建築現場などで利用される足場をはじめとする各種仮設機材のレンタル事業を手掛けるSUGIKO(横浜市)は、ブイキューブが提供する「遠隔作業支援ソリューション」を昨年から導入した。

遠隔作業支援ソリューションは、米Realwearのスマートグラスと、「V-CUBE コラボレーション」が連携したソリューション。高所ならびに狭所作業に対応したハンズフリーを実現し、スマートグラスは音声で操作可能で、現場と遠隔地が映像を共有しながら、目視確認、状況把握や確認、検査などができる。

  • 現場ではスマートグラスをヘルメットに装着し、ズーム機能などを活用しながら映像や写真を本社に送る

    現場ではスマートグラスをヘルメットに装着し、ズーム機能などを活用しながら映像や写真を本社に送る

  • スマートグラスの映像を共有しながら遠隔から作業指示ができる

同社は足場のレンタルだけでなく、足場の安全に関するサービス(安全コンサルティング)も合わせて提供しており、遠隔作業支援ソリューションは、こちらの用途で利用している。

  • 「遠隔作業支援ソリューションの画面」

「弊社は現場における足場の安全活動のお手伝いにも力を入れており、足場に起因する労働災害を防ぐために、安全に足場が組まれているかを確認する足場点検、人形を使った危険体験訓練、安全講話、新入社員研修なども日々行っています」と説明するのは、同社 技術サポート部 足場安全コンサルティング課 課長 髙橋理恵子氏だ。

  • 技術サポート部 足場安全コンサルティング課 課長 髙橋理恵子氏(右)と同課 田中陸登氏(左)

  • 提供する安全コンサルティングサービス

ただ、足場点検はどうしても現場に出向いて行う必要がある。遠方だと、半日かけて現地にいくこともあるという。

「私たちの部署は横浜にあり、足場点検のために全国の現場に行く必要がありました。少人数の人員で数百カ所の現場に対応するのは大変で、場合によっては依頼をお断りせざるを得ないこともありました」(髙橋氏)

そこで、同社は作業効率を上げるため、スマートグラスを使った遠隔ソリューションの検討を開始した。導入前には、各社のホームページを見たり、展示会に足を運ぶなどして、情報収集していたという。

  • スマートグラスはヘルメットに付けて利用する

そして同社は昨年後半、ブイキューブの「遠隔作業支援ソリューション」を導入。半年の試験導入を経て、現在は4台を利用している。ブイキューブ製品を選択したのは、ハンズフリーで作業が行える点や映像・音声がクリアであったこと、音声で操作可能であった点を評価したためだという。

「これを導入したことで、これまで同じ時間で1件しか対応できないところが、複数件対応できる見込みが立てられました」(髙橋氏)

ただ、スマートグラスを導入しても、社員の誰かが現場に行く必要がある。同社では近くの営業所の人に行ってもらうようにしているという。コロナ禍で県境を越えることができなったときには、このソリューションが大いに役立ったという。

実施前には、現地に行く営業社員に簡単なレクチャーを行うほか、手製の簡単な操作マニュアルも作成した。

  • 営業所の人のために作った手製の操作マニアル

一方で、課題は通信だという。同社はWi-Fiルータを利用して本社と通信しているが、屋内だと通信が途切れることもある。また、現場が山間部の場合は通信環境がよくないことがあるという。

同じ課の田中陸登氏は「もう少し、軽量化されるとさらに使いやすいと思います」と別の改善ポイントを挙げた。

同社では、遠隔作業支援ソリューションの効果測定は行っていないが、高橋氏は他の用途でも使えるのはないかと利用拡大に期待を寄せる。

「他と連携して使う機会を増やせば、可能性が広がると感じています。今後はいろいろな用途での利用を模索していきたいと思います」(高橋氏)

VRを使った危険体験やMRを活用した訓練も実施

同社はほかにもIT活用を進めており、VRを使用し高さ20mでの不安全行動による墜落の恐ろしさを体感してもらっているほか、今年の7月には屋内でも足場の安全点検訓練が可能な「SUGIKO MR足場安全教育コンテンツ」を積木製作と共同開発した。このソリューションはMR(Mixed Reality)を使って、同一の3Dモデルを共有しながら足場点検の訓練を行えるものだ。

  • 「SUGIKO MR足場安全教育コンテンツ」

MRコンテンツを用いることで足場の運搬、組立、解体が不要になるほか、実際に足場を組む場所を確保する手間も削減できる。さらに、天候など周囲の環境に左右されずに教育を受けられるメリットもあるという。

MRデバイスはMicrosoftの「HoloLens2」を使用し、SUGIKOが作成した足場BIMデータを取り込んで、現実に近いモデルを作成したという。

同社は今後も、建設現場の効率化や生産性向上を目指して、足場DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいく予定だ。