米IBMは、2018年3月19日~22日までの4日間、米ネバダ州ラスベガスのマンダレイベイにおいて、新たな年次イベント「Think 2018」を開催している。

同社では、InterConnectおよびWorld of Watsonの2つのイベントを開催してきたが、今回、これを「Think」に統合。「全ブランドが集結するIBM初の試み」と位置づけている。全世界から4万人以上の顧客、ビジネスパートナーが参加。会期中には100を超える講演や、1000を超えるテクニカルセッション、ハンズオンセッション、認定取得セッションなどが行われる。

日本からは、500人以上の顧客およびビジネスパートナーが参加。また、日本IBMのエリー・キーナン社長を含めて、日本IBMの幹部社員も多数参加した。そして、開催2日目となる3月20日午前8時30分からは、米IBMのGinni Rometty会長兼社長兼CEOによる基調講演が行われた。

テクノロジーとビジネスの変化が同時に起こる今回の変革はWatsonの法則?

冒頭、Rometty会長兼社長兼CEOは、「テクノロジーとビジネスの変化が同時に起こると、すべてのものが変ってしまうことになる。これは、25年に一度のことであり、過去60年には2度起こっている。ひとつは、ムーアの法則であり、もうひとつは、メトカーフの法則だ。今回の変革は、第3の変革であり、データが加わることによってもたらされるものだ。これは、Watsonの法則と呼ばれるようになるかもしれない」などと切り出し、「これは、選ばれた少数の人が勝つのではなく、全員が勝てるものになる。ここにいる人たちは、破壊される側ではなく、破壊する側にいる。ビジネス、社会、IBMにとっての変曲点になる」などとした。

  • 米IBMのGinni Rometty会長兼社長兼CEO

ここでは、データの80%が検索できないデータであり、これらのデータを企業が保有しており、これらのデータを活用することが重要であることを示す一方で、ある金融機関においては、一日35万通のメールの6割に対して、Watsonが回答。その回答に対して、95%の人がよかったと回答していることや、Watson Healthが、11万5000人の患者を助けた実績などを紹介。

「人工知能が、いい仕事をするのであれば、人工知能に助けてほしいという要望がある。デジタルプラットフォームを活用して、機械学習を活用し、人に力を与えることができる。それによって、世界を変えていくことができる。『Let's put smart to work』の世界がやってくる」などとしたほか、「データは、競争優位性を発揮するための基本である。だが、データを活用することだけでなく、データを守るということも考えなくてはならない。IBMには、AIとデータを守るためのルールがあり、そこでは、人を補助するモデルであること、IBMのビジネスモデルは、データを配布したり、データそのものでマネタイズするものではなく、顧客のビジネスモデルと競合するものではないことが決められている。AIエンジンは作った顧客に帰属する。そして、高度なセキュリティを提供するというルールがある」と述べた。

また、「AIによって、どれだけの仕事が無くなるかという議論があるが、私はそうでなくても仕事は変わってくると思っている」とし、「全員が博士号を持たなくてはならないというのであれば、勝者と敗者が明確になるだけである。そうではなく、新たな時代に求められるスキルを全員が持てるようにすることが必要である。そのためには、ホワイトカラーでも、ブルーカラーでもない、ニューカラーを作りださなくてはいけない」と述べた。 さらに、「若者を対象にした教育では、6年間の教育プログラムを受けて、短大卒レベルの学位を経て、どんなテクノロジーの仕事にも就けるようにする仕組みを用意した。また、5億ドルを投資して、トレーニングをしなおすプログラムも用意している。スキル獲得のためには、生涯学習をし続けることが大切であり、そのための仕組みも用意している」とした。

アップルとWatsonを統合

一方で、「IBMは、データの時代に向けて、イノベーティブな技術を活用したり、業界の専門知識も活用し、信頼とセキュリティにも投資をしてきた。その取り組みの成果のひとつがIBM Cloudだ。ブロックチェーンやデータベース、AIなどをクラウドで活用できるようになる。また、新たにIBM Cloud Privateを拡張し、これまでのプライベートクラウドに比べて、100倍以上のデータを活用できるようになる」としたほか、「Watsonは、ビジネス用プラットフォームであり、スピーチやテキスト解析などのコンシューマ用プラットフォームとは異なる」としながら、「IBMは、アップルとWatsonの統合を図ることになる。1600万人のアップルの開発者がWatsonを利用できるようになる。これは大きな統合になる」と新たなニュースを発表した。

iPhoneやiPadなどのBtoB向けアプリに、Watsonを利用できるようになり、ユーザーは、Siriに問いかけると、WatsonがSiriの音声技術を利用して回答することになるという。まずは、フィールドサービスの現場などでの利用を想定しているとした。