どのような時代に生まれ、どのような時代に教育を受けたかは、人の行動や価値観に大きな影響を与えます。日本には、団塊世代、バブル世代、氷河期世代、ゆとり世代、さとり世代などさまざまな表現がありますが、現在、ミレニアル世代(Y世代)やZ世代という、幼い頃からデジタル製品に囲まれて育った、デジタル世代に注目が集まっています。

その理由のひとつが、18歳~40歳のこの世代が影響力のある購買層になりつつあり、また職場でも影響力を持つようになってきているからです。

ミレニアル世代(Y世代)は、家庭用パソコンやインターネット、個人用の携帯電話などの進化を目の当たりにしてきたデジタルパイオニアです。そして、Z世代は生まれた時から高速インターネット、スマートフォン、SNSなどがあったデジタルネイティブ世代です。デジタル世代に注目が集まる理由のひとつは、デジタル環境の中で育ったこの世代は、それ以前の世代とはライフスタイルや価値観が異なっているからです。

デジタル世代がビジネスに与える影響は約200兆円

デジタル世代が企業利益に及ぼす影響力は、世界全体で1.9兆ドル(約200兆円)になると算出する調査結果もあるなか、同調査では少子高齢化でデジタル世代の人口比率が低い日本では、250億米ドル(約2.7兆円)の機会損失があると算出されています。

もはや、デジタル世代を引きつけ、維持し、生産的に働いてもらえる環境づくりはビジネス戦略において、重要な要素になってきているのです。しかし、そのためには経営層がデジタル世代を十分に理解することが必要です。

仕事を選ぶ上で、デジタル世代にとって最も重要な要素とは?

多くの経営層は、デジタルパイオニアやデジタルネイティブと呼ばれる世代は、私生活を重視し、残業や飲み会を拒み、給与よりもワークライフバランスを重視するという先入観を抱いているかもしれません。

しかし、日本も対象に含んだグローバルな意識調査によると、デジタル世代はワークライフバランスを重要視しつつも、「仕事への満足度」や「キャリアの安定と保証」「報酬と福利厚生」などを重要視し、予測不可能なVUCA時代を生き抜くための堅実さや、仕事への意欲も見て取れます。そして、その結果は経営層が想像していた結果と異なることも明らかです。

また、働く企業を選ぶ際に重視する企業文化を尋ねたところ、デジタル世代は次のように回答しました。

  • 自律性、または信頼性の高い環境で働く機会(グローバル83%、日本 66%)
  • 自分の実績の認知とそれに見合った報酬(グローバル81%、日本 62%)
  • 強力で目に見えるリーダーシップ(グローバル79%、日本 40%)
  • 表彰など、全社的な業績の評価(グローバル 78%、日本 60%)

日本のデジタル世代は、企業のリーダーシップよりも自分の業績を認知されることを求める兆候が見受けられます。

デジタル世代に求められる働き方

コロナ禍を受け、働き方は大きく変化しています。リモートワーク世代という言葉が新たに生まれようとしている現在、面接から入社式、そしてオンボーディングまでオンラインで済ませた新入社員も少なくないでしょう。

そうした中、希望するコロナ後の働き方については「在宅フルタイム」「在宅勤務とオフィス勤務の半々」を希望する人が多く、「オフィスフルタイム」や「オフィスを主にしたハイブリッドな働き方」を希望するデジタル世代が少ないという結果になりました。

経営層が思っているよりも、「在宅フルタイム」を希望する人が多く「オフィスフルタイム」を希望する人が少ないという結果になっています。

デジタル世代に魅力的な職場を提供するには?

デジタル世代が求めている「自律性と信頼性」「業績を認められること」は、急速に広がったテレワークで表面化した課題でもあります。しかし、デジタル世代は同時にハイブリッドな働き方も求めているのも事実です。ハイブリッドな働き方は、企業側からするとより複雑なチームマネージメントになるかもしれませんが、このジレンマを解決するためには必要な働き方です。

そして何よりも、デジタル世代が重要と感じている「仕事への満足度」は自身の生産性に直結しています。生産的に働けたと感じる人は、仕事への満足度が高い傾向にあります。集中したい作業は自宅で、一人ではできない仕事はオフィスで、新しいアイディアを出したい時はカフェでなど、さまざまな業務に合わせて働き方を調整することで、より生産性の高い働き方を提供することで、デジタル世代の従業員だけでなく、全従業員の満足度につながります。

コロナ時代と言われる現在、社会や企業に求められている変化はデジタル世代がコロナ前から求めてきたことなのかもしれません。従業員のリアルな声に耳を傾け、改善していける企業に優秀な人材が集まっていくのではないでしょうか?

著者プロフィール

國分俊宏 (こくぶん としひろ)

シトリックス・システムズ・ジャパン 株式会社 セールス・エンジニアリング統括本部 エンタープライズSE本部 本部長 グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセースルとして支援している。現在は、ハイタッチビジネスのSE部 部長として、パフォーマンスを最大化できる働き方、ワークライフバランスを支援する最新技術を日本市場に浸透すべく奮闘中。