スマートオーディオメーカーSonosの新世代オーディオOS「Sonos 27」が稼働し始めた。従来S2と呼ばれてきた世代の製品との互換性を基本的に保ちながら、製品やサービスをひとつのシステムとして連携させる新しい仕組みだ。それらをフル活用するためにはヘッドフォンのSonos Ace Ultra、サウンドバーのSonos Beam Ultraなどの新製品が必要になる。
同社では同一のWi-Fi、あるいは有線LAN内にある1台以上のSonos製品の集合体を「システム」と呼んでいる。一般的なワイヤレススピーカーは、スマートフォンなどの再生デバイスとBluetooth接続して音楽などを再生する。一方、Sonos製品のほとんどはネットワークに対応している。スマートフォンなどからネットワーク上のスピーカーを検出し、任意のスピーカーを指定して音楽を楽しめる。Bluetoothでは複数の再生デバイスがあれば、それぞれを個別にペアリングする必要があるが、Sonosのシステムであればその必要がない。そしてBluetooth接続に比べ、ロスレスを含む高品質なストリーム再生にも余裕を持って対応できる。システム内のスピーカーが、どの部屋で何をどのくらいの音量で鳴らしているのかもSonos 27アプリを使えば一目でわかる。
ヘッドフォンも例外ではない。Sonos 27では、これまでBluetoothで接続して音楽を楽しんできたヘッドフォンを、スピーカーと同様にWi-Fi経由でも使えるようにした。従来製品のSonos Aceはテレビのサウンドバーと再生をスワップするときだけ、Wi-Fi Directで1対1接続するようになっていたが、通常は基本的にBluetoothでの伝送であり、Sonosのいうところのシステムの一員ではなかったのだ。
新製品のヘッドフォンSonos Ace Ultraは、Sonos 27にフル対応し、ヘッドフォンをスピーカーと同じ次元で扱うことができるようになった。これまでと同様にサウンドバーとコンテンツをスワップするTV Audio SwapではWi-Fi Directを使い、それに加えて、Sonosシステムで再生中のオーディオをヘッドフォンとの間で受け渡すことができるHeadphone Linkingが新規に実装された。新ヘッドフォンはこのふたつの連携機能を自動的に切り替える。
なぜ、こうしたハイブリッド仕様にする必要があったのか。それは、TVコンテンツが映像を伴い、その音声が映像とずれてリップシンクができなくなってしまうことを回避するためだ。
映像を伴わない音楽再生用のスピーカーはWi-Fiネットワークを使い、高品質なロスレスストリームを楽しめるようになっている。家の中のどこにいても、スピーカーの前でヘッドフォンのコンテンツキーを長押しすると、そのスピーカーとコンタクトのための短いダイレクト通信が行われ、再生中のコンテンツがスピーカーとヘッドフォン間を移動する。人間はその切り替えについていっさい考える必要はない。操作はあくまでもワンボタンで、リアルタイム性が命のホームシアター音声はデバイス同士の直通、家の中をうろうろしながら再生デバイスを切り替える場合は家庭内LANを経由するように、システムがスマートに通信経路を使い分けているわけだ。
興味深いのは、Sonos 27が、MCPに対応したことだ。これはAIをオープンに活用するシステムとしてのアプローチで、ユーザーが自分の好きなAIを使ってシステムを操作できるようにするというものだ。オーディオ機器の操作体系をLUI、つまり言語ユーザーインターフェースに解放するチャレンジだ。MCPはModel Context Protocolの頭文字で、Anthropicが提唱し、広く採用が進んでいるオープン規格だ。この対応により、再生や選曲のコントロール、マルチルームでのスピーカーのグループ化などのシステム制御が行える。
ClaudeやChatGPTとのチャットで、1970年代のウェストコーストサウンドの名盤を何枚か紹介してもらったとする。それらの楽曲を聴きたい場合は、配信アプリにタイトルやアーティスト名等をコピペして再生しなければならないが、「リビングのスピーカーで聴かせて」と頼めば、AIが裏側でMCPを使って再生を指示してくれる。この機能はまだアーリーアクセスの提供で、ヘッドフォンは未対応だが、今後の展開がどうなっていくか興味はつきない。実際、ClaudeにSonosコネクタを組み込んでSonosのクラウドに接続してApple Musicサービスと自分のアカウント権限で通信することで、さまざまな再生コントロール、そして、選曲などを指示することができた。
目の前にあるスピーカーで音楽を再生するのにBluetoothでペアリングするというのは確かにわかりやすい。だが、そこにあるのは1対1のやりとりにすぎない。デバイス同士が協調し、よりおもしろい展開を期待するには限界もある。BluetoothはBluetoothでAuracastなどの将来的な展開もあり、今後の展開がどうなっていくか楽しみだ。家庭内におけるオーディオ再生も、CDやLPなどの物理的なメディアから、ストリーム配信にすっかり入れ替わってしまった今、いろんなチャレンジがあっていい。こうした時代に立ち会えることを本当にうれしく思う。


