前回は、最新版のバージョンとなるJunoの新機能について説明した。今回は、OpenStackのディストリビューションを提供しているベンダーのツールの特徴と合わせて紹介する
前回のJunoの紹介においても述べたが、OpenStackは各バージョンでさまざまな新機能が追加される。利用するにあたっては、「開発スピードの速さゆえにサポート期間が短い」「モジュール構成が複雑ゆえに設計・構築が難解である」といった課題がある。
こうした課題を解決するため、各ベンダーが独自のディストリビューションを提供している。以下、主要なディストリビューションを紹介しよう。
RedHat OpenStack Platform
「RedHat OpenStack Platform(RHEL-OSP)」はレッドハットから提供されているOpenStackパッケージとなり、本家OpenStackとほぼ同等のソフトウェアを提供している点が特徴となる。
また、独自のインストーラーを提供しており、マルチノード構成、高可用性構成といった商用向けの環境をGUIを用いて構築できる点は運用の負荷を軽減する意味でも魅力的と言える。
Ubuntu OpenStack
オープンソースLinuxディストリビューションのUbuntuをサポートしているCanonicalは「Canonical Distribution of Ubuntu OpenStack」を提供している。OpenStackはUbuntuベースに開発されているため、Ubuntu OpenStackは常に最新のOpenStackをサポートしている。
インストール簡素化の方法として、Jujuと呼ばれるオーケストレーション・ツールとMAAS(Metal As A Service)と呼ばれるハードウェアのプロビジョニンング・ツールを提供している。また、OpenStack Interop Lab (OIL)を通じた相互接続性の確保に取り組んでおり、各社のハードウェアや仮想化技術を組み合わせた構成をテストして、従来よりもユーザーがOpenStack安心して使える努力をしている。
HP Helion OpenStack
ヒューレット・パッカードは、同社のクラウドコンピューティング製品とサービスのブランド「Helion」を冠した「HP HelionOpenStack」を提供している。Helion OpenStackではOpenStackのプロジェクトの1つにもなっているTripleOをベースとしたインストール手法を採用しており、実サービス用OpenStack環境の構築を簡素化・自動化することができる。
また、同社はプライベートクラウド、マネージドクラウド、パブリッククラウドすべてのクラウド環境において基盤をOpenStackに統一しており、各サービスで得た運用ノウハウが製品に反映されている点は大きなメリットと言える。
以下、2015年2月2日時点の各ディストリビューションの状況となる。
ディストリビューション | 製品名 | 特徴 | 提供されるOpenStackリリース(2015年1月時点) |
---|---|---|---|
レッドハット | RedHat OpenStack Platform | RHELベース、独自インストーラー | Havana、Icehouse |
Canonical | Ubuntu OpenStack | Ubuntuベース、独自インストーラー | Icehouse、Juno |
ヒューレット・パッカード | Helion OpenStack | HP独自Linuxベース、TripleOベースのインストーラー | Icehouse、Juno (Community版で採用。Commercial版でも一部機能先行採用) |
今回は、ベンダー各社から提供されているOpenStackディストリビューションを簡単に紹介した。次回からは、OpenStack全体のアーキテクチャから、これまでキーワードとして出てきたNova、Glanceといった各コンポーネントを取り上げる。
千葉 豪
ネットワンシステムズ株式会社 経営企画本部 第2応用技術部 クラウドソフトウェアチーム
OpenStackおよびCloudStackなどの主にオープンソースをベースとしたクラウドソフトウェアを担当。
Apache Software Foundationにおいてコミッタ兼PMC(Project Management Committee)としても活動している。