日本電気(NEC)は6日、ウェアラブルセンサを用いて取得した生体情報から、従業員の長期ストレスを段階別に高精度に推定する技術を開発したことを発表した。

  • 長期ストレス把握イメージ

    長期ストレス把握イメージ

従業員の心身の健康を維持、向上させることで企業の生産性を高めることは、企業経営の上で大きなテーマとなっている。従業員の心身不調の主な要因のひとつに、長期的なストレスの蓄積がある。組織や従業員の健康管理上、長期ストレスの程度を雇用者や従業員本人が常日頃から把握し、対処していくことは極めて重要だが、客観的に捉えることは容易ではない。

長期ストレスを把握する方法として最も一般的なアンケートは、数か月ごとの定期的な状態把握には有用だが、回答者に負担がかかるなど頻繁に実施することは難しい。また、ウェアラブルセンサから取得する生体情報を用いて、高ストレス者と低ストレス者を二段階で分別する技術では、高ストレスの兆候を検知することはできない。

このたびNECが開発した技術は、心理学の知見から新たに見出した生体情報の特徴を用いて、段階別に高精度な長期ストレスの推定を可能にするもの。

リストバンド型ウェアラブルセンサで取得した生体情報から、長期ストレスを精度よく推定するために、今回「一時的に大きなストレスを受けると、その後些細なこともストレスと感じてしまう」という心理学の知見を導入し、これを反映できるような長期ストレスの微細な差異を表す"生体情報特徴量"を考案した。これにより、生体情報による推定で、アンケート結果に相当する細かで高精度な長期ストレス認識を実現する。

また、心理学の知見を用いて、1ヶ月単位の長期間にわたり生体情報の特徴に変化がない場合と、その期間中に大きなストレスを感じて変化がある場合を区別する。生体情報の特徴に両者に違いがみられなくても、時間経過による変化をとらえることによって、長期ストレスの細かな差異を測定できる。その結果、高ストレスの兆候を含め高精度に把握できるようになる。

今回、リストバンド型ウェアラブルセンサを使いて、この技術をNEC社内で検証した ところ、従来技術と比べてより正確に長期ストレスを推定できたという。また、アンケートによるストレス値と比較したところ、平均誤差±3.3で、高精度に長期ストレスを推定できることを確認したということだ。これは、高低2段階しか区別できなかった従来技術に対し、本技術では高ストレスの兆候を含めて6段階まで区別できることに相当するという。

なお、同社はこの成果の一部は、3月20日〜23日に東京電機大学 東京千住キャンパスにて開催された「2018年電子情報通信学会総合大会」において、22日に発表された。