• デジタル時代の目の悩みと、実は進化している遠近両用コンタクト

この夏、Zoffなどを展開し、メガネスーパーを傘下に収めるインターメスティックグループが、神奈川県厚木市、滋賀県栗東市、埼玉県和光市のメガネスーパー3店舗で「遠近両用コンタクト無料体験会」を開催した。延べ74名が参加、現在の見え方やコンタクトレンズの使用状況、スマホやパソコンの利用頻度などをスタッフに相談し、1DAY、2WEEKのソフト、そしてハードタイプを含む遠近両用コンタクトを実際に装用し、日常生活に近い場面での見え方を確認したという。

体験前のアンケートでは、約8割が手元のみえづらさを感じつつも、約6割が誰にも相談できないでいた。病気でもないのに眼科医を受診することは敷居が高いということなのだろう。メガネを買いに行ってコンタクトレンズの選択肢があることに気がつくケースもあるらしい。でも、過去の知識がチャレンジを抑制し、メガネを購入してしまい、コンタクトレンズの導入には至らない。メガネスーパーとしても悩みの相談相手としての店舗の必要性を感じたとのことだ。

体験会で紹介された遠近両用コンタクトレンズについては、各社が参入しているが、その認知度はかなり限定的で2割に満たなかった。こうして加齢などによる目の変化に対する正しい選択肢のひとつがほとんど知られていないことがわかった。

  • スマホの画面が見難くて困っている人であっても、「遠近両用コンタクトレンズ」という選択肢は意外と知られていないのだとか

    スマホの画面が見難くて困っている人であっても、「遠近両用コンタクトレンズ」という選択肢は意外と知られていないのだとか

だが、体験後のアンケートでは、購入や継続利用に積極的で「すぐに購入したい」、「前向きに検討したい」という回答が9割前後となるなど好印象を得られている。しかも遠近両用コンタクトレンズを知らなかった人ほど印象が変わったこともわかった。

遠近両用コンタクトレンズは一枚のレンズに遠方用と近方用を含む複数の度数を配置し、遠くと近く、さらにはその中間距離の見え方を支えるコンタクトレンズだ。現代主流の同時視型コンタクトはメガネのように上下で度数を分けない。個人的には遠近両用のメガネを所有していたが、視線の上下で被写体との距離に対応しなければならなかったため、それがわずらわしく、あまり、使うことはなく過ごしてきた。このメガネは医者で処方してもらい、一般のメガネ店であつらえたものだ。

ある日、そのわずらわしさを解消しようと、思いつきで一度にメガネを2つ作った。50センチメガネと1メートルメガネだ。50センチは出先で使うノートパソコンのディスプレイまでの距離、1メートルは自宅の仕事場で使う大画面ディスプレイまでの距離だ。外出には50センチメガネを携行し、1メートルメガネは書斎のデスクに置きっぱなしだ。そしてその後、スマホや紙書類の至近距離をカバーするために3つめのもっと近い距離に対応できるメガネを作った。こうして3つの単焦点メガネをとっかえひっかえしながら日常の暮らしに対応させてきた。外出時にスマホ用メガネは持ち出さないが、それはスマホの文字表示で対応してきた。だが、大きな文字で表示されることを想定していないサイトも少なくなくて困ることがある。

ハードコンタクトレンズは、学校時代に短い時間経験したことがある。ところが購入後一か月たたないうちにターミナル駅のエスカレーターで瞬きをしたとたんに外れて落としてしまい、紛失してしまった。いちおう駅ビルのオフィスに届けておいたが、次の定期清掃のときに探してみると言われた。実際、本当に探してくれたようで、一か月後にハガキで見つからなかった旨の連絡が届いた。本当に探してくれるとは思わなかったので驚いた記憶がある。

以来、コンタクトレンズとは縁のない暮らしを続けてきた。ずっとメガネを使っていたが、コロナでマスクをつけるようになって、メガネが曇るのがわずらわしくてメガネをやめた。それでもなんとかなるように感じたのは、時期的に視力が変化していたかららしい。

そのまま外出時に常時メガネをかけるのはやめてしまったのだが、それでも手元の作業では加齢に勝てない。スマホはどんどん見づらくなるし、遠中近をひとつのメガネで対応するのは難しい。だったら、と思って複数メガネ体制に入ったわけだ。今回、遠近両用コンタクトレンズを体験させてもらい、手元の3つの単焦点メガネの守備範囲をおおむねカバーできることがわかった。実際、体験後、装着したままで地下鉄、私鉄を乗り継いで自宅に戻ったが、困ることはなかった。メガネでは、中近はよくても遠くがぼけてしまって歩きにくい。

遠近両用コンタクトレンズは1960~70年代の黎明期から実用化が試みられてきたが、当初は瞬きのたびにレンズが動いて視界が安定しにくく、装用感の課題もあり広く一般に普及するまでには至らなかった。当時は上下で度数を分ける交代視型だったが、その後、レンズの中心から外側に向かって同心円状に度数を変え、遠くと近くの光を同時に網膜に届け、脳が見たい方に自然とピントを合わせ不要な像を無視する同時視型の光学設計が1980年代に登場、日本国内でも90年代初頭にかけて処方が本格化した。そして、90年代後半にはソフトレンズが登場し、老眼を機にコンタクトをあきらめてメガネに移行していた層が継続してコンタクトレンズを使えるようになった。

2000年代の後半から2010年代にかけて、1DAYタイプの遠近両用使い捨てレンズが登場して拡充している。つまり、技術そのものは1960~80年代からあったが、一般ユーザーが快適に使える道具として認知されるようになったのは90年代末~2000年代以降だ。パソコンやスマートフォンの急速な普及によって手元スマホ、中間距離、遠景と、視線移動と焦点距離の要求が年々シビアになってきたデジタル社会の生活環境の変化と、レンズの多焦点(マルチフォーカル)技術の進化は無関係ではあるまい。今どきの言い方をすれば、マルチカメラのコンピュテーショナル・フォトグラフィに近い技術だともいえる。

むしろ、登場から実用域に入り、普及、拡大に至るまでに時間がかかりすぎているといってもいい。装着感は、かつてのゴロゴロ感が強いハードコンタクトレンズとは別物だ。ただ、今回の体験では装着に慣れていないため、脱着には時間がかかった。レンズをお椀型にして指先に乗せる、外すときには指でつまむといったコツの修得が必要だ。でも、これは時間が解決してくれそうだ。かつてのコンタクトレンズユーザーなら、すぐに慣れるにちがいない。

メガネスーパー側でもこの体験会で、存在が認知されていないことがよくわかったという。きっと体験プログラムを拡大してくれるだろう。今後は、広く、そして気軽に試して、技術に支えられた方法で、豊かな視野を末永くキープしたいものだ。