日本HPの「HP Elite Dragonfly」(以下、Dragonfly)は、ヒンジ部分が360°回転するコンバーチブルタイプの2in1 PC。13.3型タッチパネル液晶を搭載し、本体が999gという軽さを実現したビジネスモバイル機です。今回は、CPUにIntel Core i5-8265Uを搭載したミドルレンジモデルの使用感をお伝えしましょう。

  • HP Elite Dragonfly

    HP Elite Dragonflyは深いブルーがきれい。女性からの印象もよかったです

最初におもなスペックをまとめます。CPUはIntel Core i5-8265U(1.6GHz)、メモリは8GB、ストレージはPCIe Gen3 x4 NVMe接続の256GB SSD、液晶が13.3型フルHDタッチスクリーンタイプ(1,920×1,080ドット)、本体サイズが約W304.3×D197.5×H16.1mm、重さが約999g、バッテリー駆動時間がJEITA測定法Ver2.0で約16.5時間となります。このほか、全方位&ノイズキャンセル機能搭載のマイクも内蔵します。

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CPUはIntel Core i3-8145U(2.10GHz)とIntel Core i7-8565U(1.80GHz)、メモリは8GBと16GB、ストレージは128GB SATA SSD、256から2TBのNVMe SSD、Intel Optane Memory(16GB+256GBもしくは32GB+512GB)、バッテリーは4セル56WHh(今回の試用モデルは2セル38WHh)といったカスタマイズが可能になっています。法人向けモデルとされていますが、個人での購入も可能です。2020年3月上旬の時点で、直販モデルの価格は116,800円(税別)からとなっています。

薄く軽く、美しいマグネシウムボディ

本体の厚みが約16.1mmで重さが約999gという薄型軽量ながら、米国の国防総省制定MIL規格(MIL-STD-810G)の19個ものテストにパスした堅牢ボディを実現しています。「もうやめて! Dragonflyのライフはゼロよ!」と思わず叫びたくなるテストばかりですが、これらの過酷なテストをクリアしているので驚きです。これには、CNC削り出しマグネシウムボディが貢献しています。

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    日本HPのWebサイトから。米国の国防総省が定めたMIL規格に準ずる各種テストのイメージ

そのほか、HPの法人向けノートPCは、最大120,000時間を超える独自のテストを実施。コネクタ疲労のテスト、耐屈曲、静電放電、キーボード耐久性、キーボード開閉、ヒンジ耐久性衝撃などもテストしているので、より高い信頼性を獲得しています。

どんなシーンにも合う美しいルックス

マグネシウムボディは堅牢さだけでなく、外見の美しさにも演出しています。ドラゴンフライブルーと呼ばれる濃い青の天板は、マットな質感も相まって高級感を漂わせています。個人的には、アイコン化された中央のロゴが好き。一見すると長い棒と短い棒ですが、「HPとわかる感」があります。

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  • 深みのある濃い青のボディとロゴ。光の加減によってブルーの風味が変わります

ビジネスシーンで活躍する豊富なセキュリティ機能

Dragonflyはセキュリティ機能にも注目です。個人ユースでそこまでセキュリティを気にしないなら、「Dragonflyはセキュリティもすごい」ということを覚えておいていただいて、この段落は飛ばしてもかまいません。ビジネスユースを考えるなら、ぜひご一読ください。

ビジネスシーンのノートPCには、堅牢さとともにセキュリティも重要ですよね。まず、横から画面をのぞき込まれる状況を防ぐ「内蔵プライバシースクリーン」をワンボタンで起動でき(2020年3月から提供)、電車内やカフェで使うときに役立ちます。ディスプレイ上部のカメラには、物理的なシャッターを装備。カメラの上にスライドスイッチがあり、レンズをシャッターで覆うことで、カメラを物理的に無効化できます。

