賃貸で蛇口の水が止まらなくなった際にやるべきこと
賃貸住宅にお住いの方も、持ち家にお住いの方も自宅の蛇口の水が止まらなくなった際は、応急処置として止水栓・元栓を閉めて被害が拡大しないようにする必要があります。
応急処置が終わったら、自分で修理するなり、修理業者に連絡するなりすると思いますが、賃貸住宅にお住いの方はこの前にやるべきことがあります。
賃貸住宅は大家さんの所有物なので、基本的には大家さんの指示に従って行動しなくてはいけないのです。緊急時などの例外はありますが、ここでは水が止まらなくなった際に何をすべきかを順番に解説していきます。
1.応急処置をしよう
まずは応急処置として止水栓か元栓を閉めて水が出ないようにしましょう。
蛇口から出てくる水の量が少量だからと放置していると、水道代が高くなったり、部材が腐食したりと被害が大きくなる可能性があります。
また、集合住宅の場合は近隣の住民の部屋まで水漏れ被害が及ぶ可能性もあります。
さらに、詳しくは後述しますが、賃貸住宅に住んでいる方は善管注意義務があるため大切に家の管理をしなくてはいけません。トラブルを放置して被害が拡大した場合は善管注意義務を怠ったとして、自分の責任になってしまうので注意しましょう。
止水栓・元栓の場所についてですが、止水栓はキッチンや洗面台の収納庫内など蛇口に近い箇所にあります。止水栓はハンドルを回して締めるタイプや、マイナスドライバーで回して締めるタイプがあります。
止水栓を締めることで水漏れ対象の蛇口のみの水の流れを遮断することができます。水漏れ対象以外の蛇口は普段通りに使うことができるので、場所が分かる場合は止水栓で対応することをおすすめします。
もしも、止水栓の場所が分からないという方は元栓を締めて対応しましょう。
元栓は基本的に水道メーターの近くにありますが、住宅の種類によって場所が異なります。マンションの場合は玄関近くの鉄扉のなかにあることが多く、戸建住宅やアパートの場合は敷地内の地面に埋まっていることが多いです。地面のプラスチック製か、金属製の四角いフタに「水道メーター」など一目で分かるように書かれているはずです。
元栓を閉めると自宅の全ての水が出なくなります。集合住宅の場合は違う部屋の水を止めてしまわないように、フタの裏やメーター付近に書いてある部屋番号が自室と一致しているかを確認してから締めるようにしてください。
2.賃貸契約を確認しよう
応急処置が完了したら賃貸物件の契約書を確認してみてください。
賃貸物件を契約した際に水漏れなどの設備の故障に関する取り決めがされるので、連絡先などが詳しく書かれているはずです。
賃貸契約書に書かれている場合や、別途渡された書類に記載があると思うので探してみてください。もしも、契約書などの書類に対応方法が詳しく記載されているのを見つけることができたら、その指示に従って行動を進めていって構いません。
3.大家さん・管理会社に連絡しよう
賃貸契約書などの書類に水漏れ時の具体的な行動が明記されていない場合は、直接大家さんや管理会社に連絡して指示を仰ぎましょう。管理会社が物件を管理している場合は管理会社に、大家さんが管理している場合は大家さんに連絡すれば大丈夫です。
連絡を受けた大家さんや管理会社は状況を把握するために、いくつか質問をしてくると思うのでそれに回答しつつ、この後どうすればよいのかを確認しておきましょう。
よく聞かれる質問としては、「いつから水漏れが発生したのか」、「どこからの水漏れなのか」、「水漏れの原因は何か」、「今どのような状態なのか」などがあるのでスムーズに回答できるようにしておくとよいでしょう。
賃貸で蛇口の水が止まらなくなった際の注意点
賃貸住宅にお住いの方が水漏れのトラブルに直面した時にするべきことを解説してきましたが、やってはいけない注意点も抑えておく必要があります。
この点を抑えておかないと、本来自己負担なしで解決できた水漏れも、全部負担することになったり、一部を負担しなくてはいけなくなるかもしれません。
水が止まらないことに気が付いたらすぐに連絡しよう
蛇口から水が止まらなくなったことに気が付いたら、すぐに大家さんや管理会社に連絡しましょう。
水漏れなどの設備の不具合を発見したにも関わらず、対応を放置して被害を悪化させた場合は修理費用の一部を負担する責任が生じてしまいます。
なぜなら、賃貸物件の入居者には「善管注意義務」があるためです。「善管注意義務」とは、社会で一般的に求められる程度の注意をしなくてはならない義務のことを指しています。
