5月22日から2日間、トレジャーデータはプライベートイベント「TREASURE DATA “PLAZMA”」を開催。2月の初開催に続く2度目となる今回は、「VUCA時代の『働き方』をデジタルアップデートする」をテーマに掲げて各種講演が行われた。

今回は5月22日に行われた講演のうち、2つを紹介する。1つ目は、エイベックス グループ執行役員 CEO直轄本部 本部長である加藤信介氏による「組織、制度、オフィス、全てを変えたエイベックスの構造改革とは」と題した講演だ。

  • エイベックス グループ執行役員 CEO直轄本部 本部長 加藤信介氏

エイベックスは、音楽事業だけでなく、アニメ事業やデジタル事業にも進出し、さらにはダンススクールや旅行、飲食、ベンチャーキャピタルと幅広い展開を行っている。その上で、加藤氏は、一見問題がないように見えるかもしれないが今後のためには外部環境の変化に対応して行く必要があるとし、「変化を乗りこなせばチャンスになるが、乗りこなせなければレガシーとして終わってしまう。過去の栄光にとらわれず、エイベックスをもう一度作り直さなければいけないという危機感があった」と語り、構造改革を行うに至った背景を語った。

エイベックスでは2017年、組織、人事制度、風土、オフィスという4つについての改革を行った。「運用や進行まで考えると1年では達成できないため、未来のあるべき姿のためのベースの作り直しを行い、息吹を起こす1年だったと考えている」と加藤氏。

組織については階層が少なく、決済スピードが速く、責任のあるポジションを努力している人が担える体制へと変更。

「みんなでコラボレーションし、内向きではなく外向きにコアを使っていく組織にした」(加藤氏)

さらに、管理職の削減や権限譲渡によるスピードアップ、重複している子会社の統合・再編成などを行ったという。人事制度については、定型的な業務に人材を使うのではなく、機会等を与え支援することでそれぞれの才能を最大化することを目指したという。

  • 組織の見直しにおける4つのポイント

  • 新しい異動制度と人づくり

風土については、企業理念や行動規範を新たに設定した。外部環境が変わる中でフェーズごとに重視することは変わるはずであり、その都度重要なことに絞って理念や行動規範を臨機応変に作り替えるのは一つの手法だという考え方だ。これに加えてチャレンジを賞賛し失敗を受け入れる風土づくりや、新しいテクノロジーのインプット機会を提供するなど行い、オープンイノベーションを促進。社内に不足していた制度も増やしたという。

  • 新たに作られた企業理念と行動規範

  • 社内に不足していた公募制度等を新設

オフィスは、ちょうど本社ビルの建て替えを行っていた時期、完成1年前の段階でほぼ全てのフロア構造の見直しを行った。これはオフィス建て替え中に構造改革へ着手したことから、当初の構想と改革後の組織との整合性がなくなったことを受けてのものだ。重視したのはコミュニケーション・コラボレーション、オープンイノベーションというキーワードだ。大きなポイントは全社員に対してフリーアドレス制を導入したことだという。

「今後は働き方がよりプロジェクト制になっていく中、固定席を持たず流動的で柔軟なオフィス環境が会社のベースにあることが、今後の働き方に適しているという目線でオフィスの改革を行った」と加藤氏。勤怠管理や評価といった課題になりそうな面はテクノロジーで解消できると実感を語った。

また、審査ありの入居者登録制のコワーキングスペースなども設置。さらに6月からは本社ビル内に保有するスクールの上位者が利用するスタジオを設けるという。

加藤氏はすでに出ているファクトとして未来型花火エンターテインメント「STAR ISLAND」の事例などを紹介した後、「トップが未来のビジョンにコミットした上で、何のために組織や人事制度を変え、オフィスを変えるのかという目的を、Whyから逆算してトップダウンで進めて行くことが重要。また、社員にとっても会社は一生乗り続けなければいけない船ではない。自分の成長にフォーカスしたキャリアを積めばいい。会社は人の出入りをある意味歓迎しながら、組織マネジメント自体も羊飼いのマネジメント的な形で個人のエンパワーメント化して会社の成長につなげて行く必要がある時代」と構造改革に取り組むにあたって必要な考え方を語った。