富士通は3月30日、同社のデジタルビジネス・プラットフォーム「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc(メタアーク)」に対応した金融ソリューションを「Finplex(フィンプレックス)」として新たに体系化し、同日より順次提供を開始すると発表した。

「Finplex」は、金融機関のデジタル革新を加速させ、共創を目指す、同社の金融ソリューションの新体系として位置づけられている。具体的には、同社の持つ金融機関および金融サービスに関わるSaaS、PaaS、ソリューションパッケージ、アプリケーション基盤を体系化し、クラウドやビッグデータをはじめ、IoT、モバイル、AIなどの技術を融合させたプラットフォーム「MetaArc」上から、金融分野に共通したさまざまなAPIを提供していくとしている。「Finplex」という名称は、複合的な金融ソリューションサービスの提供を目指し、「Finance(金融)」と「Complex(複合)」を融合させ、命名したという。

「Finplex」のコンセプトイメージ

富士通 経営執行役員 金融・社会基盤グループ 副グループ長 窪田雅己氏

同社は昨年7月に、FinTech(フィンテック)の潮流を捉え、新たな金融サービスを創造する場として「Financial Innovation For Japan(FIFJ)」というコンソーシアムを設立し、現時点で金融機関104社、FinTech企業96社と活動を行ってきた。また、Linux Foundationが主催するオープンコンソーシアム「Hyper Ledger Project」へもプレミアムメンバーとして参画し、ブロックチェーンの検討を進めている。

加速するFinTechがとりまく金融業界において、同社の経営執行役員 金融・社会基盤グループ 副グループ長の窪田雅己氏は、同社の事業方針について次のように説明した。

「これまで金融機関のシステムを支えてきた富士通こそが、いま危機感と脅威を持って、変わっていかなければいけない。従来システムとよばれる基幹系やATM、営業店などのSoR(System of Record)領域と、FinTechが該当する新たなビジネス価値を生むSoE(System of Engagement)領域をかけあわせることで、今後の金融サービスが発展していくだろう。富士通はこの共創パートナーとして推進していきたい」

富士通のFinTechへのスタンス

また、今後の「Finplex」の戦略については、同社の経営執行役員 金融システム事業本部 本部長の時田隆仁氏から、「長年巨大化し、複雑化した現行システムに手を入れながらSoEの世界に踏み出していくことは、金融機関にとって大変苦労が多いだろう。まずは、現行システムにはできるだけ手を入れずに、新しいSoEの世界に踏み出す仕組みを提供していきたい。将来的には、現行システムにも手を入れながら、機能分類して、クラウドの世界へ持って行くなど、最適化していきたい」と語られた。

富士通のアプローチの方向性

すでに先行事例として、クレジットカード決済業務を主体とするFinTech企業であるネットムーブと富士通は協業し、南都銀行のICキャッシュカード一体型のクレジットカード会員向けに情報配信サービスを提供しているという。この取り組みでは、富士通は「Smart Biz Connect for Finance」というスマートフォンアプリを制御するAPIを提供し、ネットムーブはアプリケーションを提供している。

南都銀行での取り組み事例

今後は、オムニチャネルに関するAPIや保険分野における営業活動の効率化につながるAPI、ローンに関するロボアドバイザーのようなAPIの提供を検討しているという。

また、富士通全体でFinTechサービスの利用者目線を持てるよう、同社グループの従業員約16万人向けに、最新のビジネスアイディアとデジタル技術を活用した金融サービスを提供していくとしている。4月からはまず、一部の従業員向けに実施される予定だ。

5月中旬に開催される富士通フォーラムでは、より具体的なAPI群や事例などについて、発表される予定となっている。