賃貸契約の場合では、注意を怠ったことにより部屋が汚れたり壊れたりすると、部屋を借りている住人がこの義務を守っていないことになります。
蛇口からの水漏れの場合は、床や壁などの部材の腐食などが考えられます。
蛇口の水漏れ以外にも、グラスからこぼれた水を放置して床材がカビたりしても注意を怠ったとみなされるので、賃貸に住んでいて何かあった時はすぐに対処するように意識しておく必要があります。
自分で修理業者を手配しないようにしよう
蛇口の水が止まらなくなるとすぐに直したいと思うでしょうが、大家さんや管理会社に連絡する前に修理業者を手配しないようにしましょう。
もちろん、大家さんなどの指示があって修理業者を呼ぶことは何も問題がありません。何の指示もなく修理業者を手配してしまうと、修理費用の一部を負担することになるかもしれないため注意が必要です。
基本的には蛇口などの設備の修理の責任は大家さんにあるため、修理費用を負担する必要はありません。
しかし、大家さんに確認せずに選んだ修理業者が悪徳業者で、高額な修理費用を請求された場合は大家さんに全額負担してもらうことが難しくなります。
大家さんや管理会社も入居者が悪徳業者に依頼してしまわないように、かかりつけの修理業者があったり、自らが修理対応をしたりしています。水漏れの程度が軽度な場合は応急処置で対応しておき、大家さんなどに連絡してから行動するようにしておきましょう。
ただし、水道管の破裂などの緊急事態であったり、何度も管理会社へ連絡しているにもかかわらず修理対応してもらえなかったりした場合は、自分で修理手配を行う事が可能となるので覚えておいてください。
大家さん・管理会社が蛇口の修理をしてくれない場合はどうすればいい?
賃貸住宅で水漏れなどのトラブルが発生したら、大家さんや管理会社に対応をお任せすることが多いですが、いくら待っても修理してくれないこともあると思います。
修理の予定が定まらないと、自分の予定を入れにくいうえに、不便な生活を送ることになってしまいます。連絡しても修理対応が進まない場合や、生活できなくなるような緊急事態の場合は次項で紹介するような対応をしてみてください。
再度連絡して期日を設けよう
大家さんや管理会社に連絡して修理対応を依頼しても、中々修理が進まない場合は再度連絡をして、設備が使えないと生活に支障が出ることや、修理の緊急性を説明しましょう。
そのうえで、修理手配や修理予定日の連絡の期日を設定すると修理対応が進むかもしれません。管理会社に連絡する際は、営業時間内でなければ電話がつながりません。もしも24時間サポートサービスなどがある場合はそちらに連絡すると対応してくれるかもしれないので試してみてください。
また、お盆や年末年始のような長期休暇は修理業者も休みである可能性が高いので、修理対応が遅れてしまうかもしれないことは覚悟しておきましょう。
緊急の場合は自分で対処しよう
管理会社の営業時間外や、24時間のサポートサービスなどもない場合は、管理会社の営業時間になるまで待つしかありません。
しかし、水道管の破裂のような、放置すると生活できなくなるような緊急事態に発展した場合には自分で修理業者を手配して修理しましょう。
民法第607条では、入居者による設備の修繕について次のように定められています。
~e-Gov法令検索とは~
民法の引用に使用したe-Gov法令検索とは、デジタル庁が提供する日本の法令の検索・閲覧システムです。電子政府政策の一環としてサービスが提供されており、各行政機関がそれぞれのWebサイトで提供している行政情報を有効に活用することができます。
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。引用:e-Gov法令検索
改正民法によると、大家さんや管理会社に修繕を依頼したにも関わらず修理対応をしてくれない場合は、入居者が自分で修理しても構わないということになっています。
また、民法608条によって自分が負担した修理費用について次のように定められています。
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
引用: e-Gov法令検索
ただし、領収書がないと修理費用を請求できなくなるなどのトラブルになる可能性もあります。修理業者からは必ず領収書を受け取り、なくさないように保管しておいてください。
蛇口の修理料金は誰が負担する?
