ジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』製作の舞台裏を描いたリチャード・リンクレイター監督の最新作『ヌーヴェルヴァーグ』(2026年7月10日公開 配給:AMG エンタテインメント)の本編映像と新場面写真1点、ジーン・セバーグ役を務めるゾーイ・ドゥイッチのインタビューが公開となった。
『ヌーヴェルヴァーグ』は、1959年、ジャン=リュック・ゴダールと彼の長編デビュー作にして、ヌーヴェルヴァーグ=「新しい波」と呼ばれる当時の革新的な映画運動の記念碑的作品となった『勝手にしやがれ』製作の舞台裏を、仏映画界を代表する映画作家たちとの活気ある交流とともに描いた青春物語。
学生の頃、ヌーヴェルヴァーグに夢中になり、その自由な撮り方と姿勢に大きな影響を受け、この企画を10年以上前から温めてきたと語るリンクレイターは、今回、『勝手にしやがれ』(1960)のスタイルに倣ったアカデミー比率(1:1.37)の白黒の作品に仕上げた。全編ほぼフランス語というのも初挑戦となる。配役は、監督作『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(2016)に出演したゾーイ・ドゥイッチ以外、ほぼ無名のキャスティングで作り上げている。リンクレイターは「観客に"1959年の若者たちと一緒に映画を作っている感覚"を味わわせるためには既視感のないキャスティングが不可欠だった」と語り、本作の主人公となるジャン=リュック・ゴダール役には写真家やモデルとして活動していたギヨーム・マルベックを迎えた。フランス映画界を代表する俳優ジャン=ポール・ベルモンドをオーブリー・デュラン、ヌーヴェルヴァーグを支えた撮影監督ラウル・クタールをマチュー・パンシナほか、フランソワ・トリュフォー、クロード・シャブロル、シュザンヌ・シフマン、ジャック・リヴェット、エリック・ロメールなど劇中に数多く登場する映画人たちもほぼ無名の俳優陣が務めている。
この度、本編映像と新場面写真、ゾーイ・ドゥイッチのインタビューが公開となった。ドゥイッチは、父が映画監督のハワード・ドゥイッチ、母は女優のリー・トンプソンという映画一家に生まれたアメリカ人俳優。彼女とリンクレイターの出会いは『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』だった。その時から、本作の企画は始まっていたという。「実は監督とは、約11年前に『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』でご一緒した頃から、この作品とジーン・セバーグ役について話していました。監督は本当に辛抱強い人で、ひとつの企画を長い時間をかけて育てていくタイプなんです」と笑顔で明かした。
ジーン・セバーグを演じるにあたりどのようなアプローチをしたかの問いには、「ジーン・セバーグについて知り、彼女という人物を探求し、そして好きになっていく過程は本当に楽しい時間でした」と振り返る。「役作りでは、『勝手にしやがれ』の直前に出演していた作品を重点的に観ました。特に『悲しみよこんにちは』(1958)と『聖女ジャンヌ・ダーク』(1957) は、彼女を理解する上でとても大切な作品でした」と説明し、「彼女がパリの自宅を案内するインタビュー映像も見つけたのですが、それが彼女の話し方やアクセントを掴む大きな助けになりました」と語る。
一方で苦労したことについても、「ジーンはアイオワ州マーシャルタウン出身ですが、少し気取ったような独特の話し方をしていて、そのニュアンスを表現したいと思いました。一番苦労したのはフランス語です。でも、この作品のプロデューサーであるミシェルが、本当に大きな力になってくれました。彼女はプロデューサーという枠に収まらない、とても特別な存在なんです。私のフランス語の先生として発音を指導してくれただけでなく、効果音や ADR(アフレコ)、背景音の制作、翻訳まで担当していて、本当に何でもこなしていました。仕事の大小に関係なく作品のために尽くす姿勢には、心から感謝しています。皆さんにも、彼女がどれほど素晴らしい人なのか知ってほしいですね」と賛辞を送った。
