英Opensignalが公開した2026年10月の通信品質調査レポートで、au(KDDI)が引き続き最も多くの賞を獲得。その結果を得てKDDIは「国内5連覇」をアピールしているが、日本の通信品質は総じて高い水準にあり、競合との差は僅差だという。その一方で、総務省の有識者会議では、Opensignalの調査を基に日本の通信品質が国際的に低いとの見方が出ているのだが、その矛盾が生じる理由は「5G」にある。

KDDIが圧勝も差は小さい、日本の通信品質に高評価

携帯電話の通信品質に対する関心が高まって以降、注目されている英Opensignalのモバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート。毎年4月と10月の2回に公開されており、2026年10月28日にも新しいレポートが公開されているのだが、その結果を見ると今回もKDDIの圧勝という結果に至ったようだ。

実際、KDDIは全18項目の指標のうち10項目で単独の賞を獲得。携帯各社が重視している、「信頼性」「一貫した品質」の2つでも賞を獲得し、単独での賞獲得が4つのNTTドコモ、2つのソフトバンクと楽天モバイルを大きく引き離している。

  • Opensignalが公表した2026年10月のモバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート。今回もau(KDDI)が10の単独賞を獲得し、トップの評価を得ている(出所:Opensignal)

    Opensignalが公表した2026年10月のモバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート。今回もau(KDDI)が10の単独賞を獲得し、トップの評価を得ている(出所:Opensignal)

しかもKDDIが、同レポートで国内最多の賞を獲得しているのは、2024年10月から5期連続になるとのこと。KDDIはここ最近、通信品質の高さを積極的にアピールして顧客獲得につなげる戦略を取っているだけに、高い評価を維持できたことが同社の戦略上重要なポイントとなることは間違いない。

  • レポート発表前日の2026年27日に実施された「KDDI SUMMIT 2026」の基調講演でも、KDDIが5期連続トップの評価を得たことを積極的にアピールしていた

    レポート発表前日の2026年27日に実施された「KDDI SUMMIT 2026」の基調講演でも、KDDIが5期連続トップの評価を得たことを積極的にアピールしていた

ただOpensignal側の説明によると、KDDIが最も多くの賞を獲得しているからといって、競合他社と比べ圧倒的な差がある訳ではないようだ。例えば、ここ数年来KDDIと同様にネットワークの評価を高めているソフトバンクは、単独で獲得した賞こそ2つに留まるものの、多くの項目でKDDIと僅差での2位になっているという。

またOpensignalが世界各国の携帯電話会社を対象に評価している「グローバル・モバイル・ネットワーク・エクスペリエンス・アワード」では、KDDIとソフトバンクが共に、多くの指標で高い評価を得ているとのこと。世界的に見れば国内の携帯電話会社全体の品質が高い、というのが同社の見方となるようだ。

日本の通信品質が「低い」とする総務省、その原因は

一方、Opensignalのレポートが公表された2026年10月28日には、総務省が「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」の第10回会合を実施。これまで携帯電話会社に課してきたスマートフォンの値引き規制などの効果検証や、規制自体のあり方に関する指標に関する議論がなされていた。

この議論で興味深かったのが、「重点的に着目すべき指標」の1つとして通信品質を挙げていたこと。そして通信品質を評価する第三者機関の調査の1つに、Opensignalによる通信品質の評価が含まれており、総務省の説明では「5G関連の複数の指標で、諸外国(米、英、仏、独、韓)と比較すると、おおむね中位から低位とされている」とされている。

ちなみにその評価にはもう1つ、ネットワークの速度調査サービス「Speedtest by Ookla」を提供する米Ooklaの評価も含まれており、こちらを見ると日本のダウンロード通信速度の評価は、世界104ヵ国65位と半数を下回っている上、先に挙げられた5ヵ国のいずれと比べても低いことが示されている。

  • 総務省「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」第10回会合より。OpensignalやOoklaの評価から、日本の通信品質が世界的に「低い」と評価していることが分かる

    総務省「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」第10回会合より。OpensignalやOoklaの評価から、日本の通信品質が世界的に「低い」と評価していることが分かる

一連の評価から、総務省は日本の通信品質が世界的に低いと評価していることが分かるが、これは先のOpensignalの評価とは真逆といえるものだ。なぜそのような評価が出ているのかといえば、そこには現在の主要な通信規格「4G」と「5G」のギャップが大きく影響している。

実際、総務省が提示したOpensignalの評価では、4Gの通信品質は日本が上位である一方、5Gでは一転して中・下位であることが示されている。またOpensignalの調査でも、日本では通信品質向上に貢献する、5Gの本領を発揮できるスタンドアローン(SA)運用の5Gの利用がまだ本格化していないことが指摘されている。

  • Opensignalの調査でも、日本で5G SAのネットワークの通信品質が高い一方、その利用は数パーセント程度でまだ本格化していない様子が示された

    Opensignalの調査でも、日本で5G SAのネットワークの通信品質が高い一方、その利用は数パーセント程度でまだ本格化していない様子が示された

そして先の総務省会議では、有識者からその原因について、通信料金の大幅な低廉化が進んだことで、携帯電話会社が5Gの設備投資に思うように資金を回せなくなったことや、通信料金の引き下げ競争やポイント還元競争などの加速により、通信品質向上にコストを避けなくなっている可能性があるので調査が必要では、との指摘が相次いでなされていた。

ただ、その通信料金を安くすることにこだわり続けたのは総務省、そしてかつて総務省に大きな影響力を持っていた菅義偉前首相であり、5Gの投資が本格化する2020年に菅義偉氏が首相に就任したことで、国策として携帯電話料金の大幅な引き下げが進められた経緯がある。それゆえ日本の5G通信品質を低下させたのは、通信料金を安くすることに固執し続けた日本政府と言って過言ではない。

料金の安さにこだわり続けた結果、5Gでの投資意欲減衰による通信品質低下と産業の衰退を招いたことは間違いなく、国内携帯電話会社の5G投資意欲が減衰したことで、日本電気(NEC)が携帯電話事業を大幅に縮小したことがそのことを象徴している。既に「手遅れ」といっても過言ではない状況にはあるのだが、それでももし日本のモバイル通信産業を再興させたいというのであれば、政府、ひいては総務省がこれまでの競争政策を猛省し、不毛な規制を全廃するくらいの解体的出直しが必要だと筆者は考える。