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  • 物理的にシャッターをかけられるプライバシーカメラ。写真左がオープン状態、写真右がクローズ状態です。レンズの表面と、レンズ上部のスライドスイッチに注目してください

ユーザー認証も、一般的なノートPCよりも高度な設定を持っています。指紋認証、顔認証、NFC、Bluetooth機器といった要素から、最大3種類で認証を設定できるため、厳密なユーザー認証を行えるでしょう。

ディープラーニングを活用したマルウェア検知&ブロック機能「HP Sure Sense」も備えています。生のデータを学習して未知のマルウェアに対抗できるよう設計された、HP独自のセキュリティソリューションです。

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    HP Sure Senseを起動すれば様々な設定が行なえます

ほかにも、以下のような豊富なセキュリティ機能を持ちます。重要なデータを持ち歩くときのリスクをかなり減らせるはずです。

  • HP Sure Start:BIOSがなんらかの攻撃によって改ざんされても、自動検知して自己回復。
  • HP Sure Run:ウィルス対策ソフトやOSのセキュリティ機能が無効になった場合に、自動で再起動して安全な状態に戻す。
  • HP Sure Recover:マルウェアなどによってOSが起動しなくなった場合、自動的にネットワーク経由でリカバリ用イメージをダウンロード、適用して正常な状態に戻す。
  • HP Sure Click:仮想マシン内でブラウザやOfficeアプリケーションを動かし、万が一のウィルス感染などから守る。
  • HP Secure Erase:PC外部のツールなどを使わず、BIOSからストレージを完全消去。

深みある青に包まれたほぼフラットなボディ

上記のとおり、Dragonflyのカラーはドラゴンフライブルー。Web上の写真でどこまで再現できるか難しいところですが、深みのある青です。天板はフラットで、底面もほぼ平ら(底面は吸気口やスピーカーが配置されているので、少し持ち上げるためにゴム足があるだけ)。カバンの中でキレイに収まってくれるでしょう。

インタフェースは両側面に搭載されています。左側面のヒンジ側から、USB 3.1(Type-A、パワーオフUSB充電対応)×1、電源スイッチ、セキュリティロック穴が並びます。さらにその横には、WWAN対応モデルではnano SIMカードスロットが。試用機はWWANモデルではなかったので、nano SIMカードスロットはふさがれた状態でした。

  • HP Elite Dragonfly
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    左側面。Type-AのUSB端子と電源スイッチ

右側面のヒンジ側からは、HDMI出力端子×1、ステレオヘッドホン/マイクジャック×1、USB Type-C(Thunderbolt)×2です。電源はUSB Type-C入力となり、2つのUSB Type-Cコネクタの両方が電源入力と映像出力に対応しています。

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    右側面。ふたつのUSB Type-C端子、どちらからでも充電できます

左右側面のインタフェース類は必要十分でしょう。SDカードスロットがない点が気になるといえば気になりますが、小型のメモリーカードリーダーを別途用意してカバーできます。

軽快なタイピング感が味わえるキーボード

キーボードはクリック感と打鍵感がしっかりしているタイプ。メイン部分のピッチは18.7mmあるので、快適なタイピングができました。

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    バックライトを備えたキーボード。堅めのクリック感ですが、重くはないです

ちょっと個性的なキーもあります。まず目に付くのは、ファンクションキーです。キーが小さいのはともかく、F1やF2が基本ではなく、ボリュームや画面の輝度を調整する機能がデフォルトになっています。日本語入力のカナ・半角変換など、標準的なF1~F12キーをよく使う人は注意が必要でしょう(fnキー+ファンクションキーで標準的な動作)。

なお、左shiftキーとfnキーを同時に押すと「fn lock」となり、標準的なF1~F12キーの機能がデフォルトになります。このとき、fnキーに小さなランプが点灯するのですぐ判断できます。

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    ファンクションキーのデフォルトは各種の調整機能。右上には通話のオン・オフや、プレゼンテーションなどに使われるキーが配置されています

