凸版印刷は8月9日、光の反射と散乱を制御するナノ構造設計技術と多層薄膜形成技術を組み合わせることで、顔料や染料などの色素を使わずに、色を示す構造発色シート「モルフォシート」を開発したと発表した。
生物の持つ優れた機能や原理を模倣する技術「バイオミメティクス」は、2015年12月に国際標準ISOが制定されるなど、設計や製造などのプロセス標準化の検討が進められている。日本においても、文部科学省の新学術領域として「生物規範工学」が採択され、生物学・史学・工学・情報工学が連携したバイオミメティクスに関連する研究・技術開発が進められるなど、産業界の発展に寄与することが期待されており、玉虫、モルフォチョウ、カワセミ、孔雀など生物の織り成す構造色の再現などの研究が進められてきた。
今回、同社ではモルフォチョウの瑠璃色を表現する構造に着目し、コア技術であるナノ構造設計技術と多層薄膜形成技術を活用することで、その瑠璃色を忠実に再現することに成功したという。具体的には、ナノ構造の形状とサイズ、およびランダムパターン配置の設計によって、表現する色と視野範囲を自由にコントロールすることで、広い視野角を実現したほか、半導体などのフォトマスク製造で培った薄膜形成技術により、ナノ構造上に多層薄膜を精密形成することで、反射吸収する波長域を狭め、発色の均一性を向上したとする。また、独自のナノインプリント技術を用いることで、フィルム上にナノ構造体を大面積で形成することが可能なため、量産対応も可能だという。
なお同社では、同シートを偽造防止やブランドプロテクションなどのセキュリティ商品や屋内外でのプロモーションツールとして活用することを目指した研究開発を進め、2017年度中の実用化を目指すとしている。