NTTデータ経営研究所と千葉県が代表機関を務めるコンソーシアム(千葉県ナシ栽培スマ農コンソ)は9月8日、ナシ栽培における労働力不足などの農業現場の課題解決に向けた、スマート農業の実証実験を開始すると発表した。

  • ナシ栽培農家の課題と対応方針

千葉県市川市および成田市にほ場を持つヤマニ果樹農園で、ロボットやAI、ICTを活用したスマート農業技術の体系化に向けた実証を行う。同コンソは今回の実証実験によって、労働負荷の軽減や気候変動への対応などを目指すとしている。

具体的な取り組みの1つ目は、ヒトを自動で追従する運搬ロボット作業車の開発および実証である。自動追従ロボット作業車を導入して、収穫やせん定枝の回収や結束の他に、除草剤散布モジュールを搭載して汎用利用する。また、作業者が装着したウェアラブル端末の心拍変化などから軽労化の効果を検証する。

  • ヒト自動追従ロボット作業車のイメージ

2つ目の取り組みは、ナシの棚下から自動で画像を収集してAIが生育解析を行うシステムの検証である。ロボット作業車に搭載したカメラで棚下からの生育画像を撮影し、AIで解析する。葉の茂り方などを分析することで、ナシの生育診断に活用する。従来は生産者が感覚的に把握していた生育状況を、より客観的なデータとして把握できるようになる。

  • 棚下画像をAIで解析しているイメージ

そして3つ目の取り組みが、ほ場ごとの気象データに基づく病害発生予測と、農薬散布適正化ナビゲーションだ。アメダスなどでは取得できない詳細な微気象データを収集するセンサネットワークを構築して、データを自動で栽培支援用スマホアプリ「梨なび」に反映させるという。さらに、同アプリによって黒星病の感染危険度をリアルタイムで予測し、農薬散布による防除適期をナビゲーションする仕組みの実用化を目指す。

  • 微気象センサの設置イメージ(左)、梨ナビアプリ画面(右)

千葉県はニホンナシの産出額、および栽培面積ともに全国1位である。また、二ホンナシは海外からの需要も高まっており、生産量や品質の向上が期待されている。しかし、生産者の高齢化や労働力不足のために生産量は減少傾向にあり、気候変動の影響で生育ステージにばらつきが生じて作業適期の判断が困難になったことから、生産量や品質にも影響が出ている。

具体的には、夏季に行う収穫作業は収穫台車を人力で押しながら果実を摘むため、高い労働強度などが課題となっているという。また、高品質のナシ生産に欠かせない病害虫の薬剤防除についても、の気候変動の影響で適期実施するタイミングの判断が難しくなっている。

さらには、開花の時期も年々早まっていることから、従来通りの生育予測では農繁期の雇用調整や出荷予測も困難だ。海外からの需要にも合った高品質のナシを効率よく生産するために、千葉県ナシ栽培スマ農コンソではロボットやAI、ICTなどの先端技術を活用したデータ駆動型のスマート農業システム構築を目指した実証実験に至った。

  • コンソーシアム参画企業/団体と具体的な取り組み