デジピタ!+WinActorでさらなる作業負荷を低減

2019年には、当初検討していたWinActorも導入された。これは全社で始まった業務効率化に向けた自動化の流れとしての動きだった。全社的な活用を目指しているWinActorだが、先行導入していたデジピタ!との連携が大きな効果を出しているという。

「物件情報の更新は、デジピタ!を使っただけの段階では90%の作業量削減でしたが、現在は100%になりました。デジピタ!だけの時はファイルの取得やアップロードを手作業で行っていたのですが、ここをWinActorで行うことで完全に人の手を離れたのです。今は1日2回更新に加え、定休日の更新も可能になるなど、大きな効果が出ています」と、古谷氏はそのデジピタ!+WinActorの効果を語った。

作業動画の社内公開でRPAへの理解度が向上

RPA活用は、第1号案件である物件情報更新の様子を動画にして全社公開したことで理解が進み、社内からのRPAに関する希望が集まるようになってきているという。

「管理業界の勉強会でWinActorが紹介されたことがあり、参加した人から『あれはすごい』という声が上がりました。そこで、WinActorはもう社内で動いていますとポータルに動画を公開したのです。興味が出てきた時期の公開だったので、タイミングがよかったですね」と古谷氏。現在は社内要望の精査をし、ヒアリングを進めている最中だという。

「現在、RPAを導入できそうだと考えている業務は共益費の支払い処理です。紙の請求書が多いので、これをOCRに取り込んで自動で処理したいと考えています。4000棟に対して共用部分の電気代や水道代で8000件の請求があるのですが、中にはケーブルテレビやインターネット接続の契約がある物件もあるので、月1万件ほどの処理があります。今のところ、OCRのエラーなどもあり完璧ではありませんが、基幹システムとの連携も模索中です。これが成功すれば、1人分の作業量がなくなるくらいのインパクトがあると考えています」と中越氏。

社内では7、8件の要望が出ているが、契約書処理業務の自動化なども候補として挙がっているという。

「これはBCP対策という点でも役立ちます。キーナンバーをOCRで取り込んでPDFファイルとして登録することができそうなのですが、実現すれば、災害で紙の記録が失われても業務を継続できます。これまでは現場の負担が増えるため、新たな試みに取り組みづらかったのですが、RPAならできそうだと感じています」と、中越氏は意気込みを語った。

こうした業務のRPA化を手がけるのは吉田氏だが、現状の作業量はそれほど多くないという。「今は月に5日くらいかかる程度でしょうか。デジピタ!は完全に自動で動いてくれているので、エラーの時以外は触らずに済んでいます」と吉田氏。効率化のためにRPAを導入しても、結果として負担が大きな人が変わるだけだったという状態には陥っていない成功例と言えるだろう。

物件情報の鮮度向上は業績向上にも効果をもたらす

ジェイエーアメニティーハウスのRPA導入は進行中だが、デジピタ!+WinActorという形で先行している物件情報更新業務は、十分な効果が出ている。

「残業時間が減った、ミスがなくなったという効果は出ていますが、それ以上に、その業務に携わっていた人を別の業務に振り向けることができたのがわかりやすい効果ですね。2018年からお客様向けの情報誌の発行を開始したのですが、この業務に注力してもらえるようになりました」と古谷氏。

さらに、業績向上への影響も期待できるという。「物件情報の新しさは大切です。情報が古いままでは、問い合わせをいただいても契約済だったということが起こる可能性もあります。それが、1日1回から2回へと情報の更新頻度を増やし、定休日でも自動更新できるようになったことで改善されました。直接の効果かは不明ですが、業績自体は伸びています」と古谷氏は語る。

現在、管理物件の鍵をスマートキー化する取り組みも進めているという。物理鍵の管理をなくすことで、入退居に関わる負担を軽減することに加え、紛失をはじめとするリスクの低減を狙っている。鍵の扱いを安全かつ容易にすることで、信用リスクの低減も見込んでいるという。

こうしたデジタル技術を活用した業務が増える中、RPAが貢献できる範囲も広がって行くことが考えられる。全社的にRPA活用に向けた動きが活発化しているジェイエーアメニティーハウスの今後の活用が楽しみだ。