最近良く聞く「パーソナルデータ」って何?なんとなく分かっているつもりの今どきマーケティング用語を、SMMLabがやさしく解説します!

用語説明:【パーソナルデータ(Personal Data)】

個人情報保護法第2条第1項で規定された「生存者に関する特定の個人を識別することができる情報」=個人情報に限らず、位置情報や購買履歴など個人の行動・状態等に関する情報に代表される、個人識別性のない情報をパーソナルデータと呼ぶ。

海外においては、パーソナルデータを経営資源として、企業の競争力向上に活用しようという動きが活発化しており、パーソナルデータの利活用を前提としたプライバシー保護に関する検討が進んでいる。

EUでは2012年に、「忘れられる権利」や「プライバシー・バイ・デザイン」を含む基本的人権の保障としてのデータ保護に関する新たな規則の提案(「EUデータ保護規則案」)が発表され、国境を越えたプライバシー・個人情報保護の枠組みの必要性が提唱された。

アメリカでも2012年、オバマ大統領が「アメリカにおける消費者のデータ・プライバシーの枠組み」を公表。同枠組みの中で提案された「米国消費者プライバシー権利章典」では、パーソナルデータが新産業創出の強力な原動力となる可能性と、消費者が自らの情報をコントロールする必要性に関して触れられており、通信履歴に基づき個々の消費者をターゲットにオンライン広告などの追跡を禁止する(Do Not Track)原則が明記された。

対して日本では、多岐に渡る要因によって取り組みが遅れていたが、2013年6月に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」(いわゆる新IT戦略)で具体策として筆頭に掲げられた「パーソナルデータの利用促進」を受け、内閣官房高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)の下に「パーソナルデータに関する検討会」と「技術検討ワーキンググループ」が設置された。そこでの議論をベースに「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」(以下パーソナルデータ大綱)がまとめられ、2014年6月24日に公表された。今後はパブリックコメントの集約、法案作成を経て、2015年の通常国会に個人情報保護関係法令改正案が提出される予定となっている。

参考および参照:「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」
平成26年6月24日 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/info/h260625_siryou2.pdf

解説

日本のパーソナルデータ利活用が遅れている要因とは

多種多様なデータを積極的に利活用することで、社会課題解決による国民生活の利便性向上、新ビジネス創出、サービスの魅力・付加価値向上等の可能性が高まる一方で、プライバシー意識の高い消費者が増加し、不安や反発によって社会的な批判が起きるリスクから、パーソナルデータの利活用を躊躇している企業は少なくありません。

「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」では、ビッグデータによって現行の個人情報保護法では定義出来ないグレーゾーンの情報が増え、保護すべき情報の範囲や事業者が遵守すべきルールが曖昧になりつつあることが、日本のパーソナルデータ利活用を遅らせている大きな要因としています。

そのため、パーソナルデータを中心としたビッグデータの利活用促進と、データの国間流通によるグローバルビジネス推進のために、現在の技術進歩に追い付いていない個人情報保護法を改正しようという動きに繋がりました。

個人情報保護法改正案のポイント

今回の個人情報保護法改正案のポイントは以下の三点です。

(1)グレーゾーンを減らす
事業者がパーソナルデータの利活用に躊躇しないよう、「個人情報」の範囲を明確化し、個人の権利利益の侵害が生じることのないよう取扱いに関する規律を定める。

(2)本人の同意がなくてもデータの利活用を可能とする枠組みの導入
目的外利用や第三者提供に当たって、本人の同意を必要とする現行法の仕組みは、事業者にとって負担が大きく、「利活用の壁」の一つとなっているため、一定の規律の下で原則として本人の同意が求められる第三者提供等を、本人の同意がなくても行うことを可能とする枠組みを導入する。具体的には、個人データ等から「個人の特定性を低減したデータ」への加工と、本人の同意の代わりとしての取扱いに関する規律を定める。

(3)第三者機関(プライバシーコミッショナー)の設置
法令や民間の自主規制ルールを実効性あるものとして運用するために、独立した第三者機関の体制を整備し、パーソナルデータの取扱いに関する監視・監督、事前相談・苦情処理、基本方針10の策定・推進、認定個人情報保護団体等の監視・監督、国際協力等の業務を遂行する。

消費者の理解が得られるパーソナルデータの利活用を

この法改正でどこまでパーソナルデータの利活用が進むかはまだ未知数ですが、実現への環境が国として整備されるのは大きな前進だと言えるでしょう。しかし、今回の法改正はやや利活用前提の色が濃く感じられますので、企業が消費者の十分な理解を得るためには、これまで以上にパーソナルデータの取扱いに関する分かりやすい情報提供や、詳細な説明が求められるでしょう。

経済産業省は、パーソナルデータを利活用したビジネスを促進するためには、消費者と事業者の信頼関係の構築が何よりも重要であるとし、事業者がパーソナルデータを利活用したビジネスを行う上で、特に、パーソナルデータを取得する際に取り組むべき、消費者への情報提供・説明のあり方を示す「評価基準」をまとめています。

出典:『パーソナルデータ利活用ビジネスの促進に向けた、消費者向け情報提供・説明の充実のための「評価基準」と「事前相談評価」のあり方について』
平成26年3月26日 商務情報政策局 情報経済課
http://www.meti.go.jp/press/2013/03/20140326001/20140326001-2.pdf

この中で、企業がパーソナルデータの取り扱いに関して消費者に明示すべき情報としては、以下の7点を必要十分な記載事項としています。

  1. 提供するサービスの概要
  2. 取得するパーソナルデータと取得の方法
  3. パーソナルデータの利用目的
  4. パーソナルデータやパーソナルデータを加工したデータの第三者への提供の有無及び提供先
  5. 消費者によるパーソナルデータの提供の停止・訂正の可否及びその方法
  6. 問合せ先
  7. 保存期間、廃棄

こうした情報を透明性を持って開示するには、技術的に可能だからといって闇雲にデータを集めるのではなく、利活用の目的を明確にした上で必要なデータを見極めることが必要でしょう。

イラスト

速瀬 みさき

1993年よりホラー誌デビュー。漫画家として活動しながらエッセイ、イラスト、デザインなども手掛ける。近著コミックスは、メイド喫茶にバイトで潜入取材漫画。広告代理店勤務の夫を持ちながらも、マーケティングなにそれ?状態で執筆中!

公式サイト : http://www.nanacom.com/
Facebookページ : http://www.facebook.com/hayase.mi
用語解説:ソーシャルメディアマーケティングラボ

本稿は、ソーシャルメディアマーケティングラボにて掲載された記事を転載したものです。

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