横井伸好氏 マイクロソフト 業務執行役員 インフォメーションワーカービジネス本部長

マイクロソフトは、ビジネス市場向け戦略を明らかにした。「the 2007 Office system」をフロントエンドに据え、企業内ITの基軸となる「Office SharePoint Server 2007」「Exchange Server 2007」との連携を強化、業務をより効率化し、さらに生産性を向上 させるための「ソリューション」を提案するとともに、パートナーとの共同体を構築、内部統制、ITインフラの改善など、近年、高まっている需要に対応する総合的な態勢を整えていく方針だ。

「Office system」といえば、Word、Excelなどワープロ/表計算といった、企業の現場で使われる、いわば「文房具」としての機能がまず大きな要素としてあるわけだが、「企業内コミュニケーションやコラボレーション、ポータル、検索、BI(Business Intelligence)など「ソリューション」にも注力していることが、今回の『Office system』の核と位置づけている。これは大きな特徴」(マイクロソフト 横井伸好 業務執行役員 インフォメーションワーカービジネス本部長)だ。

IT自体の導入は日本企業でも進んでいるが、米国との差は広がっている、と横井本部長は指摘する。内閣府の「財政経済白書」2007年版によれば、国内企業では、ITを導入しても、部門内の最適化に留まっている段階にあるところが多く、全体最適化、企業の垣根を越えた共同体の最適化にまで達している企業の数では、米国に大きく引き離されている。それどころか、導入しても使いこなせず、これらが不良資産となっている例すら少なくないという。

同社と日本能率協会が共同で1年かけて実施した「ワークスタイル成熟度全国調査2007(調査対象は1,023社)」の結果によれば、「業務の妨げになっているシステムの状態」を問う設問で最多だったのは「必要な情報を探し出すのに、多くの時間を費やしていると感じる」で、このほか、同一データをシステムごとに入力する非効率や、適切な検索ツールがないあるいは機能していない--といった点で、不満が多いことが浮かび上がった。

「これまでのインフラは、うまく活かされていなかったのでは」(同)と同社ではみており、電子メール、電話、ビデオ会議などを有機的に利用する「ユニファイドコミュニケーション」、情報や知恵を共有する「コラボレーション」、企業内の情報検索を担う「エンタープライズサーチ」「エンタープライズコンテンツ管理」「ビジネスインテリジェンス」の5つのソリューションを柱に「『Office system』をフロントエンドに、全社をカバーできる」システムを提唱、「『Office system』を情報基盤として推進していきたい」(同)考えだ。

5つのソリューションを提案

これらのソリューションの基幹となるのが「Office SharePoint Server 2007」だ。「『Office SharePoint Server 2007』は、情報センターの役割を果たす。人が作った情報は、共有され、管理されるべきであり、それらの蓄積は可視化されなければならない。『Office SharePoint Server 2007』は、常に人を中心に、これらをワンストップで扱うことができる」(同)という。横井氏は「『Office SharePoint Server 2007』は、コラボレーション、BI、ポータル、ビジネスプロセス、検索、エンタープライズコンテンツ管理の6つの側面をもっている。これらの要素すべてをひとつにそろえた製品はない」と話し、強い自信を示した。

2007年は、日本IBMが「IBM Lotus Notes/Lotus Domino」の新製品「IBM Lotus Notes/Lotus Domino 8(「Notes/Domino 8」)」(日本語版)を発売する。企業向けIT市場の最前線では、「Office SharePoint Server 2007」とぶつかることになる。これについて横井氏は「Notesの新版で、IBMがオフィスソフトの機能を前面に置いてきたことは"Welcome"だ。(従来の)Notes対Exchange Serverとの構図ではなく、デスクトップアプリケーション間の争いということになれば、これはマイクロソフトの(得意とする)土俵であり、かえって戦いやすくなった。(無償のオフィスソフトである)StarOfficeがこれまでどれだけ普及しているか」と述べ、オフィスソフトとしての機能、操作性などでの競合という状況が出てくれば、マイクロソフトが優位に立つことができ、有利であるとの見方を表明した。

「the 2007 Office system」の普及率の見通しとして同社は「2008年7月までに、概ね、企業で使われるパソコンの15%前後に搭載されるのでは。企業への導入には時間がかかる。(既存版と新版の)混在環境もある」(同)としている。「Office system」の企業への浸透を促進するにあたり、同社では、生産性/効率化の向上と、そのためのソリューションを重要な武器としていく意向だが、もうひとつ重点化しているのは「パートナーとの連携」だ。横井氏は、「Office SharePoint Server 2007」をプラットフォームとするビジネスでは、ハードベンダ、リセラだけでなく、SI事業者や、サービス事業者などのパートナーにも、システム構築、付加価値ソフト、ソリューションサービスなどの需要が創出され、利点がもたらされることを強調、「パートナーとのエコシステムをつくることができた製品が飛躍する」としている。「Office SharePoint Server 2007」の機能網羅性とともに、このようなエコシステムによる多様性を含めた総合力が鍵、と見ているようだ。