IDC Japanは8月30日、国内のビッグデータ/アナリティクス市場について、国内企業の活用に関する調査結果およびテクノロジー/サービス市場予測を発表した。

説明会では、ソフトウェア&セキュリティ マーケットアナリストの草地慎太郎氏が、国内企業のデータアナリティクス活用の課題と対策、ビッグデータ/アナリティクス市場の予測と技術トレンドについて説明した。

IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ マーケットアナリスト 草地慎太郎氏

国内企業の次の課題は「全社レベルのデータ活用」

今回、同社が開発したIT環境の導入状況を客観的に評価する手法「MaturityScape Benchmark」によって、国内企業のビッグデータ/アナリティクスへの取り組みに関する成熟度の分析が行われた。

「MaturityScape Benchmark」は、ステージ1(個人依存)、レベル2(限定的導入)、ステージ3(標準基盤化)、ステージ4(定量的管理)、ステージ5(継続的革新)までの5段階で評価する。

「MaturityScape Benchmark」の概要

今回の調査では、国内企業においては、ステージ1の成熟度を持つ企業が1.4%、ステージ2が33.1%、ステージ3が53.3%、ステージ4が11.3%、ステージ5が0.8%であることがわかった。ステージ4とステージ5の段階にある企業は合計して12.1%に過ぎず、ステージ2と3に80%以上の企業が集中している状況だ。

ソフトウェア&セキュリティ マーケットアナリストの草地慎太郎氏は、今回の調査について、「前回の調査と比べ、ピークがステージ3に移るなど、成熟度は高まったが、ステージ4以上の変化は小さかった。これは、部署レベルでの活用はできているが、部門をまたがるレベル、全社レベルでの活用には至っていないことを意味する」と説明した。

国内企業のビッグデータ/アナリティクス成熟度調査の結果

草野氏は、国内企業のビッグデータ活用の拡大を阻む要因として、「人材の不足」「組織間の壁」「不十分な予算」「システム・データの断絶」の4点を挙げる。

国内企業のビッグデータ活用の拡大を阻む要因

今回の調査により、データアナリティクスを推進する組織を専任の組織を持つ企業は全体で22.1%であることがわかった。ただし、全体で37.7%の企業が「専任組織を検討中」と回答しており、この割合はすべての企業規模でほぼ同等となっている。

また、データアナリティクスの責任者については、6割以上が課長~本部長クラスであり、役員・執行役員クラスという回答は2割程度にとどまった。この点について、草野氏は「全社レベルでの活用を踏まえると、データアナリティクスの責任者は役員レベルが望ましい」と述べた。

ちなみに、草野氏はデータアナリティクスの責任者の成功例として、外部から人材を招いたスシローやすかいらーくに注目しており、「外部から招いた人材は、企業内の既存の枠にとらわれることなく、データアナリティクスを推進していくことができる」と語った。

さらに、予算については、前年度に比べて10%以上増やすと回答した企業は9.4%と満たないことがわかったが、草野氏は「数%増えただけの予算では、全社レベルのデータアナリティクスの実現は難しいのではないか」と、厳しい見方を示した。