また、プリントスクリーンの機能が右側シフトキーに配置されているのも独特ですが、すぐに慣れるでしょう。そのほか、右上に通話開始・切断キーがあるのもユニークなところで、ビデオ会議をスムーズにすることを想定した仕様です。この辺りは、イマドキのビジネスノートPCらしい設計ですね。

高品質ディスプレイとスピーカーでエンタメ性能も高い

13.3型のディスプレイは、ビジネスシーンだけで使うのにはもったいないくらいの美しさを持っています。狭額縁ベゼルによって約86%の画面占有率となっているため、画面への没入感も高く感じました。

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    画面に集中できる狭額縁ベゼル

サウンドも高品質です。デンマークのオーディオブランド「Bang & Olfsen」とHPが共同開発したスピーカーを、本体底面の手前側に配置しています。底面であるのに、実際に音楽や映画などを流してみると、こもったような感じはなく、とてもモバイルノートとは思えない音響でした。AV的な用途だけではなく、通話においても、前述のノイズキャンセリングマイクとともに快適なやりとりができそうです。

タブレットモードの使い勝手は?

Dragonflyのタブレットモードは、液晶を開いていって180°を超えたあたりで有効になります。タブレットモードではキーボードがオフになるので、誤操作の心配はありません。

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    液晶ディスプレイを180°開いたところ。もう少し開いていくと、キーボードがオフになります

画面を360°回転させたタブレット状態は、13.3型という画面サイズで見やすく、本体も約999gと軽いため、片手で持っての操作もあまり苦になりません。タッチ操作のレスポンスも軽快で、文書や画像を快適に閲覧できました。電子書籍、特にマンガを読むのにはとても便利でしょう。オプションのタッチペン(*)を購入すれば、さらに細かい操作ができて、絵を描くのにも使えそうです。

*オプションのタッチペン:ワコムの「アクティブ静電結合方式(AES)」を採用したデジタイザーペン。4,096階調の筆圧を検知し、直販価格は8,000円(税別)

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    タブレットモードでは多少広いヒンジ部分を持つことになるでしょう

ディスプレイの角度は無段階調整なので、少しだけ開いて自立させプレゼンテーションなどに活用しやすい「テントモード」、キーボード面が底面になるように置いて動画閲覧などに向く「メディアモード」を使い分けられます。

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    テントモード

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    メディアモード

驚いたのが、メディアモード時のサウンド。メディアモードだとスピーカーが画面の後ろ側になるのですが、聞こえてくるサウンドにはかなり広がりがあって、音を遠くに感じません。ストリーミングの映画も快適に観られました。

モビリティの高さを実感

モバイルノートなのですから、持ち歩かねば本領を実感できません。というわけで、実際に持ち歩いて、外出先での使用感をお伝えします。

まず、1kgを切る軽さなのでカバンに入れての移動も気になりません。図書館や喫茶店などで取り出しても、ドラゴンフライブルーのボディは目立ちすぎず、それでいて黒やシルバーといったよくあるノートとは一線を画した存在感を味わえました。

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    軽量なのでどこにでも持って行けます

スリープからの復帰も早く、ほとんど即時に作業を始められるのもうれしいところでした。電源オフからの高速な起動や、使用中のキビキビした動きは、ストレージがPCIe Gen3 x4 NVMe接続なのも効いているのでしょう。

モバイルマシンなら何より気になるバッテリーの減り具合ですが、カタログスペックで約16.5時間もあるため、2~3時間の文書作成ではほぼ減りません。あまりにも減らないので、Wi-Fi経由でWeb閲覧や動画視聴を1時間ほどやってみましたが、それでもバッテリーは20%も消費しませんでした。文書作成やメールチェック、Webブラウズくらいの軽い処理が中心なら、丸一日、ACアダプターを持ち歩く必要はないかもしれません(DragonflyのACアダプターは比較的コンパクトで軽いので、持ち歩いてもそれほど苦にはならないでしょう)。

