生成AIとノーコードツールの普及により、企業のAI・DX投資は一巡しつつある。ツールは導入され、予算も執行された。にもかかわらず現場では「入れたのに使われない」「成果につながらない」という新たな停滞感が生まれている。いわば、"DX疲れ"とも呼べる状況だ。
こうした停滞感に対する1つの答えとなるのが、ゴウリカの「GOALY AI」だ。従来の大手コンサルティングファームでは対応しきれなかった現場の泥臭い業務に深く入り込み、大手企業特有の要件をクリアしながら伴走する同社のアプローチは、なぜ現場の厚い信頼を集めているのか。同社代表取締役の岡本賢祐氏と、CTOとしてGOALY AI事業を牽引する本間圭一氏に話を伺った。
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左から、ゴウリカ株式会社 代表取締役CEO 岡本賢祐氏
ゴウリカ株式会社 GOALY AI事業部 CTO/DX General Manager 本間圭一氏
ノーコードと生成AIが生む、新たな"DX疲れ"の正体
ゴウリカは2015年、コニカミノルタのスタートアップとして発足し、2023年にMBOで独立。2026年4月には、新ブランド「GOALY」のもとでMarketing・HR・AIの3領域を展開する体制へとリブランディングした。その中核にあるのが、同社が「専門的定型業務」と呼ぶ領域だ。手順は定型化できるが、社内用語や商習慣といった"文脈"を知らなければ処理できない業務を指す。大企業の現場にこそ数多く潜み、単純なAIや外部委託では片づかない。
本間氏は、エンタープライズ企業が現在陥っている状況を次のように分析する。
「大手企業では、生成AIのアカウントが配布され、予算も確保されて環境は整いつつあります。今、最も問題視されているのは、『導入はしたものの、成果に結びついていない』という現実です。たとえば生成AIは、文章の要約やアイデア出しには活用されているものの、それが売上向上や顧客対応の改善といった具体的な成果に直結しているかというと、疑問が残ります。その結果、経営層からすると投資対効果が見えない状況に陥っています」(本間氏)
現場の担当者もまた、疲弊している。流行のツールを次々と導入した結果、それぞれの事業部が独自にノーコードツールで業務アプリを作り始め、全体設計が不在のままツールが乱立する事態が起きているのだ。
「流行のものに流されてAIやツールを導入したものの、"やりっぱなし化"している企業は本当に多いです。現場の業務プロセスは非常に複雑なので、全体を考えずに事業部が個別でツールを作り始めてしまうと、あっという間に属人化したブラックボックスが乱立してしまいます。現場の担当者は日々の業務で忙しいのに、さらにツールの運用・保守という新たなノンコア業務が増えてしまう。これなら、いじらない方がマシだったと元の表計算ソフトでの管理に戻ってしまうケースすらあります」(岡本氏)
この"机上のDX"による失敗こそが、今のDX疲れの正体といえる。
描いて終わり、作って終わりにしない。現場を苦しめる「専門的定型業務」への最適解
こうした課題を解決するためにゴウリカでは、DX伴走サービス「GOALY AI」を提供している。同社がターゲットとしているのが、先述の専門的定型業務である。高度な判断を伴うため、単純なRPAやAIでは置き換えが難しい一方、現場が片手間でシステム化するには荷が重い。ここに対して、ゴウリカのエンジニアが現場に直接入り込み、課題解決に伴走するのがGOALY AIの最大の特徴だ。
このアプローチは、従来の大手コンサルティングファームやSIerと何が違うのだろうか。本間氏は「描いて終わりではない、作るだけでもない」という点を強調する。GOALY AIは、もともと同社の開発チームから生まれたサービスだ。近年、FDE(Forward Deployed Engineer)と呼ばれる、顧客の現場に入り込んで開発まで担うエンジニア像が注目を集めているが、その立ち位置にも重なる。
「大手ファームの多くは、非常に優秀な方々が洗練された戦略を描きます。ただ、その後の具体的なシステム構築のフェーズになると、外部のベンダーや孫請けの企業へ引き継がれるケースも少なくありません。一方GOALY AIは、システムを形にするエンジニアチーム自身がお客さまの現場に入り込み、一緒に課題を解決していくスタイルをとっています」(本間氏)
現場が求めているのは、現場の業務を理解し寄り添ってくれる、「会話ができるエンジニア」である。岡本氏は、その価値をこう語る。
「当社のエンジニアは現場の担当者と直接会話をしながら、IT部門とも、その先のベンダーとも技術的な会話ができる。こうしたハブになれる存在が、エンタープライズ企業には決定的に不足しているのです」(岡本氏)
「お客さまの言うとおりには作らない」――課題の本質を見抜く伴走支援
実際の支援は、専門の業務分析チームによる入念な業務フローのヒアリングから始まり、最もビジネスインパクトの大きい領域から着手していく。
ここで重要なのは、「単にシステムを作るために入っているわけではない」という同社の基本姿勢だ。現場の要望をそのまま形にすれば、無駄な機能も含まれる巨大で複雑なシステムができあがってしまう。むしろ「ここはシステムで解決すべきか、それとも運用プロセスを変えるべきか」を見極めるプロの目こそが問われる。
