ネット事件、その後

P2Pソフトによる情報流出、サーバへの不正アクセス、ネット掲示板への犯行予告、オークション詐欺……ネットに関連した事件報道はよく目にします。しかし、"その後"がどうなったのかはご存じでしょうか。ネット事件系の報道では、犯行動機やその手段について割愛されるケースが多いと言えます。『ネット事件、その後』シリーズでは、そうしたネット事件に関する「なぜ?」「どうやって?」という疑問について、裁判傍聴を通じてわかったことをお伝えします。

今回は、2009年2月4日に掲載した『「イヴにアダルトサイト見ましたよね?」架空請求の男ら5人逮捕 - 警視庁』の初公判の模様をレポートする。

もし、ただ閲覧しただけのアダルトサイトから高額な利用料の支払いを請求されたら、あなたはどう対応するだろうか。いまだ「ワンクリック詐欺」の被害が後を絶たない。少しでも身に覚えがあるユーザは、事を大きくしたくないという心理も働いて、あきらかな架空請求であっても応じてしまうのかもしれない。本件では、そうしたユーザ心理につけ込み、直接「電話して請求する」という手段が使われた。共犯者が4人逮捕されており、犯行が組織的に行われていた可能性もある。公判の傍聴を通じてわかったことをお伝えしよう。

事件概要

公判は4月23日午前10時から、東京地裁414号法定で行われた

被告人については、2月20日以降、3件の起訴がなされている。今回は2月20日に起訴された件について審理がなされた。

検察側によると、公訴事実として、被告人(41歳)は2008年1月15日、山梨県の40歳の会社員男性に対し、携帯電話から「(2007年)12月24日にアダルトサイトを使ったと思いますが、現在までの未納金、延滞料、手数料を含め32万8,000円になっています。今日中に払わないと60万円くらいになりますよ」などと電話。

男らが管理する預金口座に、山梨県の郵便局から現金32万8,000円を振り込ませた詐欺の罪に問われている。

検察官が示した公訴事実に対し、被告人は「何も申し上げることはございません」と発言。裁判長から「黙秘ということですか?」と問われたのに対し、被告人は「留保させてほしい」と述べた。

初公判は15分、弁護人「追起訴があるため全て留保」

検察側の冒頭陳述では、被告人は高校中退後、配送業など職を転々とし、前科1犯、前歴(補導歴、非行歴など)5件。今回の公訴事実に関しては、多数の共犯者とともに、アダルトサイトの利用者リストを購入の上、「未納になっている利用料を明日までに払わなければ、延滞料が倍になる」などと電話して法外な料金を請求した。

共犯者に対しては、「ちんたらちんたらやるんじゃねぇ、持っている奴は持っている」などと電話による架空請求にはっぱをかけていた。

だがこれに対し弁護人は、「追起訴が全て終わるまでは全て留保する」と発言。裁判長はこれを受け、検察官に「いつまでに追起訴しますか」と質問し、検察官は「5月の終わりごろまでに」と回答した。裁判長は「それ以降もさらに追起訴はありますか」と再び検察官に質問したところ、検察官は「それ以降もある」と回答した。

今回の初公判は15分程度で終わった。次回は5月下旬、30分程度の公判が予定されている。