IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といったテクノロジーの目ざましい進化が、日々の生活をさらに便利で快適なものへと変化させている。リビングに置いたデバイスに話しかけると、天気予報を聞いたりネット注文したりでき、またスマートフォンの操作ひとつで、家の温度管理、電気料金の管理、宅配の受け取りなどができる時代だ。では、10年後の住まいでは、どのような進化を見せているだろうか。

ミサワホームはこのほど、『2030年住宅』として「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」を同社の体感施設「ミサワパーク東京」(東京都杉並区高井戸)に建設した。同住宅のコンセプトは、「暮らし」、「健康」、「環境」という3つのテーマにおいてサステナビリティを実現すること。ITをフルに活用し、生活の利便性を向上させるだけでなく、近年多くなっている豪雨などの自然災害にも強い住宅を実現した。

  • 「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」外観

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ドローンによる受け取りポート

2階のバルコニーと隣接するフラットルーフには、移動式のドローンポートを設置。物流におけるドローンの社会実装が本格化すると考えられる2022年以降を見据え、まずは緊急性の高い日用品や医療品について、配送・受取の仕組みとしてドローンポートを提案している。

  • ドローンによる配送のイメージ

  • ドローンポートによる荷物の受取

移動式のドローンポートは、屋根下の待機場所から荷物の到着場所に自動で移動し、受け取り後は所定の位置まで戻り、ワイヤレス給電により充電して待機する。

  • ドローンポートは自動で移動

  • 移動式ドローンポートによる荷物受取のイメージ

スマホ操作で荷物を自動移動させる収納支援ロボット

1階の玄関先には、スマートフォンの操作により荷物を自動で運搬する「収納支援ロボット」を導入。ビルトイン宅配BOXで受け取った荷物を「蔵」と呼ばれる収納場所に運んで保管したり、指定した荷物を蔵の外まで運び出したりするなど、さまざまな作業を支援する。搬送を終えたロボットは自動走行で自動充電器まで移動する。

  • 荷物を自動で運ぶ「収納支援ロボット」

  • 「蔵」と呼ばれる収納場所に運んで保管

また、使用頻度や季節に応じて蔵内のワゴン収納を自動で並べ替え、優先度の高いワゴン収納を手前に持ってくる設定も可能だ。飲料水や非常食などの備蓄収納や、姿勢のつらい蔵内への搬送や収納など、人力では負荷のかかる作業を支援してくれる。

  • 収納支援ロボットの運搬イメージ

パーソナライズ化する快眠ソリューション

2階の主寝室には、音や温湿度などをパーソナライズ化する快眠ソリューションが導入されており、健康的な睡眠環境と夫婦同室を提案している。AIスピーカーやセンサーと連携させたシーン制御によって、入眠を誘うリラックスタイムや睡眠中、起床時など、状況に合わせてベッドの角度や照明、加湿器、ロールスクリーンなどを自動で制御する。

  • 快眠ソリューションを導入している主寝室

また、起床時間を夫婦それぞれでパーソナライズ化するため、寝室には指向性スピーカーが設置されている。起床する時間が異なる場合でも、一方のアラームによって隣で寝ている相手を起こしてしまうことを防ぐ。実際に枕元に耳を近づけてみたが、微かに聞こえる程度で、よほど音に敏感ではない限り起きてしまうことはないだろうと実感した。

さらに、この寝室では気温環境もパーソナライズ化できる。一般的なエアコンによる空調温度による夫婦間のトラブルはしばしば発生するものだ。しかし同寝室では、壁放射冷暖房システムをベッド上部の壁に導入しており、個別に冷暖房を調整することができ、冷風などによる不快感を感じることや健康を害することなく過ごせる。

  • 壁放射冷暖房システムを導入しているベッド上部の壁

睡眠中の心拍や呼吸、体動を自動測定することも可能で、その睡眠スコアは、洗面台の情報ミラーに表示される。このミラーはほかにも、映像コンテンツを流したり、手をかざすと体温を測ったりすることができる。

  • 洗面台の情報ミラー

  • 手をかざすと体温も測定できる

自然災害に対応できる住宅へ

新住宅「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」の外構計画では、自動車の給電対応や将来的なモビリティサービスに備えてビルトインカーポートを採用している。隣接するレジリエンスウォール内部には、車と住宅間で給電する「V2H」や、災害時に車から電力を給電する「クルマde 給電」が導入されている。停電が発生した場合、自動的に車からの給電に切り替わる仕組みだ。

  • ビルトインカーポート内の「V2H」

また水害対策として、防災エクステリアのスマート防水ボード、雨水を活用する雨水タンクを備えている。タンクの水は夫婦2人分で最大約8日分もの生活用水を確保でき、非常時には手動ポンプと浄水器で飲料水としても活用できる。ポンプアップして2階バルコニーにある植栽の給水などに活用することができる。タブレットなどの端末で、タンクの貯水量や、水の利用履歴などを確認することも可能。

  • スマート防水ボード。計4枚を組み合わせることで浸水を防ぐ

  • 雨水タンク

  • タブレット端末で貯水量を確認

また、屋根・外構に設置した太陽電池、燃料電池、蓄電池による全負荷型3電池連携システムにより、エネルギーの自立性を高めている。停電時にも住まい全体に高出力の電力を供給できるため、自宅避難を可能とし、普段に近い暮らしが継続できる。

ミサワホームが提案する2030年を見据える住宅「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」は、ほかにもさまざまな提案を行っている。非接触の自動ドアやタッチレス水栓を設けた、帰宅してから完全に非接触のまま手を洗える動線づくりや、日常では書斎や趣味の部屋で、体調を崩した際には療養部屋として使えるマルチプレイス、ハイドロカルチャーの植物による空気浄化と涼風制御システムなど紹介しきれないほどある。

10年先の少し先の未来の住宅を体感したい人は、一度足を運んでみてはいかがだろうか。