「お客さまが思っている課題と、私たちがプロの目線で入って見える課題は、かなり違うことが多いです。お客さまは表向き『自分たちの言うことを何でも聞いてくれるチーム』を欲しがりますが、心の奥底では『ダメなものはダメだと指摘してくれるパートナー』を求めています。だからこそ私たちは、下請けとしてへりくだるのではなく、お客さまの"横"に入るようにしています」(本間氏)
本間氏は、その象徴的な例として「営業担当者がシステムに入力してくれないから、入力画面をもっと使いやすく改修してほしい」という要望を挙げる。多くのベンダーであれば、喜んで改修を引き受け、そのぶんの報酬を得るだろう。だが、GOALY AIはそこで手を止める。実態を分析してみると、画面の見た目の問題ではなく、200ページに膨れ上がったマニュアルを誰も読んでいないことこそが、入力されない真の原因だったからだ。
「そこで私たちは、いきなりシステムを作り始めることはせず、まず『200ページのマニュアルを10ページに削りましょう』と提案します。目の前の売上規模だけを見れば小さな仕事かもしれませんが、課題の本質はそこにあるからです。短期的に利益を刈り取るのではなく、5年、10年と長くお付き合いするための準備だと考えています」(本間氏)
利用率ゼロから、全員が使うツールへ。成果を出す伴走支援の実態
ゴウリカが最も得意としているのは、この「大手企業×現場業務」という特異な領域だ。大手企業向けの有名コンサルは現場の泥臭い業務には入り込まず、現場の業務改善が得意な小規模ベンダーは、大手特有の厳しいセキュリティ要件や社内政治に対応できない。長年にわたりエンタープライズ企業のマーケティング部門を支援してきた同社だからこそ、大手の"お作法"を熟知したうえで、現場の懐に深く入り込むことができるのだ。
実際にGOALY AIが導入され、成果につながった事例は数多くある。特に、導入したものの使われていないシステムを蘇らせる手腕に強みを持つ。
「ある大手企業では、高額なデータ可視化ツールを導入したものの、現場では誰も見ていないという状況でした。『使われていないからやめる』というわけにもいかず、ご相談をいただきました。私たちはシステムを作り直すのではなく、『そもそも現場は何を見たかったのか?』という業務の棚卸しから始めました。エンジニアが現場の話を丁寧に聞き出し、見たい指標を再定義した結果、誰も見ていなかったツールが、今では特定の組織全員が毎日使うダッシュボードに生まれ変わりました。利用率ゼロから100への劇的な変化です」(本間氏)
また、社内のDX推進室とタッグを組んでプロジェクトを牽引するケースも増えている。DX推進室の担当者はエンジニアではないことも多く、ゴウリカのメンバーが常駐して技術面を支援することで、DX推進が加速する。
こうした実績が評価され、「ゴウリカにお願いしたい」と名指しで相談されるケースも少なくない。現場の信頼が次の引き合いを呼ぶ好循環が生まれている。
真の「AI元年」をどう戦うか? 業務起点の設計論
本間氏は、これからのフェーズを"真のAI元年"だと語る。大手企業の経営層が「AIを入れたのに現場で使えていない。どう成果につなげればよいのか」と気づき始め、実運用に向けた予算が動き出しているからだ。
「今後は、AIで業務をただ楽にするというよりも、AIでいかに成果を上げるかが問われるフェーズに入ります。市場は非常に大きい。ここに切り込んでいくことが、当社事業の柱の1つになります。社内に眠っている膨大なデータをAIエージェントに読み込ませ、営業担当者が1カ月かけて作っていた提案資料を5分で完成させる。そうした売上に直結する仕組みを、私たちが現場と一緒にアジャイルに作り上げていきます。大手企業×現場業務という、他にないポジショニングを活かし、真の生産性向上に貢献していきたいと考えています」(本間氏)
岡本氏自身、生成AIを使って短期間に十数本のアプリを開発した経験から、その威力と危うさの両方を実感しているという。
「生成AIやノーコードの進化により、アプリやシステムは素人でも簡単に作れる時代になりました。だからこそ、乱立を防ぎ、拡張性を持たせ、安全に運用するためのプロフェッショナルなエンジニアの存在が、今まで以上に重要になります。作ることが目的ではなく、100%運用され、お客さまのビジネスのゴール(GOAL)を共に達成する。それが『GOALY』という名前に込めた私たちの思いです」(岡本氏)
DXやAI導入において、最も高い壁となるのは現場への定着である。いくら高度なシステムを導入しても、そこに人間の業務を理解し、血を通わせる伴走者がいなければ、システムはただの箱に過ぎない。
エンタープライズ企業特有の複雑な組織構造やセキュリティ要件を理解したうえで、現場の泥臭い業務に横並びで入り込む——GOALY AIは、従来のコンサルティングでもSIでもない、新しい実行支援の形を示している。DX疲れから抜け出し、真の成果を手にしたいと願うすべての企業にとって、彼らのアプローチは強力なブレイクスルーとなるはずだ。
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