北米ボルドー市の事例
同説明会では、米国コロラド州ボルダーで行われているスマートグリッドへの取り組みをAccentureのグローバル スマートグリッド チーフアーキテクトであるJeffrey D.Taft氏が、蘭アムステルダムで行われているスマートグリッドへの取り組みを、同素材・エネルギー本部 シニア・エグゼクティブ 欧州地域 スマートグリッド責任者であるMaikel van Verseveld氏がそれぞれ説明を行ったので、その様子もお伝えしたい。
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Accentureのグローバル スマートグリッド チーフアーキテクトであるJeffrey D.Taft氏(左)と、同素材・エネルギー本部 シニア・エグゼクティブ 欧州地域 スマートグリッド責任者であるMaikel van Verseveld氏(右) |
20世紀における北米の電力事業モデルは、垂直統合された個々の電力会社が大規模発電を行い、それを都市に送電するというものであった。米国の電力会社におけるスマートグリッドに対するスタンスは、老朽化した電力網のリプレースもあるが、法規制による州政府からの要請、環境を意識する消費者側からのニーズ、分散電源の活用で発電所新設コストを抑制したい、といったように会社ごとに別々の思惑を持つ。
しかし、そうした複数の要素を電力会社が選択しスマートグリッドに内包することで生み出されるポイントは「データのマネジメント」にあるという。「米国のスマートグリッドには各社の思惑ごとに定義が存在している。それぞれにぞれぞれの根拠があり、狙う部分が違っている」(Taft氏)であるが、それらの中から共通部分を取り出すと、主要技術としては、以下のものが挙げられるという。
- センサ技術、
- 組み込み処理
- デジタル通信
- 電力情報を管理するソフトウェア
これらを活用することで、スマートグリッドの「可視化」「制御可能化」「自動化・自律化」「統合化」が図れるようになり、消費者との双方向交流や設備の管理、電力供給などができるようになるという。また、政府としてもスマートグリッド関連の経済刺激策を複数実施しており、今後多くのプロジェクトが出てくる予定だという。
では、ボルダーではどういった形のスマートグリッドになっているか。同市に電力を送電する電力会社はXcel Energyであり、同社は2008年ころからグリーンメーカーを提唱してきた。その中の1つにスマートグリッドの活用があり、当該都市として人口の数、構成のほか、中小企業が多数存在し、製造業が少なく、他の電力網からかなり離れている、というところが評価されたボルダーが選択され、「SmartGridCity」を目指したプロジェクトが開始された。
同プロジェクトでは70の価値の計測が計画されている。例えば、グリッドのコントロールやセンサの能力、代替エネルギーの導入といったもの。そして、それらを取り入れることによる家庭内での意識そのものの変化を促すことによる消費者の行動分析の実施。また、電力価格情報の提供やどういった状況下に家があるのか(風力発電や太陽光発電が行われているといった)という環境情報、家電の動作状況なども計測される。
ボルダーでの実証実験には、Xcelのみならず、多くのメーカーが参加しており、それらの企業が各プロジェクトに参加する方法を採用している。AccentureもSIerとして参加しており、「我々がこの活動から得たこととしては、パッケージ化された"スマートグリッド"のソリューションは存在しない、ということだ」(Taft氏)。特に、公益事業向け製品の多くは、統合しやすい形に設計されていないため、相互運用性に関する標準の設定はもちろん、統合アーキテクチャを別途定義して活用することが不可欠となる。
また、個々の技術を先に作るのではなく、ビジネス面からの全体の要件定義を先に行い、その後でそこに求められる技術的なソリューションを導き出していくことも必要なほか、最初の時点でセキュリティをいかに構築するかを配慮する必要があり、「スマートグリッドから得られるデータは複数の階層で構築されており、それぞれを独自の方法で処理する必要がある。そのためには、電力を送電するという考えではなく、第1にデータマネジメントをいかに行うかの観点から物事を進めていくことが重要」(同)とした。