検索分野でゆるぎない地位を築いた米Google。電子メール、オンラインオフィスアプリケーションなど、サービスを拡充しているが、やはり最大のフォーカスは検索にある。その検索チームを率いている1人であるMarissa Mayer氏が、6月19日にフランス・パリで開催した「Google Press Day」にて、Google人気の秘密と今後の機能強化について語った。

Google検索を支える4要素

Marissa Mayer氏、Google検索のユーザーエクスペリエンスを統括する

GoogleでSearch Products & User ExperienceのVice Presidentを務めるMayer氏は、Googleに入社した最初の20人に入る人物で、最初に採用された女性エンジニアでもある。Mayer氏はまず、Googleが検索で実現しようとする4つのポイントを挙げた。それは、包括性、関連性、スピード、ユーザーエクスペリエンスだ。

包括性はインデックス数と言ってよいだろう。Web上の情報は秒刻みで増えており、Googleのインデックス数はこの8年間で1000倍以上に増えたという。情報量が多いほど結果も増え、ユーザーが求めている情報を提供できる確率も高くなる。Webで情報が増えることは検索ニーズの増加も意味し、ユーザーが検索を利用する頻度は増えている、とMayer氏。

だが、包括性はときとして、スピードとユーザーエクスペリエンスを犠牲にする。Mayer氏は「スピードこそGoogle人気の隠れた理由」と分析し、「光並みの速度でユーザーのブラウザに検索結果を表示すること」を常に目標にしているという。

Googleは"Best Results, First"を目指して、もっとも関連性のある検索結果をトップに、高速に表示するようにしている。関連性については、"I'm Feeling Lucky"ボタンのほか、スペル修正(「もしかして」)、代替クエリ表示、分類、サイトリンクなどの取り組みを紹介した。「Googleは常に、ユーザーがタイプした文字とユーザーが本当に意味したかったことのギャップを埋めることにフォーカスしている」とMayer氏。データが増えればパターン分析などによりキーワードの意味への理解が深まり、関連性が高くなるとMayer氏は説明する。

たとえば、チョコレートブランドにも用いられている地名「Cote d'Or(コート・ドール)」を入力した場合、オーストラリアではチョコレート会社へのリンクが最初に表示され、ベルギーではコート・ドール地域に関するページとチョコレートの両方が表示される。フランスでは、検索結果のトップに表示されるのはコート・ドール地域に関するページのみだ。

Mayer氏はGoogleのトップページを見せながらGoogleのフォーカスをまとめた。シンプルなGoogleのトップページはこの8年間ほとんど変わっていない。「われわれのフォーカスは検索にあり、検索はコア事業であることを示している。"まず検索、まずユーザー"というわれわれの姿勢を示すものでもある。また、速度、シンプルさのためでもある」とMayer氏。

8年間、ほとんどデザインが変わっていないGoogleのトップページ

パーソナライズ、ユニバーサル検索、翻訳 - Googleの取り組み

Mayer氏はこの日、検索におけるGoogleの最新の取り組みとして、パーソナライズ、翻訳、ユニバーサル検索の3つを紹介した。

パーソナライズは、Googleが今年5月に一新した「iGoogle」だ。ユーザーが自分の検索履歴を提供することで、より精度の高いカスタマイズされた検索機能を提供するもので、「ユーザーの検索パターンを見ながら検索結果を強化する」とMayer氏は説明する。

Googleは先日、ユーザーの検索データ保持期限を18ヶ月に短縮することを明らかにしているが、これは「妥当な妥協」とMayer氏。データが増えれば検索の精度は高くなるが、18ヶ月は「良い検索結果を出すのに十分といえる」と述べる。今後、希望するユーザーのみを対象に、データ保持期限を長くして良い検索サービスを提供することも考えているようだ。

翻訳では、新機能であるクロス言語翻訳を紹介した。これは、ユーザーが自分の言語で入力したキーワードで他の国の言葉のページを検索し、その検索結果を自分の言語で表示するもの。ユーザーは検索ボックスにキーワードを入力し、検索対象言語を選択するだけ。後はすべて自動化されている。このような自動翻訳機能により、膨大な情報にアクセスできるようになるだろう。特に、「自分の国の言語での情報が少ないユーザーには大きなメリットをもたらす」とMayer氏。Googleは自動翻訳に大きな投資を行っているというから、今後の翻訳のレベル改善に期待できそうだ。

アラビア語で入力し、英語のWebページを検索した画面。アラビア語は全世界のWebページの1%を占めるに過ぎない。

ユニバーサルサーチは、これまでWeb、ニュース、イメージとばらばらに提供してきた検索サービスを1つにまとめたもの。キーワードを入力すると、画像・動画、Webページ、ニュース、書籍などが同時に表示される。Web上の情報が多様化するトレンドに応じるもので、Googleはこのために、インフラ、アルゴリズムなどをはじめから開発しなおしたという。現在のユニバーサルサーチは深い検索を実現するための最初のステップとしており、今後より良い検索エクスペリエンスを提供するために改善していくという。

ユニバーサルサーチで「Steve Jobs」と入力すると、画像、ニュース、Webサイトとさまざまな検索結果が同じページに表示される。