実在の俳優を演じるという、いわば「演技の中の演技」に挑戦したことについて訊かれると、「ベルモンド役のオーブリーと私はオリジナルの『勝手にしやがれ』を何度も見返して、『ここで5歩歩く』『このタイミングで手を動かす』と、一つひとつの動きを細かく数えながら振り付けのように作り上げていきました。その上で、「ここから何秒間、私たちが考えた会話を入れられるだろう?」と考えながら、実際の出来事と私たちなりの解釈を重ね合わせていったんです」と述懐し、「彼らが実際に残したものに忠実でありながら、自分たちの想像力も加える。そのバランスを探る作業はとても面白かったですね。中でも一番難しかったのは、ラストシーンの手の動きでした。ジーン・セバーグ本人の仕草を感じさせながら、その瞬間に彼女がゴダールとの間でどんな思いを抱えていたのかも表現しなければならなかったので、その両方を成立させるのは本当に大変でした」と語った。
最後に「監督をはじめ、この作品に関わった全員が成し遂げたことは、本当に素晴らしいと思います。私にとって最高の賛辞だと感じたのは、監督と9度もタッグを組んでいるイーサン・ホークの言葉でした。彼は作品を観終えたあと、監督に向かって『本当にこれを君が撮ったのか!? 君のことはよく知っているけれど、本当に君が作った作品なのか?』と驚いていたそうなんです。それくらい、この作品は監督がこれまで手掛けてきたどの作品とも全く違うものになっています。私自身も俳優として、自分が出演している作品を観るときは、できるだけ自意識を脇に置いて、一人の観客として作品を見るようにしています。でも、この映画に関しては、本当にただただ圧倒されました」と驚きを隠さず、自身も完成した作品に魅了されたことを明かした。ジーン・セバーグへの深いリスペクトと徹底した役作り、そして映画史に残る傑作『勝手にしやがれ』を新たな視点で描き出した本作への確かな手応えを語り、インタビューを締めくくった。
あわせて公開となった本編映像が映し出すのは、ゾーイ・ドゥイッチ演じるジーン・セバーグの登場シーン。当時すでにハリウッドでは活躍していた若手女優ジーン・セバーグが、弁護士の夫フランソワ・モレイユ(パオロ・ルカ=ノエ)とともにフランスのパーティー会場に現れるシーンが切り取られている。ジーン・セバーグの登場を囲むマスコミからフランスの印象を聞かれると、「お金にカーレースにダイヤモンド」とフランス語で返して見せる。横から夫に何かを囁かれると「今のは冗談」と言い、「夫と一緒の穏やかで創造的な日々。友達もいる。ありがとう」と答える。セバーグの瑞々しさと茶目っ気が感じられるシーンとなっている。このあと、ゴダールから自身の初長編映画のヒロイン役をオファーされ、やがてそれをきっかけに、セバーグは映画史に名を刻む女優へと駆け上っていくことになる。
■ストーリー
フランソワ・トリュフォーの長編デビュー作『大人は判ってくれない』が、カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した1959年。その夏、批評誌『カイエ・デュ・シネマ』で執筆活動をしていたジャン=リュック・ゴダールは、ジャン=ポール・ベルモンドとアメリカの若手女優ジーン・セバーグを主演に起用した念願の初長編映画『勝手にしやがれ』に着手する。ところがゲリラ撮影や即興演出を好むゴダールの型破りなやり方に、周囲は困惑を隠せない。それでも映画作りの夢と情熱を共有した現場は熱気に満ちあふれ、誰ひとり完成形を想像しえないまま、のちに伝説となるクライマックスの撮影へと突き進んでいくのだった……。
■出演者
ジャン=リュック・ゴダール:ギヨーム・マルベック
ジーン・セバーグ:ゾーイ・ドゥイッチ
ジャン=ポール・ベルモンド:オーブリー・デュラン
ラウル・クタール:マチュー・パンシナ
■スタッフ
監督:リチャード・リンクレイター
脚本:ホリー・ジェント、ヴィンス・パルモ
プロデューサー:ミシェル&ローラン・ペタン
(C) 2025 ARP - Detour Development LLC
(C) JeanLouisFernandez