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    ACアダプター、電源ケーブル、プラグアダプターを同梱しています

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    本体の重さ、実測値は995gでした

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    本体、ACアダプター、プラグアダプターだと1.241kg

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    本体、ACアダプター、電源ケーブルだと1.303kg

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    ACアダプターの仕様。USB PD対応です

ベンチマークで実力チェック

まずはCPUの性能を計測する「CINEBENCH R20」です。スコアは、CPU総合が1019pts、CPUコア単体が357ptsでした。CINEBENCH上の比較グラフを見ると、だいたいデスクトップ用CPUのIntel Core i5-3550と同じくらいのパワーです。Intel Core i5-3550は第3世代Intel Core(Ivy Bridge)で、日本で発売されたのは2012年。そう考えるとイマイチに思うかもしれませんが、Webブラウズ、Officeアプリケーション、動画や音楽の再生といった使い方なら、ストレスを感じることはまずないでしょう。

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    CINEBENCH R20の結果

ストレージ速度は「CrystalDiskMark 6.0.2」にて計測。さすがはPCIe Gen3 x4 NVMe接続というスコアを出してくれました。電源オフからの起動もとても速く、ファイル操作も快適でした。

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    CrystalDiskMark 6.0.2の結果。圧倒的な速度がわかります

次はゲーム系のベンチマークを。Dragonflyの主力用途はゲームでないことは承知の上で、外出先や旅行先でもゲームができたらいいなという思いで試しました。まずは「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」です。設定は、グラフィック設定が「最高品質」、解像度が「1920×1080」、表示方法は「フルスクリーン」です。結果は、評価が「普通」でスコアは4162でした。グラフィック設定を「標準品質」にすると、評価は「快適」でスコアが5307に向上しました。

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    「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」は最高の設定でも問題ないですが、グラフィック品質を少し下げると快適度が上がります

「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ」も走らせてみます。設定は、解像度が「1280×720」、画質が「標準品質(ノートPC)」、表示は「フルスクリーンモード」を使用します。結果は、スコアが4003で評価は「快適」と出ました。さすがに少し重いゲームなので品質設定は落とす必要はありますが、モバイル系のノートPCでこのレベルで遊べるなら十分でしょう。

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    「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ」は、品質設定を下げたほうが安心です

バッテリー駆動時間も計ってみましょう。カタログ値は約16.5時間となっていますが、YouTubeで連続再生をオンにして、延々と動画を再生するという通常よりヘビーな動作でどれくらい変わるのかチェックです。画面の輝度は100%、電源モードはバランス重視の「より良いバッテリー」。これでバッテリー残量が5%になって、自動的にスリープするまでの時間を計測しました。

結果はなんと「11時間1分」でした。寝る前に再生を始めて、起きてからスリープに入った時間を確認するのですが、目が覚めても元気に動画を再生していて驚かされました。

さらに、購入時のカスタマイズで4セルバッテリーを選べば、多少は大きく重くなってしまうものの、JEITA測定法 Ver2.0で約24.5時間という驚異的なバッテリー駆動時間になります。うまくやりくりすれば、2泊3日くらいの出張や旅行ならACアダプターいらずで過ごせそうです。

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ビジネスマンに超オススメ! ホビーユースも十分アリ

HP Elite Dragonflyは、ビジネスユースにおいて重要な高いセキュリティ性能を持っています。加えて、薄く軽いので持ち運びやすいことも、ビジネスモバイラーにオススメのポイントです。コンバーチブル2in1ということで、クラムシェルモードやタブレットモードは、仕事のシーンでも重宝します。

そして、美しい外観やコストパフォーマンスの高さ、タブレットモードやメディアモードは、エンターテインメントでも活躍してくれるでしょう。個人のサブマシンとしても十分な魅力があります。仕事と遊び、両方を充実させてくれるモバイルPCです。