RPAツールとExcelマクロの共通点

働き方改革が推進される中、業務の効率化が課題となっている組織も多いのではないでしょうか。そんな中、効率化の方法の一つとして、今まで人の手作業で行っていた作業のシステム化を検討するケースも多いでしょう。業務効率化に効果があるといわれているのがRPA(Robotic Process Automation)です。しかし、RPAは導入コストもかかるため、比較的導入しやすいExcelマクロで対応するケースも少なくないといわれます。社内や部署内にExcelが得意な人がいると、Excelのマクロ機能を駆使したプログラムを組み、手作業で行うと丸1日かかるような業務を、ボタン一つクリックするだけで解決してくれるなど、Excelマクロの便利さを実感したことがある方もいるのではないでしょうか。

RPAツールとExcelマクロは導入コストは大きく異なりますが、できることは似ています。RPAツールとExcelマクロの共通点をひと言で説明すると、両者とも「パソコン上の作業を自動化する」ことを目的としている点といえます。両方とも「パソコン上の作業を自動化」するツールだとすると、RPAツールとExcelマクロにはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれのメリットや違いについて、基本的なことから解説していきます。

RPAツールとExcel両方ともデータ集計自動化・作業の記録が可能

RPAもExcelも「パソコン上の作業を自動化する」機能を持っていますが、どのようにして自動化しているのでしょうか。まず自動化したい作業を記録し、データ集計などの作業を自動化させています。Excelのマクロでは、「マクロの記録開始」ボタンを押し、作業手順を実行し、「マクロの記録中止」ボタンを押すことで作業を記録します。そうすることで、記録した作業を自動的に再現できるようになります。もちろん、作業を記録しただけでは、思い通りの作業の自動化はできないので、そのときにVBAという専門のプログラム言語を用いて調整する必要があります。外部サイトとの連携など高度な作業を自動化したいときには、VBA言語の知識がです。RPAツールもExcelと同じように、RPAソフトを使ってまず作業を記録します。その後、その後ソフト上の操作で調整作業を行うことになります。

つまり、RPAもExcelマクロも、作業を記録することで「パソコン上の作業を自動化する」ことを可能としています。作業の記録と調整方法が、RPAは専用のRPAソフトを使って操作し、ExcelマクロはVBAというプログラム言語でコードを書き込む必要があるという点に違いがあります。

RPAツールとは?Excelマクロと比較しながら解説

「パソコン上の作業を自動化する」機能をもつRPAツールですが、Excelとはどのような違いがあるのでしょうか。RPAツールとExcelマクロの特徴について、導入に必要なスキルやそれぞれのツールでできることについて、違いを説明しながら見ていきます。

RPAツールはプログラミング知識不要

RPAツールとExcelマクロの一番大きな違いは、Excelマクロでは、VBAなどのプログラミング言語の習得が不可欠ですが、RPAではプログラミング言語の習得は不要という点です。RPAでは自動化したい作業を記録し、記録した作業を調整することで、精度の高い作業の自動化が可能となります。その際、プログラミング言語ではなく、RPAソフトの操作で調整を行います。一般的にRPAソフトの操作は、Excelの関数より難易度は高いといわれていますが、RPAソフトの販売会社が研修サービスを提供しています。そのため、IT開発未経験者でも十分使いこなすことが可能といえます。

RPAツールは膨大なデータを高速処理可能

RPAとExcelマクロでは、処理能力の面でどのような違いがあるのでしょうか。RPAによる作業の自動化は、Excelと比較して、高速処理が得意といえます。Excelマクロはパソコン上で操作するため、処理速度は使っているパソコンの性能に左右されてしまいます。一般的に、データ件数が数千件程度であれば問題なく処理できますが、数万件のデータを処理する必要がある場合、処理速度は遅くなり、Excelがフリーズしてしまうことも良くあります。一方、現在企業で導入されているRPAは、サーバー上で作動するものが主流となっています。そのため、処理速度はパソコンの性能ではなく、サーバーの性能に左右されることになります。サーバーは大量データの処理を前提に設計されていますので、大量のデータであっても高速で処理することができるといえます。

RPAツールはExcelマクロを含む他のツールと組み合わせて併用可能

次に、パソコン上の作業は複数のアプリケーションを使うため、自動化にはそれらを連携させる必要があります。外部ツールとの連携には、どのような違いがあるのでしょうか。RPAツールはExcelマクロと比較して、他のツールとの連携による作業に自動化に適しています。ExcelマクロでもVBA言語を使えば外部ソフトからのデータ入力などの連携作業も可能ですが、難易度は非常に高いといえます。一方RPAツールは、もともと画面上で行われる一連の作業を全て自動化するためのソフトです。例えば、Excelで作成したグラフをパワーポイントに貼付けて毎日メール報告したり、会計ソフトの特定のデータを定期的に集計し、定型の報告書を自動作成する、といった一連の作業を一括して自動化することを目的とするツールです。RPAツールの操作方法さえ習得すれば、広い範囲の作業を自動化することが可能です。

