管先そのものであることが多く、障害が発生すればデータ消失にとどまらず、事業継続にまで影響が及ぶことになる。
今回は、デジタルデータソリューション株式会社(以下、デジタルデータソリューション)でデータ復旧サービスを担う井瀧 義也 氏と金 泰賢 氏に、夏場に増えるNAS / RAID機器の障害の実態と、業務を止めないための初動対応、そしてデータ復旧を支える技術や体制について話を聞いた。
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(左)デジタルデータソリューション株式会社 エンジニアリング部 部長 井瀧 義也 氏
(右)同社 エンジニアリング部 リカバリーエンジニア フィジカルチーム 金 泰賢 氏
夏場にお問い合わせが増える理由
──夏場、特にお盆明けにNAS / RAID機器の障害が増えるのはなぜでしょうか。
井瀧氏:お盆明けの業務再開や、夏場に多い落雷の影響で発生する停電により、NAS / RAID機器 (※1)のトラブルが発生しやすくなるためです。「久しぶりに稼働させたら認識しない」「異常ランプが点灯した」「共有フォルダにアクセスできない」といったお問い合わせが多く寄せられます。情報システム担当者の方が休み明けに障害に気づくケースは多く、年間を通して見ても、お盆明けは障害の発覚が集中しやすい時期です。
(※1:NASはネットワーク経由でデータを保存・共有するストレージ機器、RAIDは複数のHDDやSSDを組み合わせて運用する記録方式。)
──障害が起きると、業務にはどのような影響が出るのでしょうか。
井瀧氏:社内の共有フォルダや業務データにアクセスできなくなり、顧客情報や取引情報、設計データなどの重要なデータを確認できない状態に陥ります。基幹システムが利用できなくなれば、業務そのものが停止し、取引や顧客対応にも支障をきたしかねません。さらに、バックアップを取得していない、あるいは正常に取得できていない場合は、データ消失につながる可能性もあります。このような障害は、業務停止やデータ消失を招き、事業継続にも大きな影響を及ぼすおそれがあるのです。
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デジタルデータソリューション株式会社 エンジニアリング部 部長 井瀧 義也 氏
データ復旧を左右するのは、障害に気づいた直後の判断
──障害に気づいたとき、初動対応としてまず何をすべきでしょうか。
井瀧氏:「いつもと違う」と感じたら、まず操作の手を止めることが重要です。ご自身の判断で再起動やリビルドを続けるほど、データが失われるリスクは高まります。NAS / RAID機器は複数台のHDDやSSDで構成されているため、1台の異常が全体の状態を悪化させることがあります。通電を続ければヘッド障害などの物理的な損傷が進行する場合もありますし、誤ったリビルドや再構築によって正常なデータまで上書き・破損するおそれもあります。一度状態が悪化すると、専門業者でも復旧が困難、あるいは不可能になるケースも少なくありません。
金氏:何とか自力で復旧しようとして、HDDやSSDを分解したり修理を試みたりする方もいらっしゃいます。しかし、そのような作業によって、かえって状態を悪化させてしまうケースは少なくありません。なかでも、ROMチップという機器を動かすための設定情報を保存する役割を担っている部品を交換してしまうと、互換性の問題から正常に動作しなくなることがあります。元のHDDの情報が保存されているROMチップそのものが失われてしまうと、復旧が極めて困難になる場合もあります。
井瀧氏:大きな組織ほど、まずは自分たちで試される印象があります。しかし、その結果かえって状態が悪化し、復旧が難しくなってしまうケースも少なくありません。だからこそ、少しでもおかしいと感じた場合は、早い段階でご相談いただきたいと考えています。
実際のデータ復旧事例が示す「障害を見極める技術力」
──お盆明けにデータ復旧対応を行った事例を教えてください。
井瀧氏:過去に弊社にお問い合わせいただいた事例として、お盆明けにファイル共有用のNASが突然ネットワーク上から見えなくなり、共有フォルダに一切アクセスできなくなったという事例があります。
RAID6構成で容量は約2TB。電源は入るが、異常を示すランプが点滅している状態でした。休暇中は誰も操作しておらず、最後に正常に稼働しているのを確認してから約10日が経過した時点で障害が発覚した事例です。
診断の結果、4台あるHDDのうち3台に物理的な劣化が見つかり、うち1台はファームウェア(※2)にも不具合が発生していました。そこで、各HDDの状態やRAIDの構成情報を詳しく確認したうえで、必要な範囲に絞って復旧作業を実施し、4日でご希望のデータの復旧に成功しています。
(※2:HDDやSSDなどの機器を動かすために内部に保存されている制御プログラム。)
──RAIDを構成する複数台のHDDを扱う際に重視している点は何でしょうか。
井瀧氏:何が原因かを見極める技術力です。複数台のHDDを扱う案件では、同時期に使用を開始したHDDであっても、故障の状態や損傷の程度はHDDごとに異なることがあります。状態を正しく把握しないまま一律に処置を行うと、かえって復旧までに余計な時間やコストがかかってしまいます。数多くのデータ復旧のご依頼に対応してきた経験から、各HDDの状態と原因を的確に見極め、本当に必要な処置だけを行います。これにより、復旧の可能性を高めながら、復旧までの時間短縮にもつなげています。
──ほかにも、お盆明けに多い障害事例があれば教えてください。
金氏:例えば、社内で利用されていたデスクトップPCに搭載されたHDDのデータ復旧事例があります。お盆休みで10~15日の間稼働停止していたPCを起動したところ、プログラムが立ち上がらず強制シャットダウンされてしまったそうです。お客様に状況を伺うと、内蔵されているHDDを自力で取り外し、別のPCに接続しても認識・起動しなかったそうです。診断の結果、HDD内部のファームウェアに異常が発生していることが判明し、修復作業を実施したところ、データのコピー率100%で復旧完了することができました。
ファームウェア障害は同じモデルや型番のHDDであっても発生する原因や症状が一様ではありません。障害の内容によって必要となる修復方法も異なるため、状況を正確に見極めながらそれぞれに適した対応を行う復旧技術が問われます。
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デジタルデータソリューション株式会社 エンジニアリング部 リカバリーエンジニア フィジカルチーム 金 泰賢 氏
──長期休暇の影響以外に、夏特有の障害が発生した事例はあるのでしょうか?
