ITシステムの運用管理における仮想化技術の活用は、ここ数年の間ホットトピックであり続けている。

仮想化技術が注目されている大きな要因の1つは、ハードウェアの性能向上がソフトウェアの性能要求を上回っていることにある。現在市場に出まわっているPCは多くがマルチコアCPUで、メモリも豊富に搭載できる。用途にもよるが、1つのサービスに1つのハードウェアでは、その性能を使い切れない状況になっている。

このため、仮想化環境を搭載し、1つのハードウェアに複数のサービスを統合しようというのが最近の動向だ。ハードウェアを減らせれば、物理スペースや電力消費量、管理コストの削減につながる。特に厳しい予算の中で運用している中小企業にとって、この点は大きいはずだ。

また、仮想化技術には、運用作業を効率化できるといったメリットもある。例えば、ファイルサーバの運用だ。通常、社内で部署が新設されると、情報共有用に専用のファイルサーバも設置される。この際、必要最低限のフォルダやファイルをあらかじめ用意しておくケースが多いが、これを手作業でやるとなると意外と手間がかかる。しかし、仮想化環境が導入されていれば、事前に用意しておいたファイルサーバ用のイメージをコピーしたり、同じような業務を扱う部署のイメージをコピーして不要な部分を削除したりといった作業を行うだけで、準備が終えられる。データのバックアップなども非常に簡単だ。

このように仮想化技術にはさまざまなメリットがある。ただし、IT製品については、やはり実際に触れみないとわからない部分は多い。そこで本稿では、Microsoft製仮想化環境の「Windows Server 2008 Hyper-V」を実際に導入し、その感想や操作方法を簡単にご紹介していきたい。なお、筆者はFreeBSDのコミッタを務めている関係で、他の仮想化環境は何度も触れているが、Hyper-Vを扱うのはほぼ初めてである。お見苦しい点もあるかと思うが、どうか温かい目で見守っていただきたい。

執筆者紹介

後藤 大地(GOTO Daichi) - ONGS 代表取締役


企業システムを開発するエンジニアとして活躍するかたわら、FreeBSDのコミッタも務めており、同OSの開発に深く関わる。FreeBSDの国際イベントに毎年参加しているほか、国内で開催するFreeBSDカンファレンスに関しては開催者の立場で携わっている。

弊誌には、オープンソースの話題を中心に、ニュースや解説記事を多数寄稿している。

企業システムを開発するエンジニアとして活躍するかたわら、FreeBSDのコミッタも務めており、同OSの開発に深く関わる。FreeBSDの国際イベントに毎年参加しているほか、国内で開催するFreeBSDカンファレンスに関しては開催者の立場で携わっている。

弊誌には、オープンソースの話題を中心に、ニュースや解説記事を多数寄稿している。

仮想化を実現する技術 - 完全仮想化、準仮想化、OS機能、ハイブリッド

さて、実際にHyper-Vに触れる前に、もう少しだけ仮想化技術について補足しておこう。

仮想化を実現する技術にはさまざまな種類がある。さらにそれぞれの技術が拡張と改善と繰り返した結果、現在は境目が曖昧になりつつあるが、代表的な種類としては以下の5つが挙げられる。

  • 完全仮想化(1) : アプリケーションレベルでPCをエミュレートするタイプの仮想化。最も導入が簡単でわかりやすい。OSSではVirtualBoxなどが人気である。最近は性能の向上と高機能化が進み、ハイパーバイザタイプやエンタープライズレベルの機能も登場している
  • 完全仮想化(2) : ハイパーバイザで仮想化するタイプ。ハードウェアの上にハイパーバイザと呼ばれる仮想化のための専用OSを導入し、その上にゲストOSをインストールする。VMware ESX/ESXiなどがその例。複数のハードウェアを使うこともでき、エンタープライズなど大規模なシステムで導入されることが多い
  • 準仮想化 : ハイパーバイザのスタイルをとりつつ、ゲストOSにも対応コードを導入するタイプ。例としてはXenなどが挙げられる。完全仮想化と準仮想化の区分けは曖昧なところがある
  • OS機能 : OSが仮想化機能を提供するもの。Solarisのコンテナやゾーン、FreeBSDのJailなど
  • ハイブリッド : 上記技術の組み合わせ。Hyper-VやKVMなど

便宜上、技術やプロダクトを挙げてあるが、視点を変えればほかのかたちにも分類できる。ハイパーバイザタイプと準仮想化は曖昧だし、最近のハイブリッドモデルは簡単には分類できなくなりつつある。

Microsoftプロダクトが多いなら「Hyper-V 2.0」

上記のとおり、一口に仮想化と言っても、いくつもの技術があり、いくつもの選択肢がある。どの技術を使うべきか迷ってしまうが、中小企業の業務内容を考えると、「Hyper-V 2.0」は有力な候補の1つだ。自社で稼動するソフトウェアにMicrosoft製品が多い場合にはなおさらだろう。

「Hyper-V 2.0」はWindows Server 2008 R2の機能の一部として提供されている。つまり、このOSを導入している(もしくは、導入しようとしている)のであれば、仮想化が必要になったときにHyper-Vの機能を有効にするだけで仮想化環境を実現できる。こうした手軽さが「Hyper-V 2.0」の最大の魅力だ。

また、Hyper-Vにはほかのソリューションと比較して次のようなメリットがある。

  • 完全ハイパーバイザタイプと比べて、サポートしているハードウェアが多岐に渡る。Hyper-Vがサポートするハードウェアは、いわばWindows Server 2008/ 2008 R2がサポートするハードウェアということになる。動作するハードウェアが豊富という点は、ハードウェアの調達に高い費用をかけたくない中小企業にとって都合がいい。既存のハードウェアの使い回しも実施しやすい
  • 完全ハイパーバイザタイプと比べて、導入が簡単。Windows Server 2008 / 2008 R2を導入してあるなら、機能を有効にするだけでいい
  • アプリケーションレベルでPCをエミュレーションするタイプと比較して、サーバとしての運用が簡単。Windows 7からリモートサーバー管理ツールを使って遠隔管理や遠隔利用も可能。最小構成のHyper-Vは消費リソースが少ないというメリットもある
  • アプリケーションレベルでPCをエミュレーションするタイプと比較して、管理コストを抑えられる。最小構成のHyper-Vを利用すれば、その効果はさらに高まり、セキュリティ面でもメリットが得られる

もちろんデメリットもある。大規模システムになるとデータセンターに最適化された運用管理製品の導入を検討しなければならないし、導入の簡単さだけを考えれば、アプリケーションレベルのPCエミュレータの方に分があると言える。ただし、個人や小企業ならアプリケーションレベルのPCエミュレータで十分かもしれないが、企業レベルになると運用が苦しくなるかもしれない。