蛇口の水が止まらなくなったら、修理(場合によっては交換)するしか直す方法はありません。そうなってくると修理費用は誰が負担するのかが気になると思います。
蛇口トラブルは急に発生するものなので、思いもよらぬ出費はできれば避けたいところですよね。次項より、誰が修理料金を負担するかについて解説していきます。
蛇口の修理料金は基本的には大家さんが負担する
賃貸物件で蛇口のような住宅の設備にトラブルがあった場合、その修理料金は基本的に大家さんが支払うことになっています。
民法606条でも、大家さんの修繕義務について次のように定められています。
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。引用:e-Gov法令検索
賃貸人は大家さんのことを示しており、大家さんには賃貸物件を修理する義務があることが記されています。
ただし、これには例外もあり自己負担になるパターンもあるので注意してください。
蛇口の修理料金が自己負担になる4パターン
蛇口の修理料金が自己負担になるパターンは次の4つがあります。
- 入居者の故意・過失によるトラブルである場合
- 入居者が設置したものに不具合があった場合
- 特約がある場合
- 修理に費用がかかりすぎる場合
それぞれのパターンについて詳しく解説していきます。
1.入居者の故意・過失によるトラブルである場合
入居者の故意・過失で水漏れが発生した場合は、入居者が修理費用を負担することになります。わざと壊すという方はいないと思いますが、本来の用途と違った使い方をしたところ水漏れがするようになることはあるかもしれません。
借りている物件なので本来の用途とは違った使い方をせずに、大切に使うことを日々心掛けておきましょう。
2.入居者が設置したものに不具合があった場合
入居者自身が設置したものに不具合が生じたことで、水漏れが発生した場合も大家さんは責任を負う必要はありません。
例えば、入居後に大家さんに許可を取って蛇口を交換したとします。もしもこの交換した蛇口に不具合があったことが原因で水漏れが発生しても自己負担で修理する必要があります。
許可をもらって蛇口を交換する際も、水漏れトラブルが発生したら自己負担であることを忘れないようにしておきましょう。
3.特約がある場合
賃貸住宅を契約する際に交わす契約書内に「修繕義務免除特約」という特約が記載されていることがあります。
修繕義務免除特約とは、故障して修繕が必要になったとしても大家さんに修繕義務が発生しないというルールのことです。
蛇口関係に限らずに言うと、以下のような消耗品の交換などがこの特約として記載されていることが多いです。
- 給水栓や排水栓の取替え
- 電球や蛍光灯、ヒューズの交換
- 障子紙やふすまの張替え
- 畳の取替えや裏返し
この修繕義務免除特約に蛇口からの水漏れに関して記載されている場合、トラブルの内容によっては大家さんに修繕義務は発生しなくなります。
4.修理に費用がかかりすぎる場合
蛇口の水漏れの修理ではほとんどないと思いますが、修理に費用がかかりすぎる場合も大家さんの修繕義務が免除されることがあります。物件の築年数が古く、修繕のためには大規模な工事が必要となるような場合が当てはまります。
過去には、賃料に対して修繕にかかる費用が高く、採算が取れない場合は大家さんの修繕義務はなくなるといった判例が出ています。築年数が古い賃貸物件で、家賃が安い場合などには修繕してもらえない可能性があるので覚えておきましょう。
しかし、これは築年数の古い物件の大規模工事に対して、採算が取れないときに適用される内容なので、蛇口の水漏れの修理程度であれば修理してもらえるはずです。
自分で蛇口の吐水口からの水漏れを修理する方法
賃貸契約の特約などにより、自己負担で水漏れを修理する必要がある方のために、自分で蛇口を修理する方法を紹介しておきます。
ちゃんと修理することができれば業者に依頼するよりも費用を抑えることができるので、自信がある方はやってみてください。
ハンドル式水栓の場合
ハンドル式水栓は、キッチンや洗面台、お風呂などで使われることが多い蛇口で、ハンドルを回して水量を調整する蛇口です。
ハンドルが一つしかない蛇口や、ハンドルが二つで水温を調整できる蛇口がありますが、修理方法は同じなのでこちらを参考にしてください。
水漏れの原因
ハンドル式水栓から水が止まらなくなった場合、原因はケレップ(水栓コマ)という部品にあります。
