厚生労働省は28日、医薬品のネット販売規制などについて議論する検討会の第5回会合を開いた。前回会合に続き論点ペーパーに基づき議論を行ったが、終了直前、既存の通信販売利用者らに限定し販売を継続するなどとする省令改正の方針が厚労省から示された。

28日開かれた「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」第5回会合

2009年6月に施行される予定の厚生労働省の省令では、改正薬事法の施行に伴い、一般用医薬品のネット・通信販売に関して大幅に規制する内容になっている。この省令を再度議論するため、「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」が設置。今回は第5回の会合となる。

今回の会合では、インターネットなどを通じた医薬品の販売の在り方について、購入者の状況をインターネットを通じてどう把握するかや、ネットを通じた顧客とのコミュニケーションの方法などの論点について、これまで各構成員が出した意見を確認しながら議論。「インターネットでは対面販売と同じような顧客状況の把握はできないのではないか」「チェックボックスの活用などによって、顧客情報の把握は可能」など、意見が出された。

だが約2時間にわたる議論の後、北里大学名誉教授で座長の井村伸正氏が、「今回の検討会は、報告書にまとめるというところまで落とせない。皆さんの意見はたくさん出てきたが、ネットで医薬品を販売しようという立場の構成員と医薬品を安全に提供したいという構成員のよって立つ基盤が違い、議論をまとめるのは不可能」と総括。

「(6月の省令施行までの)時間的な制約もあり、これまで出た意見を汲んでもらって、行政に(必要な措置を)やっていただかなくてはならない状況」と、検討会の議論を踏まえて厚生労働省側で省令を再検討すべきだとの考えを示した。

検討会終了直前、厚労省から省令の改正方針提示

これを受け、検討会の事務局を務める厚労省医薬食品局の川じり(尻の「九」が「丸」)良夫総務課長は、「通信販売が規制されると困る人がいるという観点から、(1)特定の医薬品を継続して飲んでいる人、(2)離島など店舗のない場所で通信販売を利用している人、などを対象に、明確な期限を設けて通信販売を継続するための措置を省令改正案に盛り込む方針」と説明。

さらに、今後のスケジュールについて、「厚生労働省でまず改正案を作成、パブリックコメントを行った上で、5月中旬にも検討会に提示したい」と話した。

これに対し、楽天会長兼社長の三木谷浩史氏は、「もしそういう方針ならなぜ今回の検討会の冒頭で示さないのか。ずっとそこに座っていたではないか。むちゃくちゃだ。おかしい」と激怒。「厚労省が勝手にパブコメを出して、勝手に施行するなら、何のためにここまで議論してきたんだ」と、パブリックコメントを実施する前に省令改正案を一旦検討会に提出すべきと強く主張した。

ネット販売の危険性を訴え、三木谷氏とは異なる立場の日本置き薬協会常任理事長の足高慶宣氏も「逆の立場だけど、そのポイントには同意する」と発言。これらの意見の結果、パブリックコメントを実施する前に、改正案を検討会に提示することが決定された。

次回検討会は、5月11日の週の早い段階で行われることが予定されており、改正案の詳細な内容が注目される。