DellおよびEMCジャパンは、中堅企業におけるIT投資規模および投資動向、潜在化している課題を調査する「IT投資動向調査」を実施し、その分析結果を発表した。

この調査は同社(DellおよびEMCジャパン)が毎年行っているもので、今年で4回目。今回の調査は2019年12月9日~2020年1月24日に、従業員数100~1000人の国内中堅企業1,300社に対してアンケートにより行った。なお、調査対象企業は昨年よりも500社増加している。

  • 「IT投資動向調査 2020」の概要

デル 上席執行役員 広域営業統括本部長 瀧谷貴行氏によれば、今回の調査では、業績好調な企業が11%ダウンし、好調な企業は建設・製造からサービスにシフトしているという。これは、東京五輪の開催を間近に控え、これまでのインフラおよび原材料を支える建設業や製造業が大幅ダウンした一方、宿泊業・飲食サービス業、運輸業がアップしたことによるという。

  • デル 上席執行役員 広域営業統括本部長 瀧谷貴行氏

IT投資動向では、中堅企業の48.8%がデジタル化に積極投資する意向を示しているが、ITの人材不足がその障壁になっており、その対策として、7割以上の企業が人材を内製で育成したいと考えているという。ただ、それに対する課題として、デジタル化に関連する「学びと共有の場」が圧倒的に不足している実態が分かったという。

デル 広域営業統括本部 中部営業部 兼 西日本営業部長 木村 佳博氏は、積極投資の背景には、IT投資の遅れに対する危機感があり、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のカギは自社内の人材育成だと回答する企業が多かったと語った。

  • デル 広域営業統括本部 中部営業部 兼 西日本営業部長 木村 佳博氏

また、従来型のIT技術活用にも遅れがあり、中堅企業の30.8%がサーバ仮想化を未実施で、IT人材リソース不足の中で、ハイパーコンバージドインフラ(以下 HCI )を含むインフラの集約化・運用 管理の自動化を求める実態が明らかになったという。そのほか、53%の企業がバックアップからシステム復旧する自信がないと回答している。

今回、ランサムウェアの被害については大幅に低下(昨年から5.5ポイント減少)するなど、セキュリティ事故の被害にあった企業は減少(27.3%で、昨年から8.4ポイント減少)している一方、Windows 7のEOSにともなうWindows 10への移行が行われていない企業では、セキュリティ事故の内訳として、ランサムウェア被害が75%を占め、全台移行済の企業よりも36ポイントも被害の割合が多いことが分かったという。

IT人材不足の対策としては、IT基盤の運用をアウトソースしていきたいと考える企業が64%と加速し、外部委託の形態としては、システム事業者/SIベンダーによるスポット対応が56%とトップを占め、重視する点では、価格・品質・信頼性 安定性があがったという。

  • 「IT投資動向調査 2020」のハイライト

瀧谷氏は、「今回の調査結果から、きわめて実務的なDXを推進していることがわかった」と述べた。

同社ではこれらの分析結果を踏まえ、「共有」、「学習」、「育成」、「実践」、「支援」の5つの領域で支援を行っていくという。

  • 共有、学習、育成、実践、支援の5つの領域で中堅企業を支援

共有では、情報共有の場として、「中堅企業DX分科会」「オープンオフィス」「バーチャルオープンオフィス」という3種類の最新技術動向共有イベントを定期開催。

中堅企業DX分科会では、各回ごとにテーマを決め、 AI、ディープラーニング、音声マイニング、ブロックチェーンなどの技術要素だけでなく、アナログな実務での活用にも触れる。

  • 中堅企業DX分科会

オープンオフィスでは、「オープンオフィス・ソリューションデイ」として、クライアントPC やサーバの実機の質感に触れ、製品専任担当から説明するコーナーやHCI ・ストレージソリューションを体感できるデモセッションに加え、IT コストのROI最適化、働き方改革、社内プロセスの標準化、サイバーセキュリティの見直しなどの実務的なコンテンツを展開する。

  • 「オープンオフィス・ソリューションデイ」

バーチャルオープンオフィスでは、技術セッションデモの動画配信、オンラインサロンを通じた技術エンジニアによるQ&A、ホワイトペーパー調査レポートによる情報発信を行っていくという。

学習では、技術を学ぶ場として「DX Tech Play 」や「Dell Technologies VMware 技術勉強会」を提供する。

「DX Tech Play」では、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)との産学連携により、「人工知能-AI」「ブロックチェーン」「IoT」についてNAIST研究員を講師として迎え、 DX関連技術概要や活用方法を学ぶ講座を開設する。

  • NAISTとの産学連携により講座を開設

NAISTの担当者は今回のDell(Dell Technologies)との取り組みによって、「これまでの研究の成果を実践し、社会貢献していく流れをつくっていきたい」と語った。

VMware 技術勉強会では、VMwareエンジニアによる技術勉強会を実施し、vSphereマスタークラスとvSANマスタークラスの2つのコースを用意する。

  • 「Dell Technologies VMware 技術勉強会」

育成では、NAISTや「やさしい Python ラボ」と共同で「中堅企業DXエンジニア養成講座」を開催。データ分析やAIの基礎概念からディープラーニング活用に向けた演習まで全8回を開講する予定だ。

  • 「中堅企業DXエンジニア養成講座」

実践では、NAISTと「中堅企業 DX アクセラレーションプログラム」を実施。このプログラムでは、AI、IoT 、ブロックチェーンの技術要素を活用し、1年程度で実装可能なビジネスプランを企業から提出してもらい、それぞれの技術要素の上位入賞者には、カゴヤ・ジャパンやミライコミュニケーションネットワークからサーバを1年間無償提供するほか、Dellによるサーバーシードプログラムを提供する。

  • 「中堅企業 DX アクセラレーションプログラム」

そして、支援では、地域別に協業パートナー23社と9つの「デジタル化支援パッケージ」を提供し、中堅企業のデジタル化スモールスタートを支援する。

  • 「デジタル化支援パッケージ」

同社がこのような中堅企業向けの支援策を提供する背景には、中堅企業市場における好調な売上がある。

瀧谷氏は、「弊社が中堅企業と定義する従業員数100-1000名の企業42,935社のうち、31,500社と取引があり、この市場はDellの屋台骨になっている。この市場を担当するわれわれの部門は、この2年で売上が2倍になり、成長著しい分野だ。今回の支援策により、今年、中堅企業のデジタル化元年を実現していきたい」と語った