ケレップという部品が止水時に水をせき止める役割をしているのですが、これが損傷すると水をせき止めることができずに吐水口から漏れ出るようになってしまいます。よって、ケレップを交換することで吐水口からの水漏れが解消します。
修理方法
ハンドル式水栓のケレップの交換方法は以下の通りです。
- ハンドルビスを取り外す(固い場合はモンキーレンチを使用する)
- (ハンドルがネジで固定されている場合)プラスドライバーでネジを取り外す
- ハンドルを取り外す
- カバーナットをモンキーレンチで外す
- 三角パッキン、ワッシャー、スピンドルを取り外す
- コマパッキンを新品のものと交換する
- 逆の手順で元に戻して水漏れがしないことを確認したら完成(ハンドル部から水漏れする場合は、カバーナットを少し強く締める→水漏れを確認する 水漏れがしなくなるまでを繰り返す)
レバー式水栓の場合
レバー式水栓は、キッチンや洗面台で使われることが多い蛇口で、レバーを上下に動かして水量を調整する蛇口です。
レバー式水栓の中には、レバーを左右に動かして水温を調整することができるものもありますが、同じ修理方法で水漏れが解消されます。
水漏れの原因
レバー式水栓から水が止まらなくなった場合、原因はバルブカートリッジという部品にあります。バルブカートリッジは水をせき止める役割をしており、レバーの上下に連動して通水路の開閉を行っています。
よって、吐水口から水が止まらなくなった場合はバルブカートリッジを交換することで水漏れが解消します。
修理方法
レバー式水栓のバルブカートリッジの交換方法は以下の通りです。
- レバーハンドルのネジをマイナスドライバーで取り外す
- レバーハンドルを引き抜く
- 外カバーを台座を軸に反時計回りに回して取り外す(固い場合はモンキーレンチを使用する)
- 古いカートリッジを取り外して、新しいカートリッジを取り付ける
- 逆の手順で元に戻して水漏れがしないことを確認したら完成
関連記事:シングルレバー水栓の水が止まらない!自分で蛇口・水道を修理する方法
サーモスタット式水栓の場合
サーモスタット式水栓は浴室での使用が主流になってきている蛇口です。
蛇口の温調ハンドルで温度の指定を行い、水量の調整や、シャワーとカランの切り替えは切替ハンドルで行います。このように温度設定や水量などの調整が容易にできるため、浴室での利用が増えてきています。
水漏れの原因
サーモスタット式水栓から水が止まらなくなった場合、原因は開閉バルブという部品にあります。開閉バルブはサーモスタット式水栓の水の出し止めを管理するパーツで、シャワーとカランの切り替えを行うことができます。
開閉バルブが故障すると水を止めることができなくなるので、シャワーや蛇口を閉めているにも関わらず水が出続けてしまいます。
修理方法
サーモスタット式水栓の開閉バルブの交換方法は以下の通りです。
- マイナスドライバーを用いて吐水・止水、スパウト・シャワーを切り替える右側のハンドルを取り外す
- インデックスというスパウト・シャワーの切替表示が付いている部品を取り外す
- ナットを手で回して取り外す(固い場合はプライヤーなどを使う)
- スペーサーを引き抜く
- 開閉バルブを取り外す(固着している場合はプライヤーで引き抜く)
- 新しい開閉バルブとスペーサーをくっつける
- くっつけたバルブとスペーサーを本体に差し込む
- 逆の手順でナットやインデックス、ハンドルを取り付ける
- 水漏れがしないことを確認して完成
まとめ
本記事では、賃貸住宅で蛇口の水が止まらなくなった時にすべきことを解説してきました。
基本的には大家さんや管理会社の指示の通りに行動していけば自己負担なしで修理してもらえます。しかし、大家さんへの連絡なしに修理業者を手配したり、水漏れを放置して被害を大きくしてしまったりすると自己負担になる可能性が出てきます。
このようなことにならないように、蛇口を含め住宅の設備を丁寧に使うことを心掛け、何かあった場合は連絡することを徹底しておきましょう。
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※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
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