Q.1 FirefoxのリリーススケジュールはGoogle Chromeと比較して長すぎる?

Asa Dotzler氏はリリース間隔については"バランス"が大切だと指摘する。現在のChromeのようにユーザベースが少数でありアーリーアダプターが採用している場合には頻繁なリリースが実施できるものの、一般ユーザはそうした頻繁なアップグレードを好まないという。ブラウザの更新はユーザにある種の変更を求めることになるから、現状に満足している一般ユーザはアップデートを避ける傾向があるという。

「法人ユーザにとっては、リリース間隔が1年でも"短い"と感じるはずだ」(Asa Dotzler)

これはFirefoxも経験してきたことだとAsa Dotzler氏。Firefoxもユーザベースが1億人を突破するまでは短いリリースサイクルでも問題なく、自動アップデートもうまくいっていたという。しかしユーザベースが1億人を突破したあたりから、自動アップデート機能を無効にしてアップデートを好まないユーザが急増したという。そうしたユーザに対してもアップデートを促し、かつ、開発者の要求にも答えるリリース期間が1年間というわけだ。GoogleのアプローチはWebサービスを提供する視点に立っており、デスクトッププロダクトの現状を反映していないという。

「Google ChromeがFirefoxと同じペースで増えたとすると、2、3年後に1億ユーザベースを越えるはずで、同じ壁にぶち当たるはずだ」 とAsa Dotzler氏。さらにこう続ける 「Googleはデスクトップアプリケーションを大量に出荷してサポートするということに関してはまだ成功していない。Mozillaではすでに何億人というユーザに対してアップデートやセキュリティを確保する作業を実現させている。ただ、Googleはユーザをトラッキングして学ぶことに関して実に優れた能力を持っているため、今後学習して変わっていくだろう」

Microsoftのブラウザのリリースサイクルは2年から3年ともっと長い。これはエンタープライズの顧客が多いためだ。企業ユースでは一般ユーザ以上にアプリケーションのアップグレードを好まない。セキュリティ対応以外は3年くらいはバージョンアップしないのはざらだ。こうした状況を反映してIEのブラウザリリースサイクルはもっと長いとAsa Dotzler氏は説明する。

Q.2 Firefox 3.5のリリースは当初の予定よりもかなり遅れたが、リリースエンジニアリングに問題があるのでは?

Mozillaはほかのブラウザベンダと比較すると、営利企業で求められる圧力に晒されていないという特徴がある。Mozillaが目指すのはWebを進化させることであって、競合ブラウザを打ちのめすことではないとAsa Dotzler氏はインタビュー中、力を込めて繰り返した。ブラウザを改善することが主目的であるため、ほかのブラウザに先にリリースされても恐れることはないという。

Q.3 Chromeが登場してからFirefoxはその影響を強く受けているように見える。マルチプロセスアーキテクチャへの取り組みを開始したのはいい例ではないか?

「Mozillaの製品ポリシーは他の商業ベンダとはまったく違う。Webユーザへのアプローチがそもそも違うのだ」(Asa Dotzler氏)

Firefoxがマルチプロセスアーキテクチャの検討を開始したのはGoogle ChromeではなくIE8が登場したときだとAsa Dotzler氏。当時、マルチプロセスアーキテクチャは優れたアイディアだと考えてはいたものの、リリースエンジニアリングの最中であることと、Mac OS XやLinuxでの実装が困難だと判断し取り込みを延期した経緯があるという。

Google ChromeはWindowsのみが正式プラットフォームとしてサポートされている。実装の随所がWindowsに依存したものになっていおり、Mac OS XやLinuxへの移植作業が進められているものの、依然として正式版のリリースには至っていない。

Firefoxは3.5を区切りとしてマルチプロセスアーキテクチャへの取り組みを開始した。Asa Dotzler氏が説明するところによれば、クロスプラットフォームでマルチプロセスアーキテクチャを実現するには問題が多く、今後Googleの開発者とも協力しながら、より優れた仕組みを模索していくということだ。