井瀧氏:夏は気温上昇や台風・落雷など、この時期特有の季節要因による障害が発生しやすくなります。その影響もあり、弊社へのデータ復旧のお問い合わせは増える傾向があります。例えば、落雷による停電の影響で、RAID1構成のNASに保存していたデータへ一切アクセスできなくなったという事例があります。他の修理業者に一度依頼されたものの、復旧できないまま返却されていました。2台のHDDに物理的な劣化が見つかり、うち1台は損傷が進んでいましたが、プラッタ表面への特殊な処理を施しながら読み出し作業を実施し、1週間で復旧することに成功しました。この事例のように、他社様で復旧不可と判断された機器のご相談は8,000件を超えており、なかには4社に断られたお客様のデータを復旧したこともあります。
金氏:私たちは、他社で復旧が難しいと判断された案件や、誤った診断・対応が行われていた案件にも数多く対応してきました。障害状況を正確に見極め、適切な復旧方針と工程を選択できるエンジニアが多数在籍しています。
また、難易度の高い案件にも積極的に取り組んでおり、不要な作業や遠回りな工程を避けながら復旧を進めることで、時間やコストの無駄を最小限に抑えています。その結果、複数の業者を経由した末にご相談いただくときでも、データを復旧できるケースは少なくありません。
──こうした難易度の高い案件への対応を支えているのが、2011年以降で累計50万件を超える相談(※3)に応じてきたデジタルデータリカバリーの技術力と体制なのですね。
(※3:算出期間:2011年1月1日~)
約8割の案件を48時間以内に復旧する体制を支える4つの強み
──デジタルデータリカバリーでは、約8割の案件を48時間以内に復旧できる体制を実現していますが、その背景にはどのような強みがあるのでしょうか。
井瀧氏:当社にはさまざまな強みがありますが、本記事ではNAS/RAID機器のデータ復旧において特に重要となるポイントを中心にご紹介します。まず1つ目は一気通貫体制です。営業からエンジニアエリアまでを1フロアに集約し、受付から初期診断、復旧作業、納品までを社内で連携することで、工程の切り替えによるタイムロスを抑えています。2つ目は技術力です。約40名のデータ復旧専門エンジニアが在籍し、復旧技術を共有しています。RAIDの累計ご相談件数14,949件以上(※4)の実績に裏打ちされたノウハウがあるため、難易度の高いデータ復旧依頼に対しても復旧できた実績があります。
(※4:算出期間:2011年1月1日~)
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データ復旧アドバイザーとエンジニアが1フロアに集約しており、素早い連携が特徴
3つ目は専用設備と豊富なHDDのドナー在庫です。HDDの開封作業に対応するクラス100のクリーンルーム(※5)や解析設備に加え、約7,000台のドナーHDDを備えているため、多種多様な機器の障害に対しても部品調達を待たずに作業へ着手できます。4つ目が法人向けの無料出張診断です。持ち出しが難しいRAID機器やサーバーでも、その場で診断できます。こうした体制のもと、一部復旧を含む復旧件数割合は92.6%に達しています(※6) 。
(※5:クラス100とは、空気中の微粒子を極めて少ない状態に管理するクリーンルームの清浄度規格。)
(※6:内、完全復旧52.0%。復旧件数割合=データ復旧件数/データ復旧ご依頼件数。2025年9月実績)
金氏:対応件数が多い分、さまざまな経験を積むことができます。物理障害に直接対応しながら情報収集や研究にも取り組み、その経験値を技術力へ還元しています。私自身はOS障害への対応など特殊な案件も担当しており、データ復旧後には、必要に応じてOSが起動できる状態まで戻し、業務で再び利用できる環境づくりまで対応しています。
井瀧氏:これまで、他社では対応できないと判断されたケースにも数多く向き合ってきました。一般的に専門業者でも復旧が困難とされるスクラッチ障害(記録面に傷が入ったHDD)については2015年ごろから研究してきました。ほかにも多種多様なデータ復旧技術の研究を積み重ね、研究の成果として新しくデータ復旧できるようになったご相談もあります。1%でも可能性があればチャレンジする──それが当社のエンジニアとしての姿勢なのです。
お盆明けの障害に備え、企業が今からできること
──最後に、お盆明けの障害に備えて、企業の担当者へメッセージをお願いします。
井瀧氏:繰り返しになりますが、お盆休みなど長期間機器を停止する前後は、機器の障害が発生しやすい傾向にあるため、問題なくバックアップが正常に取得できているかを確認してください。万が一障害が発生したときは、まずデータ復旧業者にご相談ください。
NAS / RAID機器の障害は、発生後の初期対応によって復旧の可能性が変わる場合があります。もし相談までに時間がかかったり、自力で障害発生時に誤った対応を行ったりすると、復旧が難しくなるケースもあります。
デジタルデータリカバリーでは、24時間365日データ復旧に関するご相談を受け付けております。緊急で対応が必要な際もご相談いただけますので、お困りの際はぜひお問い合わせください。
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