カブトムシのオスには立派な角ができ、メスにはオスのような角ができない。このようなカブトムシの角にオスとメスの違いが現れる時期を明らかにした、と基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)などの研究グループがこのほど発表した。この時期にメスだけが持つ遺伝子を働かなくなるようにしたらメスにも立派な角が生えたという。研究論文は米科学誌プロスジェネティクス電子版に掲載された。

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    上は正常なメスとオス。下は、メスの幼虫のトランスフォーマー遺伝子の機能阻害の強さによりさまざまな角ができたメス(提供・基礎生物学研究所など研究グループ)

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    角の性差(オスとメスの違い)が現れる時期(提供・基礎生物学研究所など研究グループ)

研究グループには、基礎生物学研究所の森田慎一研究員、新美輝幸教授、重信秀治教授のほか、国立遺伝学研究所の前野哲輝・技術職員らも参加した。

研究グループによると、角を持つ昆虫の中でもコガネムシ科にはオスだけが立派な角を持つ種が多い。角は、エサ場を確保したり、メスを獲得するための武器としての機能を果たす。カブトムシはコガネムシ科に属し、オスの立派な角は広く知られているが、その角を作るための遺伝子が働き始める詳しい時期は不明だった。これは、カブトムシが土中で幼虫からさなぎを経て成虫になるため、角の元になる組織の変化を土中で詳しく観察することが難しいことが大きな要因だった。

カブトムシの幼虫がさなぎになる前には「前蛹(ぜんよう)」と呼ばれる時期があり、角の性差が現れるのはこの時期と推測されていた。しかし、カブトムシのこうした成長過程は土の中で進むために詳しいことは分かっていなかった。森田研究員らは、土を使わずにプラスチックの透明な試験管内で幼虫を観察する方法を考案。この試験管内に幼虫を多数入れて詳しく調べた。

その結果、幼虫が前蛹になる時に首を振る特徴的な行動をすることが分かり、この行動を指標に前蛹が始まる時期を特定することが可能になった。そしてカブトムシの前蛹期間はメスでは 129±4.3時間、オスは 131±4.7時間で、角の性差をもたらす遺伝子が働く時期と、角の性差をもたらす遺伝子が働くタイミングは前蛹開始の約29時間後であることが判明した。

研究グループはまた、カブトムシの性を決める遺伝子(トランスフォーマー遺伝子)も特定し、メスの幼虫でトランスフォーマー遺伝子が働かないようにすると、メス化が阻害されてオスと同様に立派な角が形成された。

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