これまで受託ソフトウェア契約の会計基準は、短期のものは「工事完成基準」を適用し、長期のものは「工事進行基準」「工事完成基準」のいずれかを選択することが認められてきた。しかし、2009年4月からはすべての受託開発ソフトウェアにおいて「工事進行基準」の適用が原則となる。
工事完成基準とはソフトウェアが完成した時点で売上を計上する仕組みであり、工事進行基準とは開発の進捗度合いに応じて売上を計上する仕組みである。それぞれ一長一短あるが、工事完成基準から工事進行基準に変更になって何が困るかというと、原価、予算、スケジュールを厳格に管理しなければならなくなる点だ。
もっとも、工事進行基準は会計分野の話であり、その理解にあたっては、ソフトウェアにまつわる会計の基礎知識を知っておくべきだろう。そこで『システム開発ジャーナル Vol.8』では、特集3として、ソフトウェアにまつわる会計処理全般について解説しつつ、工事進行基準適用のポイントも押さえた「ソフトウェアの会計処理講座」をお届けしている。
執筆者の広川敬祐氏は公認会計士でありながら、SAPジャパンで連結会計システムなどの導入経験がある、会計とITの知識を兼ね備えている人物。現在は、NTTデータ経営研究所でディレクターを務める一方、日本公認会計士協会IT委員会の委員を担当している。
特集では17のテーマに分けて、ソフトウェアに関わる会計処理の解説を行っているが、ここでは、工事進行基準を適用する際にキモとなる要件「成果の確実性」を紹介しよう。
成果の確実性
工事進行基準を適用するうえでは成果の確実性が問われる。具体的には、次の3つの要素が満たされている必要がある。
- 工事収益総額: 信頼性のある工事収益総額を見積もるには、工事(開発)が完成する見込みが確実でなければならない。加えて、契約において対価が定められている必要がある。対価とは、額・決済条件・決済方法のこと
- 工事原価総額: 信頼性のある工事原価総額を見積もるには、工事原価の事前の見積りと実績を比べて、適時・適切に工事原価総額の見積りの見直しが行われる必要がある
- 決算日における工事進捗度:決算日における工事進捗度の信頼性が必要とされる
IT業界にはさまざまな契約があり、会計知識はエンジニアにとって必須の知識と言える。会計知識に自信がない方は、「ソフトウェアの会計処理講座」でおさらいをしてみてはどうだろう。