SAPはS/4HANAへの移行をどのように支援するのか? Gilg氏はアプローチとして次の3つを紹介した。
1)システムコンバーション
2)新しい実装
3)Selective Data Transition
95%を1)と2)が占めるというが、Gilg氏が期待するのが、3)のSAP S/4HANA Selective Data Transitionだ。システム全体をマイグレーションするのではなく、選択しながらS/4HANAへの移行を行うというものだ。「とても有望なアプローチだ。今後はSelective Data Transitionが増えるだろう」と予想する。
ツールセットでは、
1)SAP Readiness Check(移行に当たって機能と技術的インパクトをチェックしたり、マイグレーションプランを立てる)
2)Customers Code Adaptation(カスタムコードがどう影響するかを調べ、古いカスタムコードを削除する)
3)Downtime Optimized Conversion(システムのダウンタイムを削減する)
4)Improved Data Mitigation(データ移行支援、すぐに使えるビジネスオブジェクトやオブジェクトモデリングを使って高速にデータを移行する)
を紹介した。
顧客はこれらのツールを活用している。例えば、インドの製造業Mahindraは4.5TB級のシステムのマイグレーションを行なったが、そこでは3)のDowntime Optimized Conversionを活用したという。
S/4HANAにより、Enel(イタリアのエネルギー企業)は課金処理時間を50%させるなど実質的なメリットが出ている、とGilg氏。それだけではなく、新しいビジネスも支える。例えばシューズメーカーが、新たにカスタマイズスニーカー事業を展開するとなった場合、サプライチェーンに始まり様々な変更が要求される。高い品質で、オンタイムで製造できるように調整できるのがS/4HANAという。
「S4HANAは成長のチャンスを捉えることができる。経営に大きな影響を与えることができる」(Gilg氏)
2025年に間に合わない場合はどうなるのか?Mueller氏はプレス向けセッションでこの質問に具体的に答えなかったが、「(スケジュール的に)タイトになる。顧客やパートナーに移行を進めるように呼びかけている」と述べた。同時に、S/4HANA移行をSAPがどう支援するのかについて、顧客に十分に伝わっていないことも認めた。
そして、「すべての企業が移行に向けてどのようなステップをとるかを考えている。我々はしっかり支援していく」語った。