野村総合研究所(NRI)は3月17日、これからのビジネスや社会に広く普及するとともに、さまざまな影響を及ぼすと考えられる重要技術が2020年までにどのように進展し、実用化されるかを予測した「ITロードマップ」をとりまとめた。今回、重要技術として取り上げたのは「人工知能(AI)」「IoT(Internet of Things)」「ウェアラブルコンピューティング」「カスタマー・エクスペリエンス」「API エコノミー」「FinTech」「リテールTech」「デジタル・マーケティング」の8つとなる。

重要技術の中でもAIは、新たなサービスを生み出す技術として注目されているFinTechやサービスロボットの普及の鍵となる重要な要素技術としても位置付けられている。ディープラーニング(深層学習)の進展とビックデータの増大、膨大な機械学習処理の実現により、AIは3度目のブームを迎えている。

AI関連技術のロードマップ

同研究所では今後、5年間のAI関連技術のロードマップとして2015~2017年度はディープラーニングを取り入れたAIにより技術革新が期待されるという。主な適用領域は音声認識、画像認識、自然言語処理の3つがあり、すでに音声認識にはディープラーニングが商用利用されているが、画像認識分野でのディープラーニングの商用利用が拡大するとしている。

具体的には、製造業における製品の品質管理やECサイトでの画像による商品検索などの利用開始のほか、店舗においても防犯や顧客の行動分析などカメラ映像の利用拡大が予想される。

また、2018~2019年度は単語や文章の分散表現、統計言語的モデルなどの自然言語処理における要素技術に対するディープラーニングの利用拡大が見込まれている。

こうした自然言語処理における要素技術とほかの認識技術を組み合わせることにより、自然言語処理の知見を活用した音声認識や文字認識などの精度向上や、画像認識の結果に対する説明文の生成といったアプリケーションの利用が拡大。ディープラーニングを実行するプラットフォームにおいても学習の並列処理技術が進歩し、学習期間の短縮が可能になるという。

さらに、2020年度以降は現在の機械学習の主流となっている教師あり学習に加え、学習データを用意することなく、試行錯誤によって自己学習する手法がロボットの制御などに適用されるケースが増えると想定されている。

加えて、自動車メーカー各社は2020年を目標に高速道路や一般道における自動運転の実用化を目指しており、高速道路での車線変更や追い越しを可能にした自動車や、信号がある一般道でも車線変更が可能な自動車の出荷を計画している。