2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、人々がリアルではなくオンラインでつながる機会が増えた年でした。会議や学校の授業、飲み会などがオンライン化し、それに連なるようにこれまでアナログで管理されていたものがデジタル化する機会も多かったのではないでしょうか。

生活のなかにあるモノがデジタル化することと並行して、多様なモノがインターネットとつながるIoT化も進みつつあります。近年話題となっているスマートシティや無人コンビニエンスストアなどは、センサーやカメラなどのIoT機器を連携させ、そこで取得したデータをAIが学習することで、最適な運営を実現するシステムです。また、身近なところではパーソナライズされた体験を提供するスマート家電がIoTの代表格と言えるでしょう。そうしたIoTの普及に欠かせないのが「通信インフラの整備」です。

本稿ではIoT機器の導入が進むと、私たちの生活にはどのようなメリットがあるのか。また、IoTの普及を促進するためにはどのような変化が必要なのかを解説します。

IoTは身近なところで生活を支えている

IoTという言葉自体はかなり前から存在していましたが、普及が進んでいなかったこともあって、モノがインターネットにつながると何ができるのか見えにくかったのも事実です。それがここ数年の間に、普及期を迎えているという実感があります。

現在、数多くの取り組みが実施されているのが、電気やガス、水道をはじめさまざまなところに存在する「メーター」のスマート化です。筆者が代表を務めるベイシスでは、いまだに目視での計測が行われているような旧式メーターのスマート化に取り組み、都内の電力会社とのスマートメーター化プロジェクトでは4年で100万台におよぶスマートメーターの取り付けを達成しました。

その他の分野で成長が期待されているのが「センサー」の設置です。センサーにもさまざまな種類がありますが、自然界で起きる変化をキャッチする水位センサーや温度センサー、湿度センサーなどの重要性が増しています。

ここ数年で自然災害が大規模化し、過去に例を見ないような巨大台風や集中豪雨が発生しました。河川に水位センサーを設置して水位の上昇をリアルタイムにキャッチできたり、温度センサーや湿度センサーを設置して天気の急変が予測できたりするようになれば、気象予測データと組み合わせて避難指示を的確に出すことが可能になります。災害予知の精度を高める役割も果たすことができるでしょう。

  • ベイシスが設置工事しているIoTデバイス

5Gの登場で、IoTの活用チャンスは大きく広がる

メーターのスマート化やセンサーの活用は今後も成長が見込まれますが、これからはインフラ領域にとどまらない、あらゆる業界でIoTの普及が起こると予想しています。

例えば、小売業界でAIカメラの設置が広がり始めているのをご存じの方も多いでしょう。カメラの映像から来店者の年齢や性別、来店時間帯といった傾向を分析すればマーケティング領域でも役立ちます。

画像解析を利用すると、来店者の顔を識別して購買履歴を表示したり、その人に適したセール情報やおすすめ商品を店内のサイネージに表示させたりと、より高効率なセールスができるようになります。

また、オフィスビルであれば、顔認証によってその人のオフィスが何階にあるか、最短で目的のフロアへ行けるエレベーターはどれかを分析して、エレベーターが自動的に「迎えに来てくれる」という動きをつくることもでき、より快適な移動を実現できます。

そうしたIoT化をさらに後押しする要素として期待されているのが5Gの普及です。5Gは、超高速、超低遅延、多数同時接続という特徴を持っています。

多数同時接続によって大量のデバイスからの同時接続が可能になることで、AIの学習に必要な大量のデータを集める効率がアップします。また、低遅延によって通信にタイムラグが発生しなくなれば、何千キロメートルも離れた工場にある機械の遠隔操作や自動車の遠隔運転、リモート手術など、これまでは遅延が起こってしまうために不可能だったリアルタイムでの遠隔操作が、5Gによって可能になっていきます。

AIの進化や遠隔操作を活用した新たなテクノロジーがどんどん生まれることで、アイデアがさらに生まれ、IoT化はさらに波に乗るだろうと期待しています。