世界のスーパーコンピューターが計算速度を競うランキング「TOP500」がオンラインで開かれた国際会議で発表され、理化学研究所の「富岳(ふがく)」が前回6月に続き1位となった。他の3つのランキングでも1位を維持し、4冠により実力の高さを示した。
TOP500は性能評価用プログラムの処理速度で性能を競う年2回のランキングで、今回は17日に発表された。富岳は毎秒44京2010兆回(京は1兆の1万倍)で、フルスペックまで整備を進めた結果、前回の41京5530兆回から向上。2位の米国「サミット」に約3倍の性能差をつけ圧勝となった。日本は先代の「京(けい)」が2011年に連覇したが翌年に陥落。その後は中国と米国の2強体制が続いたが前回、8年半ぶりに首位を奪還している。
また産業利用に適した計算の速度を競う「HPCG」、グラフ解析の性能を競う「Graph500」、人工知能(AI)の深層学習に用いられる演算の指標「HPL-AI」でも、6月に続きそれぞれ大差で1位に。多彩な分野で高度に活用できることを実証した。
結果を受け理研は、政府が提唱する超スマート社会「Society5.0」に向け、富岳が「シミュレーションによる課題解決やAI開発、情報の流通・処理に関する技術開発を加速する情報基盤技術として、十分に対応可能であることを実証した」とした。
富岳は理研と富士通が共同開発し、理研計算科学研究センター(神戸市)の京の跡地に設置された。来年度からの本格運用を待たずに試験利用を開始。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で、飛沫拡散のシミュレーションや有望な治療薬候補の探索などで既に成果を挙げている。
松岡聡センター長は「国民の関心の高い種々のアプリケーションで、高い性能が出るよう開発した。今後、富岳が利用され、開発された技術が世界をリードする形で普及。コロナに代表される多くの困難な社会問題を解決し、わが国の革新を先導していくだろう」とコメントした。
TOP500のランキング上位は次の通り(名称、設置組織、国、毎秒の計算速度)。
1位 富岳 理研計算科学研究センター(日本)44京2010兆回
2位 サミット オークリッジ国立研究所(米国)14京8600兆回
3位 シエラ ローレンスリバモア国立研究所(米国)9京4640兆回
4位 神威太湖之光 無錫スパコンセンター(中国)9京3014兆回
5位 セレーネ エヌビディア社(米国)6京3460兆回
※以下、日本勢上位
14位 AI橋渡しクラウド 産業技術総合研究所 1京9880兆回
19位 トキ・ソラ 宇宙航空研究開発機構 1京6592兆回
22位 オークフォレスト・パックス 筑波大・東京大 1京3554兆回
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