厚生労働省は4月10日、「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」という事務連絡を発表した。

この中では、院内感染を防ぐため、時限的・特例的な対応として電話や清報通信機器を用いた診療や服薬指導等の取扱いについて記述しており、これまで再診に限っていたオンライン診療を、初診において行っても差し支えないとしている。

そこで、クリニックにおける予約や事前問診、決済、カルテといった主要オペレーションのシステム化を手掛ける、Linc'well (リンクウェル)のSaaS事業責任者である氷熊大輝氏に、オンライン診療を現状を聞いた。

同社がプロデュースした第一号店舗を持つClinic For(クリニックフォア)グループでは、4月10日の厚生労働省の事務連絡を受け、4月13日から初診のオンライン診察を開始した。

  • クリニックフォア田町

なお、同クリニックの4月のオンライン診察は約521件で、そのうち約200件が初診だという。

オンラインで受診した人の中には、これまでかかっていたクリニックに診療を断られ、オンライン診療ができるところを捜して来た人もいるという。

同クリニックのオンライン診察の手順は、①診察日時の予約、②事前問診の記入、③実際のオンライン診察、④決済、⑤処方箋の受け取りとなる。

  • オンライン診療のステップ

予約は15分単位で行っており、事前問診の記入の際には、名前・メールアドレス・住所などの基本情報、過去の診療歴や病歴などの健康情報といった診療に必要な項目について入力。また、初診の人は保険証の画像アップロードも行う。

実際の診察は、予約完了後に送られるメールから、オンライン診療のビデオチャットルームのURLにアクセス(電話の場合は、予約をした医師が登録した電話番号にコール)して行う。

  • オンライン診療の様子

診察が終わると、決済に関するご案内ページへ移行。キャッシュレスにより支払いを行う。

  • 送られてくる請求書

処方箋は、自宅まで普通郵便で送られる仕組みで、急ぎの場合は、薬局にFAXで直接送ることも可能となっている。

氷熊氏は、「スマホで診察する方が多いです。およそ半数の人がオンライン診療を受けています」とオンライン診療の現状を説明する。一方で、「検査や触診ができないなど、オンライン診療でできることに限界もありますので、検査や触診が必要であるのであれば、対面診療していただくことが重要だと思います」と、オンライン診療の課題についても触れた。

  • Linc'well (リンクウェル)のSaaS事業責任者である氷熊大輝氏

また、Linc’well 広報 浜田佑以氏も「検査や触診ができないので、あくまでも不安の解消のための診療ということになると思います。例えば、現在37.5度以上の熱が続いていて、もしかしたらコロナかしれませんという相談があった場合、『コロナかもしれないので、検査を受けてください』とか、『これまでもあった扁桃腺の炎症の可能性もあるので、もう少し様子を観てください』という診療はできるかもしれません」と語る。

なお、同クリニックでは、必要な場合、同グループあるいは提携の医療機関で対面による診察を受けられることをオンライン診察の条件としている。

検査について氷熊氏は、「直近の健康診断や採血の結果をアップロードしてもらっていますが、そういったことをしなくても検査結果が見られるようになるとか、自宅でできる検査キットなどが普及してくればいいと思います。そういうものが組み合わさってくると、オンライン診療がもっと便利になると思います」と述べた。

決済については、同クリニックではPayPalを利用している。PayPalでは、デビット/クレジットカードや銀行口座からの引き落としが利用できるが、高齢者を中心にクレジットカードに抵抗がある人もいるため、銀行引き落としが利用できるPayPalを採用したという。浜田氏は、「予想以上にPayPalのIDを所有している人が多く驚いた」と語った。

  • PayPalでの支払い

オンライン診療にはオペレーションを含めた対応が必要

医療機関がオンライン診療をこれから導入する場合、単にシステム化すればいいというわけではないと氷熊氏は語る。

「対面の場合とオペレーションの流れが異なっており、ビデオチャットを時間通りに立ち上げることや、その時間のオンライン診療をどの先生に割当てるのか、処方箋の郵送など、オンライン診療を始めるのは大変です。仕組みだけでなく、オペレーションを含めて対応する必要があります。そちらのほうが重要だと思います」(氷熊氏)

また、小規模な医療機関のデジタル化は遅れ気味で、背景として、開業する人の約7割が50代以上ある点や、電子化しないとビジネスが成り立たないわけではない点が影響しているという。

医療機関が電子化するメリットについて浜田氏は、「今後は、開業して自分の医院に来てもらうにはどうしたらいいのかを考えたとき、利便性、待ち時間が少ない、シームレスな体験というものが重視されてくると思います」と語ったほか、氷熊氏も「電子化により問診票とカルテが一緒に見られる、カルテが見やすい、すぐに表示できるといったメリットが生まれ、お医者さんが1日に見られる患者数も増えていくと思います。診療時間を最大化するという意味で、電子化は必然的なオプションになると思います」と述べた。

そして、今後のオンライン診療のあり方について氷熊氏は、「適した部分に適したものを利用していくのがいいと思いますので、すべてをオンライン診療にすべきだとは思いませんが、1つのオプションとして、オンラインに適した診療を切り分けていくことが重要だと思います。新型コロナウイルスが収束して、オンライン診療が全部認められなくなるのはもったないと思います。これをきっかけに、オンライ診療をやってよかったという雰囲気を作っていくのが大切だと思います」と語った。