RPAツールは参照先のシステムへの依存度が大きい

複数のアプリケーションと連携させるということは、連携先のシステム更改に応じて対応していかないと、作業の自動化に支障が生じます。よって、RPA導入を検討する際は、連携する外部ソフトなどの更改への対応も含め、トータルのコストについて検討しておく必要があります。RPAが実行する作業は、パソコン上で作動する基幹業務システムやWEBアプリケーションおよび使用するExcelワークシートと連動するため、それらの更改に伴い、RPA側の設定変更が必要となります。例えば、定期的にメールを送信する作業を自動化している場合は、メールの定型文の変更なども考慮しなければならないといえます。

こういった連携するツールの更改に応じたRPAの設定変更をSIベンダーに依頼しないとできないようなRPAツールだと、想定以上のランニングコストが発生してしまいます。自組織でどこまで対応できるのか、SIベンダーに委託するのであればどの程度のコストがかかるのか、事前に把握しておくことも重要です。ちなみに、Excelマクロの場合は開発担当者の人件費のみで対応できますので、ランニングコストの面でも大きく違いがあるといえます。

ExcelマクロではなくRPAツールを導入すべき事例

ここまでRPAツールとExcelマクロの違いについて、それぞれの特徴を比較しながら見てきました。ここからは、RPAツールが適している導入事例について、具体的な事例を紹介しながら見ていきます。

既存システムとの連携

Excelと比較したRPAツールのメリットは、対応できるカバー範囲が広いところです。よって、WEBアプリケーションからデータを収集し、Excelで集計やグラフ作成を行い定期的にメールで報告する、といった既存システムとの連携作業を自動化させたい場合は、RPAツールが適しています。Excelマクロでも開発スキルが高いスタッフがいれば対応可能なケースも多いのですが、開発担当者スキルが未熟な場合は外部連携部分は自動化できず、従来通りの手作業となってしまうこともあります。せっかくのシステム化による業務効率化の妨げとなりますし、何よりも個人のスキルに依存している点は組織にとってネックとなります。

RPAツールには、自動化する作業手順のテンプレートありますし、作業手順をフローチャートのようなイメージで組むことができるので、プログラミングの知識がない今いる人材でも自動化の構築が可能です。現時点でプログラミングの知識がなくても、外部連携を含めた業務の自動化ができる点がExcelマクロとの違いといえます。

大量のデータ処理が必要

RPAはサーバー上でデータ処理することができるため、大量のデータの高速一括処理が可能です。大量のデータを安定して処理したい場合は、RPAが適しています。Excelだと、パソコン上で処理するためデータ量が膨大になると、フリーズしてしまう可能性が高くなります。せっかく効率化のために自動化したのに、作業自体が止まってしまいボトルネックができてしまうと、効率化の意味がなくなってしまいます。大量のデータ処理であっても、スムーズに対応できる点が、Excelマクロとの違いといえます。

プログラミング知識が乏しい

これまでにも何度か触れてきましたが、Excelマクロで外部ツールとの連携をさせたり、今まで人が行っていた作業を自動化するためには、VBAというプログラミング知識が必須です。RPAツールによる作業の自動化も簡単ではありませんが、今からVBAを習得するより早くて確実です。RPAには作業手順のテンプレートがあったり、フローチャートのようなイメージで作業手順を組んだりするので、現場の業務に精通したスタッフでも、取り組みやすいといわれています。RPAとExcelどちらを使うかの違いは、開発スキルのあるスタッフが業務内容を把握して、Excelマクロを使って業務自動化ツールを開発するか、業務内容に精通したスタッフがRPAツールの使い方を習得して業務自動化ツールを作成するか、という違いがあるともいえます。

RPAツールではなくExcelマクロを導入すべき事例

ここまで、RPAツールを導入した方がよいケースをご紹介してきましたが、次は、Excelマクロの導入の方が適している事例について見ていきます。ぜひ参考にしてください。

開発コスト&運用コストを抑えたい

Excelマクロを導入することによるメリットは、なんといってもコストを低く抑えられるという点です。開発コストと運用コストは、開発スキルを有するスタッフの人件費のみとなります。そのため組織内にVBA言語を有するスタッフがいて、既存業務を持ちながらも業務効率化のための開発ができるのであれば、表面上は開発コストをかけずに作業の自動化を行い、業務効率化を実現することができます。長期的には、システムを安定的に運用し変更へ対応する必要があるため、開発者の退職リスクなども考えなければいけませんが、短期的には非常に安価に導入できる点がメリットといえます。

セキュリティが重視される場合

もう一点メリットを挙げるとすると、個人情報や社内のノウハウなど情報セキュリティーを重視する場合、サーバー上でデータ処理を行うRPAの導入は適しているとはいえません。また、RPA導入時の設定などをSIベンダーへ委託するとなると、社内の重要なノウハウの外部流出につながるリスクも考えられます。Excelマクロであれば、組織内で構築から開発、そして運用における保守メンテナンスまで一貫して行うことになりますので、情報流出などのセキュリティーリスクを低く抑えることができます。"